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【MOVIE】映画の感想

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映画の感想や考察
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記事一覧

【感想】市子 ※ネタバレあり

良質な作品を観た後は言葉よりも感覚がじんわりと自分の中に残る。市子もそういった作品だった。 ミステリーのように謎がなんなのかを気にしながら見ているつもりが様々な者から観た市子像に自然にスポットライトが当たるように構成されており、市子の謎を追っているつもりが気づいたら彼女自身の実像を追いかけている秀逸な構成。 冒頭のシーン、市子が汗を垂らしながら歩く姿のままならなさ。その存在感に一気に引きこまれる。真夏の海から真っ黒な服を着た市子が歩いてくる。 少し猫背のようにも見える首

【感想】コーダ あいのうた ※ネタバレあり

これぞ映画。映画である必然性がある作品。 後半ずっと涙が止まらなかった。言葉にできないいろんな気持ちがあふれてただただ感動した。辛さやもどかしさや思い、その全てがごちゃまぜになった。全体的には辛さや残酷さの成分が多かったように思う。ただその中でもひしひしと存在している思いに力強さがあるから感動するのだと思う。 最後の約30分、発表会からの歌のシーンはとにかく泣けてしまう。 ろう者としての目線が描かれる音が消える演出。無音の世界。聴こえない娘の歌。感動する人々。娘だから誇らし

『竜とそばかすの姫』を個人的に考察・解釈してみた ※ネタバレあり

観てきました、竜とそばかすの姫!今作もいろんな意味で細田さんらしい作品で良い点もたくさんありつつ、脚本やストーリーのわかりづらさが目立った作品でした。故にレビュー等で「どういうこと?」という声もたくさんあったので、こういう話かな~という個人的な解釈を記していきます。随時追加するかもです。 ※あくまで個人的な解釈になります。 物語の全体感テーマ:主人公すずが自分を愛せるようになり、アイデンティティを確立し、自分の足で歩みはじめるようになるまでの物語 すずは母親が自らの命と引

ドラマ「梨泰院クラス」を観てほしい5つの理由と感想

Netflixで人気の新作韓国ドラマ梨泰院クラス。韓国では歴代2位の視聴率を記録した本作ですが案の定観はじめたら止まらずに全16話約20時間を2日間で一気に観てしまいました! 本当にいいドラマだったので皆さんにもぜひ観てほしいです!ということで、今回のnoteでは簡単に梨泰院クラスのおすすめポイントを紹介していきます! ※できるだけ物語全体のネタバレがないように書いています。各章ごとに補足で対応する内容のドラマMVを貼っています。カットでのネタバレが気になる方は再生せずに

【おうちで映画館】Netflixで観れるおすすめ映画10選

前回のおすすめアニメ21選に続いてずっと書きたかったおすすめ映画まとめnoteをこの機会についに書きました!今回はNetflixで観れる作品に絞って紹介してみました。邦画、インド映画、韓国映画、フランス映画、アメリカ映画、アニメ映画と幅広く厳選してみました! リップヴァンウィンクルの花嫁主人公の七海はなんでも屋という名の詐欺師である安室の詐欺にはまり人生がどんどん狂っていく。 岩井俊二監督が主人公を演じる黒木華にあてがきをした作品。 とにかく異世界にもってかれる感がすご

【感想】ラストレター - 想いが人を生かしてくれる

映像美ラストレターを観た。岩井俊二さんの映画は映像だけでぐっと違う世界に連れ去られてしまう病的な魅力があって公開が決まったときから絶対に観ると決めていた。 結論から言うと今回の作品では岩井俊二さんの他の作品にあるような病的な映像の魅力はなかったように思う。が、変態性こそないものの紡がれる映像はいずれも確かに美しかった。主張しない洗練された美しさだ。 学生の頃抱いた思いこの映画を観ながら高校時代よりも小学時代や中学時代を思い出していた。高校時代は社会への繋がりが現実味をおび

【感想】わたしは光をにぎっている

ネタバレなしで感想を書きます。 映画が始まる。視界に飛び込んでくる光景は1カット目から美しかった。 長野の海が、下町の風景が、人々の心が、最初から最後まで、ずーっと美しかった。この感覚を言葉にするのはむずかしくてただただ美しいという感覚だけが心の中をこだましている。 いろんなことが目まぐるしく変わっていく中で変わらないものとはなんだろうか。 食べて、働いて、寝て、住まう。特別ではない日常の中で、特別ではないやりとりをすれ違う誰かと交わす。 人は「生活」と共にあり、「

