見出し画像

VTuber・VRDJが野外フェスで透過スクリーンステージにバーチャル出演する際のコツ

こんにちは。バーチャル空間でVRDJとして活動しているDJ SHARPNELです。

だんだんと人が集まれる状況になり、ライブやコンサートなどの音楽イベントも少しずつ大規模な開催ができるようになってきました。そんな中、これまであまり例のない「Vシンガー・VTuberによるバーチャル野外ライブイベント」が実施され、DJ SHARPNELも出演させていただきました。
今回は、今後増えると思われるであろう野外でのバーチャルライブイベントに出演する際の映像面や演出面での工夫について、自分自身の試みや共演者の方からの学びやお客さんからの反応などを元にTIPSをまとめてみました。

野外バーチャルイベントZEPPIN FES・V-LIVE2・3

11月5日から7日の3日間にわたって南浦和弁天公園にて、グルメ&音楽の屋外フェスイベントである南浦和絶品グルメ祭りwith ZEPPIN FESが開催されました。

画像1

2021.11.5-7「南浦和×絶品グルメ☆祭り with ZEPPIN☆FES 2021」ZEPPIN☆FES特設ページ

お肉・お酒・ラーメン・お肉などの絶品屋台グルメとアニソンDJ、音楽ライブ、コスプレステージなどが開催されるZEPPIN FESのプログラムとして、VシンガーによるバーチャルライブイベントV-LIVE2・3が開催されました。

このV-LIVE2・3では、会場である南浦和駅近くの住宅街にある弁天公園内のステージに透過スクリーン(いわゆるポリッドスクリーン)が設置され、背面からプロジェクターを照射するタイプの映像演出が行われていました。そのため、現実空間にあたかもVtuberやVシンガーが登場して、ファンの皆さんやグルメを楽しむ地元の方、ちびっこたちと同じ空間を共有できるとても距離感の近いイベントになっています。

画像2

ボーカリスト小寺可南子とアネモネ・モーニアンによるツインボーカルユニット「コテアニ」登場時の様子

DJ SHARPNELが出演した11月6日土曜日は夕方17時すぎからバーチャルステージが開幕。出演を知っていたファンの方はもちろん、グルメを楽しみに来た通りがかりのお祭りのお客さんもそのままライブに参加され、約2時間に渡るステージは始終多くのギャラリーに囲まれながら行われました。特に夕方の時間帯ということもあってか子供連れの方の参加が多く、Vシンガーのうたのお姉さんの前に数人があつまって一生懸命ふりつけをコピってて可愛かったです

普段、配信や動画投稿、ステージライブでも画面投影での出演が多い中、お客様と同じ空間に同じ距離感に登場できる透過型スクリーンを用いたバーチャルステージは、VTuberやVシンガーにとっては等身大でステージを見せられる非常に貴重な機会です。特に、野外でかつ観覧無料という普段まったく接するチャンスのないオーディエンスにパフォーマンスを披露できる機会はこれまであまりなかったと思います。

想像していたよりも多くの通りがかりの方に長時間足を止めてみていただいていたようで、合いの手や拍手などでレスポンスもありました。「流れている映像を見る」と「歌手によるステージ」の中間でもある透過型スクリーンでのバーチャルライブは、南浦和絶品グルメ☆まつりwithZEPPIN☆FESでの事例を見た限りでは今後日本中のお祭りやフェスなどに広がっていく可能性を感じました。まだまだ感染症対策などもある中、技術的にも野外の投影などはリスクがつきまとうところですが、今回実施された絶品グルメ祭りの主催の皆様には本当に感謝&ビッグリスペクトです。

大人も子供も初見で楽しめる野外バーチャルライブの波が、全国に広がることを楽しみにしています。

野外透過スクリーン出演時のコンテンツ制作について

ここからが本題となります。

今回、南浦和で開催されたZEPPIN☆FES V-LIVE2・3(以下ZEPPINFES)では夜間の市街地での透過型スクリーンでの演出が行われました。ZEPPINFESでのお客様の反応を見るに、今後も同様のシチュエーションでの出演ケースやオーディション開催などが考えられますので、その時に備えて自分自身が行った工夫、ほかの出演者が行っていた演出、当日のギャラリーの反応などを踏まえ、
・野外で
・無料開催される
・透過スクリーン型バーチャル音楽イベント
に出演する際のアーティストサイドのコンテンツ制作について考えたいと思います。

同じくZEPPINFESに出演された、おきゅたんbotさんも透過コンテンツ制作のコツをまとめていらっしゃったので是非参考にしてください(簡潔かつ完璧ですごい!)

