2016年末、PUFFYが切り裂いた「いい感じ」

 SMAPや和田アキ子の不在でもタモリとマツコデラックスの寸劇でもシンゴジラでもピコ太郎でもなく、桐谷健太の空回りでもなく、昨年の紅白の感想は「PUFFYが普通だった」に尽きる。別段ファンというわけでもなく、最初の二、三枚を買ってその後も気になるシングルが手元にあるくらいで、リミックス盤が一番よく聞いてるくらいっていうPUFFY感なんだけど、PUFFYが普通にオシャレなのかよくわからないけどそれなりの衣装で歌って、合間に振袖着てたってのが衝撃だった。勝手に。

 2016年は20周年ってことでいつもよりよくテレビで見かけてて、その「いい感じ」に違和感を感じていた。Tシャツに「亜美じゃない方」「由美じゃなない方」って書いてある、あの「いい感じ」。ツナギに「亜美派」「由美派」って刺繍してある、あの「いい感じ」。

 このグッズが醸す「いい感じ」。すべてがその登場の時のまま、そんなに変わることなく「いい感じ」。

 「ワンフー」ってちょっと説明なしじゃ今となっては通用しないかもしれない響き。「敢えて、ね。敢えて今、なのよね」の押し付けがましさ。その押し付けの耐用年数は遥かに過ぎてるけど、誰も言い出せない「いい感じ」。

 小室全盛の世間で「脱力」で「Tシャツにスニーカー」で「いまどき」な「いい感じ」。絶大な支持。「アイドルや芸能人みたいに作り物じゃない等身大」なアタシたちが「ビートルズサウンドを意識した」「いい感じ」な楽曲を。「センス」「センス」「センス」!でも、そりゃあ浸透するわなって感じ。

 奥田民生っていう寵児の後ろ盾もある中で、そんなPUFFYが「敢えて」芸人みたいな振る舞いを。「敢えて」ちょっとダサいことを。「敢えて」ドカジャンを。みたいな。

 PUFFYの「いい感じ」を木村カエラが引き継ぐ形で2000年代に突入して、「なんかアメリカでアニメになって人気らしいよ」で延命した「いい感じ」。その実績も嘘ではないにしろ、どこか払拭できない「規模のデカいなかやまきんに君」感。積み重なるキャリア。そこはかとなく漂う腫れ物感。浅野ゆう子が「女優よ!」って感じでもてはやされてるのを目撃した時に似た気分。

 新譜を出す度に新進気鋭の作家の起用だったり、新たな試みだったりで立ち止まった感はない。事実、20周年で紅白に出てきても「ピンクレディーが20周年で再結成」とかの時に感じたあの感じよりも全然現役感ある。パフォーマンスが劣化したでもなく、見た目的にも年齢を考えると大いにあり。だけど、「ワンフー」。

 この「ワンフー」を通せて共有する素地はテレビの中にはない。だからかどうか、普通に紅白っぽい感じでPUFFYが紅白に出てた。バックで奥田民生がギター弾いてるとかもなく、普通に入場してきた他の出演者がステージに残る中、うろうろしながら歌ってた。オシャレな格好で。

 PUFFYが示す「敢えて、敢えて、ね」が活きる「普段は違う」がファン以外には殆ど見えない状況。そんな中、紅白に初出場する人たちの会見に臨んだPUFFYが選んだのは「亜美じゃない方」「由美じゃない方」の刺繍がされたドカジャン。ファン以外の中で途切れたPUFFYの物語の、その途切れる手前の姿。「これが私たちの正装ですから」とのたまったくせに、本番では澄ました格好!なにそれ!脈々と新譜出してたここ最近の、田舎の「変わってるって言われる〜」って言い出しそうな女子中学生が着てるパジャマみたいな衣装じゃなくてドカジャンが正装って言い張ったくせに!リハではピコ太郎の衣装でスベったくせに!

 今まで培った「いい感じ」を打ち捨てて纏ったお着物は「ブリトニースピアーズが『三瓶です』と記者会見で日本のファンにサービス」って風情で、「いつからそんな高いとこに居るの?」って雰囲気満載でそんなに「いい感じ」じゃなかった。絶妙に「やな感じ」。石川さゆりと椎名林檎が着物から胸元の緩いドレスに着替えてエンディングでエロく揺れてなかったのも大いに不満だ。オッパイが見たい。

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