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Chicaneの名曲Offshoreを振り返る Trance Classic Archives 02


第一回目の"Flaming June"の記事を読んでいただきありがとうございます。
もしまだの方は是非ご一読を。

前回から連なる話なのですが、トランスシーンにおいて夏を連想させるアーティストといえば皆さまは誰を思い浮かべるでしょうか?

2000年前後であればYorkやATB。近年であればSummer Of Loveシリーズを展開しているMyonも人気ですね。プログレ寄りであればAndainやJaytech。あるいはトランスシーンでも多くの曲がプレイされてきた2000年代中期辺りのJunkie XLやFilterheadz辺りを挙げる人もいるかもしれません。

今回は夏になると曲が聴きたくなるアーティストの代表格ともいえるUKのレジェンドChicaneとその名曲"Offshore"をピックアップさせていただきます。

追記:2024年2月10日にアップデートしました。


Offshore制作秘話

muzikxpressのインタビューによるChicane本人のエピソードトーク。
Offshoreを制作した際の機材やアイディア出しの話やレコードをリリースした際のエピソードや反響、Power cycleのボーカルを使用した97年盤を制作する際の契約に関する話など。Chicaneファンにとっては気になる話が盛りだくさんの内容です。

全編英語ですが、字幕を付ければ苦手な人でも内容はわかりやすいですよ。


今年はChicaneの活動記念の年

1996年にプロジェクトがスタートして以来、今年の秋で25周年を迎えるChicane。

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2020年には「来年には何かしら特別なハプニングがあるよ」とSNSで予告していたChicaneですが、以前にリブートが行われていた2nd Album "Behind The Sun"のように1st Album "Far From The Maddening Crowds "のリブートが行われるとすれば、やはり真っ先にリメイク候補に挙がってくるのは1996年に発表された"Offshore"でしょう。

"Offshore"は多くの名曲を生み出してきたChicaneの初期作でもあり、最初のヒット作。UKダンスチャートで1位を獲得した他、各国のビルボードやナショナルチャートにもランクインするなど商業的にも大成功を収めた作品でもあります。

https://en.wikipedia.org/wiki/Offshore_(song)



Original Mix

それではまずは原曲を聴いていきましょう。1996年にChicane自身のレーベルModea Recordsから発表され、後にレーベルを象徴するアーティストとなるXtravaganzaからもリリースされました。

特徴的なギターのフレーズと共に7分で紡がれるバレアリックサウンドの歴史的名曲です。


Disco Citizens Remix

レコードでもA面に収録される事の多かったよりダンサブルな4つ打ちのバージョンがChicane自身によるセルフミックスのDisco Citizens Remix。

Disco Citizens名義の方がChicaneより以前から活動していたのもあるのですが、更にハウスに特化した曲を手掛けていたので名義によってサウンドスタイルを使い分けていた印象ですね。

LiveパフォーマンスでもDisco Citizens Remixをアレンジした物が多くみられます。

動画は1999年にIbizaで行われたChicaneの伝説的なLive Setから。驚くほどアップテンポなアレンジですが、そのライブパフォーマンスは必見。


Offshore 97

次に1997年に発表されたMixesを観ていきましょう。1stアルバム"Far From The Maddening Crowds "のリードシングルとして歌入りのバージョンが発表されました。


"Offshore 97"としてリリースされたのはDisco Citizens Remixに Power Circle ‎の楽曲"A Little Love A Little Life"のアカペラをマッシュアップしたもの。

正式クレジットがAnthony Pappa Bootleg Mixとなっているように、Anthony Pappa (後にFreefall - Skydiveというトランス史に残る名曲を生み出したオーストラリアのレジェンドDJ)が制作したものが正規リリースされた形になっています。アルバムにもオリジナルと併せて収録がされています。

シングルカットの際には"Eugina"の大ヒットで知られるSalt TankがRemixerとして参加。よりトランス寄りのRemix。

A Man Called Adamによるディープハウス寄りのRemixも人気が高かったですね。


Offshore 2007

"Far From The Maddening Crowds"の10周年記念復刻盤がリリースされた際にボーナストラックとして収録されたChicane自身によるセルフMixですね。
10年前に比べてプログレッシヴやエレクトロサウンドの影響も感じられるバージョンです。

シングルではリリースされず、アルバム以外ではプロモーションの為に50枚だけ制作されたCDRにのみ収録と希少性の高いMixなのですが、2012年にArmada Musicから"Offshore"がライセンスされた際にデジタルカタログとして正規リリースを果たしました。


"Twenty" Remixes

2016年にはChicaneの活動20周年を記念したベスト盤 "Twenty"がリリースされ、新たに2つのRemixがオフィシャルから発表されました。

Grum Remix

Anjunabeatsでも活躍するGrumによるRemixはディープかつエモーショナルなProgressive TranceのRemix。

"Twenty"に作成されたRemixの中でも特に人気が高く、トランスDJのみならずハウスやEDMのDJ達からも強力なサポートを受け、リバイバルヒットを果たしました。

世代によってはこのRemixで存在を知った人もいるのではないでしょうか?

