桐谷健太の身に今まさに起きている異常事態とは何か

 桐谷健太の様子がおかしい。

 当然の如く、異変の兆候は浦島太郎に扮して歌う「海の声」からだが、これはまぁ、言ってみれば牛若丸三郎太であって人気商売には付き物のノベルティで。BEGINが曲を作って、真剣であればあるほど、まぁ可笑しいねって代物で。

 中島美嘉のNANAであったり、遡れば三上博史の本城裕二な訳で俳優業の副産物。

 その点で言うと「BECK」でのラッパー役も板についてるし、その他でバンドマン役をやってるとかで、そのタイミングで音楽活動をしててもおかしくないのにそれをせずに浦島太郎でやってみたら大評判。

 にしても、「BECK」のこのシーン酷いですね。音楽自体はそれなりなのに。

 ほんで、音楽番組で歌ってるうちに桐谷健太が陶酔し始めてる感をビンビンに感じてて。

 もう「没入」って感じじゃないっすか。蚊が屁でもしてるかのような三線弾き語り。楽曲としてはBEGIN節丸出しの島人歌謡って趣で可もなく不可もなくな感じなのに「何かを超えてくる歌の力!」。

 でも、まあ。お仕事大変ですね、って感じで理解の隅に引っかかる範囲ですよね。歴史上、数多ある前例の一つってことで。相撲取りが相撲甚句のレコード出してたのと同じ、舞台度胸を付けるみたいな。芸の肥やし的な。阪神に居たバースの「六甲おろし」的な。

 石原裕次郎とかの時代まで遡ると実感もないのでアレですが、記憶にある俳優が歌うものって吉川晃司の出来損ないみたいな高橋克典とか反町隆史とか、尾崎豊の絞りカスみたいな吉岡秀隆とか。いつも調子ハズレの織田裕二とか。

  

 そこにきて桐谷健太の音楽活動本格化。

  ご丁寧にリリックビデオがあったから歌詞を追うと、遠くにいるであろう「君」を思い「会いたいな」と歌ったかと思うと、唐突に「奏でる風」の登場で「え?会いたいのは『君』なの?『奏でる風』とやらなの?それとも『会いたいな』と風が奏でてるの?」と、ぼんやりとしてはいるけどなんとなくは共感出来なくもない「空を見上げて誰かを思う(やったことないけど)」にブチ込まれる抽象!混乱のうちに「君の心のそばにいよう」と歌いかけられて戦慄!

 桐谷健太の自意識がガンガンにドライヴしていってるのが顔も見れないのにわかります。アルバムのタイトル、「香音」ってかいて「カノン」ですよ。野々村真の娘の名前と一緒なんですよ。2016年に?

 『「海の声」を含む、桐谷健太から香る音楽が奏でる風』ってキャッチコピー、誰か言い出したら止めません?ストリート文化も世紀末も通過して、ノームコアとか言い出してる時代ですよ?こんな「田舎町のアーケードの隅に突然現れたどこの国かよくわからないけどとりあえず異国感満載な内装のマッサージ店」みたいなセンスで大丈夫なんですか?

 でも、きっと大丈夫なんでしょう。オレがMEGUMIとの淫夢を見ているその刹那、刻一刻と神田正輝の老いが進行し続けるのと同じで、これが大通りなんですよ。この曲を歌い上げる桐谷健太を見ましたが、本当に心を込めて不器用だけどストレートで誰かの胸に刺さりそうでした。オレは歯並びの美麗さ以外、なにも印象にないですけど。それでもこれがど真ん中。一切気にせず中条あやみちゃんが出てるCMの時だけウキウキして、安心して横になっていましょう。ボクらが悪いんです。

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