①V野外のコツその1・投影サイズを確認しよう

まず映像演出面では投影時のサイズ確認が最重要です。

せっかくの透過スクリーンですのでなるべく等身大で出演したいもの。出演時点で映像投影サイズが確定していない場合は、スクリーンサイズが等身大で設置されることを想定し、映像の天地に全身が収まるような画角に調整することを推奨します。

画像3

なるべく主催側から投影スクリーンサイズや画角などを確認し、等身大で出演できるように心がけましょう。他の出演者の方と等身の統一感が保たれていると、ステージ全体を通して安心して観覧できます。

②V野外のコツその2・黒ベタの透過に注意

透過スクリーンでの映像制作を行う場合、背景は黒ベタとなります。
黒ベタ以外を背景色にした場合、スクリーンの投影部分がくっきり四角に切り取られてしまうため「映像を見ている」感が強くなってしまいますので、狙って演出する場合以外は透過になる黒を使用します。

プロジェクター投影では黒部分はそのまま透過しますので、スクリーンの向こう側が透けて見えます。
市街地やイベント会場では、思った以上にスクリーンの向こう側に光源があり、これらは透過した部分を通り抜けて見えてしまいます。キャラクターの衣装を黒に近いものにしてしまうと、全体的に見えづらい画面となってしまうので注意が必要です。

画像4

白系トップスのコテアニのお二人はくっきり表示されている(最高)

画像5

DJ SHARPNELは黒系衣装だったため、透過して背景化している(悲しみ)

③V野外のコツその3・背景のパーティクル演出はかなり効く

今回DJ SHARPNELの演出では行っていなかったのですが、えぴたまごさんや桃知みなみさんとジビエーズの出演時のパーティクル演出が非常に効果を発揮していました。

ポリッドスクリーンではどうしても表面が周囲の光を反射してしまうため、正面から見ていてもスクリーンを認識してしまいます。アバター周囲にパーティクルが発生している場合、反射よりも動くパーティクルに視線が誘導されるため、スクリーンの存在による違和感が大幅に緩和されます。

透過スクリーンでパーティクル演出を行う際は、アタバーの周囲にのみパーティクルを描画したり、外側に行くほどフェードさせる処理(ヴィネットなど)をしておくと、投影時の映像範囲を意識させないため、さらに没入感を高められそうです。

④V野外のコツその4・床面を描画して浮いた世界にステージを

当日の投影方式によっては、スクリーンがステージ床ぴったりに設置できずすこし上方に投影される場合があります。
その際、映像内で床面が描画されていると空間上の仮想ステージに立って歌っているような効果により、アバターの立ちポジションに安定感が生まれるように見えました。
床面の描画もパーティクル同様アバター足元のみにとどめるなど、描画範囲を考慮した演出だとより没入感を高められます。

DJ SHARPNELのステージでは、等身大を計算後仮想のDJブースとVJ用映像パネルを前面に設置してステージの底面を意識させるレイアウトにしました。

⑤V野外のコツその5・多人数で一緒に盛り上がっちゃおう

映像出演形態の場合、一般的にはオーディエンスとの対話が難しいためバーチャル側から現実側へのコミュニケーションが一方通行になりがちです。

その点、複数人がバーチャル側に登場する場合、バーチャル内でコミュニケーションが成立しているため、掛け合いのキャッチボールに巻きこまれる感覚での存在感を感じることができました。

今回の南浦和ZEPPINFESでは、コテアニさん・桃知みなみさん&ジビエーズさんが複数人で出演されており、掛け合いトークやそろった振り付けでギャラリーを巻き込んでいました。

複数人アイドルユニットであれば、自己紹介パートの掛け合いや、歌唱パートの歌いわけや、フォーメーションによる振り付けなどの構成的な見せ場も作れます。

VRDJとして出演する場合は、DJ以外にサイドキックMCやダンサーなどで出演できる人を用意すると、よりお客さんも一緒に盛り上がってもらえるように思いました。

⑥V野外のコツその6・バーチャル出ハケでオーディエンスの期待と余韻をコントロール

現実のステージライブでは、舞台袖から登場するなど登場の瞬間は必ず存在します。登場の瞬間からオーディエンスの興奮が一気高まりステージを迎え、終わり際でのハケでライブの余韻となごりおしさを楽しむ。まさにライブの感情を大きくコントロールするのが出ハケです。
バーチャルライブでの出演では、映像切り替えとなるケースが多いと考えられますので、この「出」と「ハケ」を映像内でしっかり演出することで、ステージの始まりへの期待感や終わりの余韻をコントロールできます。

バーチャルの場合、上手もしくは下手側から正面ステージに登場した場合、スクリーン左右から唐突に表れる形となります。バーチャルの場合、出ハケの演出は現実以上に自由です。
・画面エフェクトによってアバターが描画される
・フラッシュして登場する
・せり上がりで登場する
・映像奥からドアが描画されて登場する
など様々な演出が考えられます。
これらの出ハケの演出をうまく使って、初めて見たギャラリーの心をグッとつかんじゃいましょう。

最低限でもフェードイン・フェードアウトを入れておけば、唐突に登場する・切り替わるのと比較して違和感を大幅に緩和できます。

画像7

DJ SHARPNEL定番のブース引っ込みハケからのFO

⑦V野外のコツその7・歌唱はマイクもしくはインカムがあるとリアル度アップ?