【感想】マチネの終わりに - まるで音楽のような人生を ※ネタバレあり

「マチネの終わりに」を観てきた。普段は感動したりドンピシャで良いと思った映画しか感想を書かないのだけれど、賛否両論で色んな意見がある映画なので自分なりに思ったことを書くと面白そうだなと思い感想を書いてみることにした。 書き終えてみて。咀嚼すると色んな味が出てくる映画だった。とても音楽的な映画だった。 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」本作のキーのメッセージだ。このメッセージが良いなって思ったのが映画を観に行っ

女の子の絶望を希望に変えるため『ホットギミック ガールミーツボーイ』は金字塔を打ち立てた ※ネタバレ感想

僕なりに解釈したホットギミック ガールミーツボーイ※下記、ネタバレを含みます。 ホットギミック ガールミーツボーイは、表面でおこった事実をなぞらえるのとその意味を解釈しながら観るのとで全く違った捉え方になる映画だ。 表面的な見方をすると、初という自信のない少女が、妹をかばうために男の言いなりになることを皮切りに、闇を抱えたサイコパスみのある男たちに心も身体も色んな初めてを捧げながら消費されていき、最終的には消去法で現実的な選択肢の男に落ち着いて幕を閉じるような、かわいそう

「おもちゃを大切にする物語」から「おもちゃの人生を尊重する物語」へ 【トイ・ストーリー4】 ※後半ネタバレあり

トイ・ストーリーにおける「ストーリー」とは何か本作の感想を書くにあたってまずは、「トイ・ストーリー」という題名が現すストーリーとは何かについて考えてみた。 トイ・ストーリーが現すストーリーとは「人とおもちゃたちとのストーリー」だろう。 トイ・ストーリー4のキャッチコピーは、あなたはまだ─本当の「トイ・ストーリー」を知らない。だ。トイ・ストーリー4は今までのストーリーとは明確に描きたいストーリーが異なる。トイ・ストーリー4が描くストーリーは「おもちゃの人生というストーリー」

『海獣の子供』は全宇宙の生命を肯定する

予告編を観た瞬間から、映像!半端ない!!米津の歌やばい!!!なんだこの体感したことのない超感覚は!しかも久石譲!芦田愛菜!絶対観る...! となっていた怪獣の子供をやっと観てきた。 まずは、予告編を観てみてください。 少しでも多くの人に興味をもってもらって映画館に足を運んでもらいたい一心でネタバレなしで感想を書きました。少しでも興味をもってくれた方はぜひ映画を観てみてください。まだギリギリ間に合います。尚、映画の神々しさに飲み込まれ一部スピリチュアルな内容の感想となってい

こんな世界だからこそ『天気の子』は正解よりも愛を叫ぶ

平日の夜に1人で足を運んだ近所の映画館、200人のキャパに対して20人くらいのお客さん。もうすぐ日付もまわる頃、映画のラストシーン、RADWIMPSの「大丈夫」を聴きながら「やられた...」と映画館の暗闇の中で僕は一人打ちひしがれていた。新海誠から未来を問われている感覚がした。 このnoteでは僕が天気の子から受けとったメッセージをつづっていきます。 ※本編のネタバレを含みます。 沈みいく東京が現すもの天気の子を観てまず印象的だったのが作中に流れる諦観した空気感だった。

ホットギミック ガールミーツボーイを男の子が観たら

ホットギミック ガールミーツボーイは女の子のためにつくられた映画だと思う。だけど僕はこの映画を観て男の子としてたくさんの気づきや、新たに感じることができたことがあったから、あえて男の子にもこの映画を観てほしいと思う。 そこには男として過ごしていると気づけなかったことや、知らなかったこと、女の子が生きる世界が広がっているから。 ※下記一部ネタバレありです。 ダメ男に惹かれてしまう気持ちこの作品、出てくる男の子たちがエロい。 予告編を観たときから思っていたんだけど、みんな危

【長いお別れ】家族の未来に「覚悟」と「光」を感じた映画【感想】

※重要なネタバレがないようにあらすじや予告編の範囲内に収めるように意識して書いていますが、不安な方は鑑賞後に読んだほうが良いと思います。 僕は介護が怖かった。ここ数年ずっと飛び交っている介護というキーワード。少子高齢化が声高に叫ばれる日本でとは若い頃から切っても切り離せない言葉だ。 正直、僕は介護が怖かった。いつか来るその日を受け容れる準備ができるだろうか、そう思うととっても不安な気持ちになる。お金のこと、自分の仕事のこと、自分の人生のこと、そして何より親と向き合い続けら