整数システムのほころび

整数 integral numbers というシステムには齟齬がある、と気づいたのはこんな手順でした。

まず"1"は、これは問題ないです。基準点"0"からある間隔片方向(人類は右が好み)に歩み、足が着地した所が"1"。だから同じ歩幅でもう1歩進むと"2"。と、たいていの数学史の入門書には記されています。ストーリーとして伝わりやすいから。

本当は、1までの間隔を模倣する棒を制作して、それを1の点を基準としてゼロ側を持ち上げ反対側にパタンと倒す手順で"2"を定めたように推測されます。この時に結び目を使ってしまうと不精確さが増してしまいますから。

でも次の刻みは精確に進めようとすれば、実は"4"が先になります。2の2乗は精確。そして、逆に"3"は2-4間の半分。精確に進めようとすれば、実ははこの4までで既に限界を迎えたのですよ。次のステップは2の3乗である"8"のみしか精確には刻めないのです。間にある"5","6","7"は、レーザー計測器の無い時代には不精確にしか刻めないのです。先にやった1を基にする2の刻み方は、5,6,7ではもはや不精確さが増幅し過ぎるため、使えないのです。

つまり現行の、人類が唯一採用している整数システムは、特に5,6,7については、厳密に定義するのも面倒くさいし、エイッと採用してる方が実生活では便利が高いからと使用を続けられてきたに過ぎないのです。

この仕組みは、ピアノの調弦をする方、音響学的にどう対処してるかを知る方にはすぐ伝わります。要するにピタゴラス音階など、周波数測定器が19世紀に発明される以前は、人間は音がハマってるかズレてるかを、ひたすら共鳴 Resonance と不協和 Dissonance (英語/ラテン語では対義語ですね) のみを基準として確かめてきました。それが科学的に一番精確だからです。音楽ファンが好きな人永遠のトピックである「平均律 Well-Tempered」は、剛性の高い、まるで造船のように製造される現代のピアノ(18世紀のピアノフォルテの進化形。興味が深い方は、都内信濃町で創価学会が経営する文化音楽エージェント民音が設置した日本最高の民音音楽博物館を、ぜひ。世界の音楽学者が垂涎するチェンバロ以降の鍵盤楽器が目前で見れます)をどう妥協して和音をつくるのか、どのように他の楽器とアンサンブルさせるかの音楽的な「まっ、この辺で勘弁しといてやるか」作業なので、それをやたらに褒めても、逆に純正律などをやたら持ち上げることで貶す立場にせよ、それは演奏者でもリスナーでもわりと賢さに限界のある態度です。音楽には音高 pitch 以外にも大事なことがいくらでもあるだろう。time,beat, tempo たとえば英単語のこれらは、実は音楽的にはすべて異なることを表象する用語です。語の定義を文字面で理解してもしょうがない、高度に音楽的に異なる概念をそれぞれ示しています。

と、言うわけで Integral Number System 整数体系の非精確さのお話でした。

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