Thomas Datt Remix

アップリフティングトランスのプロデューサーとして知られるThomas DattによるRemixはなんとチルアウト。原曲よりも更にダウンテンポなその意外な内容には驚かされましたが、リスニングにぴったりなとても聴きやすいRemixに仕上がっています。


Evolution Mix

Chicaneが2022年からスタートしたEvolutionプロジェクトは過去作を現在のChicaneがリメイクして進化させるという企画。その第一弾となったのが1997年に発表されたアルバム"Far From The Maddening Crowds"でした。

本作についての詳細はこちらを是非ご覧ください!


原曲の良さをそのままにチル感が増したオリジナルのEvolution Mix。最高のメロディーはどれだけ時を経てもその素晴らしさが失われることはないですね!


Disco Citizens Evolution Mix

1997年発売のChicaneの1st Album "Far From The Maddening Clouds"の発売25周年を記念してた作成されたリブート盤からの先行シングルとして発表。先のMixと違い、こちらはDisco Citizen名義のバージョンですね。

90年代のテイストを今のサウンドとして蘇らせたChicane自身によるDisco Citizens名義のEvolution Mixは現在のMelodic Houseシーンとも相性抜群のワーク。ユニークなミュージックビデオも注目です。

Armin van Buuren & AVIRA vs Chicane - Offshore

2022年に発表されたArminのアルバム"Feel Again"に収録されたArmin Van BuurenとAviraによるカバーバージョン。クレジットではChicaneも含まれており公式作品ともいえますね。

AviraらしいディープなグルーヴとArminらしいアッパーで情熱的な部分が垣間見えるProgressive HouseのRemixで、2022年のArmin Van Buurenを象徴する1曲とと言えるほど大ヒットを記録した話題作ですね。

A State Of Trance 2022にも先行収録されていましたね!

Kryder Remix

数年前に"Saltwater"のRemixも手掛けて大ヒットさせた実績があるKryderが今回は"Offshore"のRemixを制作。オリジナルの壮大さを前面に押し出しながらも近年のディープ系サウンドやプログレッシヴ系とコンバートした絶妙な内容のRemixで、これはこの夏大ヒットすることは間違いないでしょう。

近年では"On The Beach"のRemixや"Rapture"のカバーがその年を代表するほどのクラスの大ヒットしたKryderですが、2022年はこれなのでしょうね。

Symphonic Rehearsal Mix

2024年にChicaneが新たに制作したNew MixはSymphonicという冠が示すように交響曲をイメージさせる壮大でビートレスな内容となっています。

新曲だと言っても納得してしまうくらいOffshoreらしさともいえるメインフレーズはあまり使われていないのですが、Chicaneらしさ全開の極上のチルサウンドとなっていますね。

また、このバージョンと併せてリリースされたDC Symphonic Rehearsal MixもChicane自身によるセルフMix。冠のDCはChicane自身のプロジェクトDisco Citizensだと思うのですが、こちらは明るい雰囲気のある通常バージョンと違って哀愁のある感じに仕上がっていますね。こちらの方が原曲のOffshoreには近い印象を受けますね!



その他の様々な"Offshore"

アンオフィシャルの素晴らしいRemixやカバーされたバージョンから、作風が違うものを3点ピックアップしております。


Luke Chable's 2002 Private Remix

オーストラリアのプログレッシヴプロデューサーLuke Chableによって2002年の夏に制作されたRemixは当時勢いのあったProgressive Breaksとなっています。

正式リリースこそされていないのですが、Chicane自身によってピックアップされており「OffshoreのRemix作品におけるベストワークの一つ!」とコメントを残すなど本人も大絶賛しています。

2024年の現在ですが、Luke ChableのオフィシャルBandcampでも本作がDL公開されております。気になる方はこちらから是非。


Ferry Tayle 'Luminosity At Beach' Remix

フランスのトランスプロデューサーFerry Tayleが2010年にLuminosityに出演した際に制作したRemix。反響もあり、2014年にオフィシャルページでフリーDL公開された際には多くのトランスファンを喜ばせました。

近年でもプレイされ続けているなど、正統派のTrance Remixの中ではこれがベストという方も多いのではないでしょうか?


Stereojackers - Offshore (Joonas Hahmo Remix)

2012年にStereojackersによってカバーされたバージョンからJoonas Hahmo Remixをピックアップしました。非常にアッパーなProgressive TranceのRemixとなっていて、今回紹介した他のRemixにはない曲調。

Joonas Hahmoも夏にピッタリな曲をたくさんプロデュースしているので機会があればまた紹介したいですね。



最後に

"Offshore"の記事はいかがでしたでしょうか?

前回BTの"Flaming June"を取り上げた際にChicaneがRemixを提供していたこともあり、次は同世代の代表的なアーティストであるChicaneの楽曲も取り挙げたいと考えていました。

"Offshore"は当時のMix CDやコンピレーションにも多く収録されていましたし、今年がリリース25周年目とまさにアニバーサリーの年でもあるので、Chicaneのサプライズが順調であれば何かしらの動きがある事でしょう。

また、"Offshore"以外にもChicane自身のリリースには当時から現在に至るまで夏をイメージさせる素晴らしい曲がたくさんあるので、また機会をみて紹介させていただければ幸いです。

今回の記事を読んで「熱が再燃したよ!」「新たにファンになったよ!」という方はChicaneのラジオショー "Sun:Sets"も是非チェックしてみてください。

番組名のとおりサンセットにぴったりな綺麗な選曲ですよ。



NECO
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Analog Journey : Progressive & Deep Sound Party & Broadcast
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