多くのアイドルのステージで観られるように、人間は歌う時に手持ちマイクを持つかインカムを装着しています。
バーチャルの場合でも、現実世界で使用されている機材やアイテムを着用したり配置することで、「バーチャルであること」以外の部分のリアリティによってリアル度がアップします。

歌唱の場合はマイクやインカムの装着があると、フェス会場に合わせたリアル感がもたらされるように感じました。

ルミカやペンライトなどの光モノの装着も、暗闇に光ってキレイに映えます。振り付けも見やすくなるのでとってもおすすめです。

画像6

今回のステージ映像元画像。DJ機材は実物に近いモデルを使用しています。

⑧V野外のコツその8・コール・アンド・レスポンスは結構やってくれる

事前収録が中心となるバーチャルライブではコール・アンド・レスポンスは無理だよなぁ...と思いがちですが、意外とお客さんはノリがよいのでやってくれます。

レスポンスがあることを想定したコール・アンド・レスポンスや、当日開催されているイベントに触れた内容の問いかけなどは結構ギャラリーの皆さんも応えてくれてました。拍手もちゃんともらえてます。

何より、スクリーンの最前にいる子供たちはしっかりと反応してくれています。積極的に語り掛けるとより没入感の高いステージになるでしょう。

⑨V野外のコツその9・主催者の方へのお願い:制作動画スペックと投影仕様があるとめちゃくちゃ助かる

こちらは野外バーチャルイベントの主催を検討される方へのお願いになりますが、映像制作時に提出する動画のスペックや投影時の仕様をいただけると大変助かります。

今回出演させていただいた南浦和ZEPPINFESでは、事前に動画解像度や投影時のサイズ(使用レンズ・投影距離などのスペックも)についてデータをいただけていましたので、イメージ通りの映像が投影され、現地で見に行った自分も大興奮でした。

透過スクリーンを使用した野外バーチャルイベントを企画される際は、以下ような動画スペックがあると助かります。

・動画フォーマット(mp4など)
・画面比(16:9または4:3など)
・動画画面解像度(1920x1080など)
・推奨フレームレート(30fpsなど)
・推奨ビットレート(10Mbpsなど)
・投影画面サイズ(横2.0m x 縦1.6mなど)

設営予定の投影画面サイズはプロジェクターのマニュアルに記載の投影距離とサイズの関係などが参考になります。

まとめ

今回は南浦和で開催された絶品グルメ祭りwith ZEPPIN FES、野外バーチャルライブステージ「V-LIVE2・3」に出演してみて得られた野外バーチャルイベント出演時の映像制作TIPSをまとめてみました。

同じ現実でのイベントでも、基本的にファンの方があつまるライブやコンサートとは異なり、幅広い年齢層かつ不特定多数のギャラリーに観ていただける無料野外フェスでのライブは新しい方に知っていただく大きなチャンスです。今回のTIPSを映像づくりの参考にしていただけると幸いです。

また、今回の南浦和ZEPPINFESに出演者として、そしてオーディエンスとして参加してみて、野外で行われるお祭りと透過スクリーンによる距離感の近いバーチャルステージの絶大な親和性を感じました。
なにより、アニメなお姉さんたちが目の前で歌っている風景をめちゃくちゃ楽しんでいる子供たちが印象的でした。

今後も絶品グルメ祭り様を始め、様々なイベンターの方が野外バーチャルライブの企画をしていただけることを、とても楽しみにしています。

おまけ

こちらは主催の方は意図したことではないと思いますのでおまけとして。
今回開催された南浦和弁天公園は周囲がマンションに囲まれているため、透過スクリーンを通した映像が向かい側のマンションに投影されていました。

そのため図らずしも巨大アバターになって町中でライブを行うという、マクロスプラスでシャロンアップルを見た時以来の妄想がかなってしまいました。

プロジェクションマッピングでのアバター出演もとっても楽しそうです。

おわりに

SHARPNELSOUNDでは誰でもできるバーチャルライブの可能性を追求しています。
気になった方は是非Twitter @sharpnelsound とYoutube公式チャンネル SHARPNELSOUND をチェックしてみてください。

野外バーチャルフェスでのVRDJ出演オファーをお待ちしております。

画像8

謝辞

・南浦和絶品グルメ☆祭り with ZEPPIN☆FESを主催された絶品グルメ屋台の会さま
・お声がかけいただいた桃知みなみさま、春野さま(ARUTEMA)
・ZEPPINFES参加者のみなさま
・南浦和ご町内のみなさま
・いつもかわいいシャーロさん(S.I.Nさま):https://booth.pm/ja/items/987296

ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?