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隠れた名曲:フリートウッド・マック「I'm So Afraid」

 フリートウッド・マックの曲で最も好きな曲を挙げるとしたら、皆さんは何を選びますか?
 「Go Your Own Way」や「You Make Loving Fun」など、たくさん候補はあると思います。しかし私の場合、今回紹介する「I'm So Afraid」を超える曲はそう多くありません。
 本noteでは、私が愛してやまないこの曲の魅力を紹介します。


■はじめに

 フリートウッド・マック。

 イギリス出身のブルースロックバンドだった彼らは、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスの二人を迎えることで、最上級のポップスを奏でる世界的バンドへと変貌を遂げました。

 その変貌の始まりを担ったアルバムこそが『Fleetwood Mac』です。邦題では『ファンタスティック・マック』。このアルバムはいわば、新生フリートウッド・マックとしての1stアルバムでもあります。

 このアルバムからは、スティーヴィー・ニックスの歌声が妖しく輝く「Rhiannon」などといったヒット曲が生まれ、初の全米No.1に輝いたアルバムでもあります。

 しかし、私が推したい曲はアルバムの最後に収められた「I'm So Afraid」という曲です。このアルバムの中では比較的地味な曲ですが、私の大のお気に入りの曲でもあります。

 そこで本noteでは、この曲「I'm So Afraid」の魅力について紹介しようと思います。

 その前に、まずはフリートウッド・マックの概要と、この曲が収められたアルバム『Fleetwood Mac』について軽く解説しましょう。

 それでは、どうぞ。

■アルバム解説

ーフリートウッド・マックについてー

 フリートウッド・マックといえば大ヒットアルバム『Rumours』(1977)、邦題『噂』が有名ですよね。グラミー賞最優秀アルバムにも輝いています。

 こちらのアルバムは名盤中の名盤です。様々な名盤ランキングに顔をのぞかせるアルバムで、ジャケットだけでもご存じの方は多いことでしょう。個人的には5曲目の「Go Your Own Way」が好きです。私の場合は車でドライブ中にかけることが多いです。
 
 それはさておき、今回紹介したいのはこちらのアルバムです。

 こちらはフリートウッド・マックの『Fleetwood Mac』(1975)、邦題『ファンタスティック・マック』。『Rumours』(1977)の前作にあたるアルバムです。

 そもそも、フリートウッド・マックの活動は'60年代後半からスタートします。最初の頃はブルースをベースにしていましたが、このアルバムからメンバーが大きく変わりポップ路線に移行します。

 加入したのは、バッキンガム・ニックスというグループで活動していたリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスの二人。

 この二人を迎え、完全にポップスを奏でるバンドとなったフリートウッド・マック。この新生フリートウッド・マックとしての最初のアルバムが『Fleetwood Mac』です。彼らにとって初の全米1位に輝いたアルバムでもあります。

 『Fleetwood Mac』。タイトルにバンド名が付けられていますが、フリートウッド・マックの1stアルバムではありません。しかし、ポップ路線に移行した最初のアルバムとしては、新生フリートウッド・マックの1stアルバムと呼ぶこともできるわけです。

 『噂』こと『Rumours』の大ヒット前夜が記録された、新生フリートウッド・マックの『Fleetwood Mac』。
 
続いてはその内容を軽くおさらいしてみましょう。

ーアルバムをサラッとおさらいー

 まずはA面。
 1曲目は「Monday Morning」。新たなに加入したリンジー・バッキンガムがリードボーカルを取ります。1曲目から彼のカッコいいギターとボーカルが楽しめます。明るくて聴きやすい、アルバムの開幕に相応しい曲です。

 2曲目は「Warm Ways」。今度はリードボーカルが変わって、クリスティン・マクヴィーの優しい声。先ほどの「Monday Morning」から打って変わって、終始穏やかな雰囲気が漂っています。

 4曲目は「Rhiannon」。来ました、スティーヴィー・ニックス。彼女のリードボーカルはアンニュイで、妖しさ満点です。1曲目で歌っていたリンジーのギターが随所に顔をのぞかせ、花を添えています。この曲は間違いなくA面のハイライトでしょう。ちなみにライブバージョンもカッコいいです。

 続いてB面です。
 7曲目は「Say You Love Me」。リードボーカルは2曲目と同じクリスティンです。コーラスパートでは、リンジー、クリスティン、スティーヴィーの3人が美しいハーモニーを奏でます。

 8曲目は「Landslide」。4曲目の「Rhiannon」とは違う表情を見せるスティービーのボーカルが映えます。一貫して穏やかさを湛え、シンプルなメロディーが際立った名曲です。こちらはB面のハイライトになります。

 11曲目。いよいよ最後の曲です。新生フリートウッド・マックとしての1stアルバム『Fleetwood Mac』のトリを飾るのが、今回紹介したい「I'm So Afraid」です。

■隠れた名曲解説

 今回紹介したいのが、アルバム『Fleetwood Mac』の最後を飾る「I'm So Afraid」。

 私がこのアルバムに出会って最初の頃は、1曲目の「Monday Morning」や4曲目の「Rhiannon」といった曲が好きだったものの(もちろん今も好きですが)、アルバムの最後の「I'm So Afraid」は正直地味な曲だと思っていました。

 しかし、転機が来たのはライブバージョンを聴いた時のことです。
 まずは今年2023年に出たライブ盤『Rumours (Live)』から、ライブバージョンの「I'm So Afraid」。

 原曲とは異なりファルセットで歌わないところに違和感を感じつつ、「ふ~ん、まあ、なかなかカッコいいね」くらいの感想を持ちました。

 同じ時期に、YouTubeにて「I'm So Afraid」のライブ映像を見ました(先ほどとは異なるもの)。なお、動画のタイトルが「Say You Love Me」となっていますが、中身はちゃんと「I'm So Afraid」です。

 この動画を見た時、何か魂に訴えかけるものがありました。

 まず、リンジー・バッキンガムの力強い歌唱。原曲とは異なりファルセットは使っていませんが、逆にそれが力強さを演出しています。

 そして、白眉は彼の表情豊かなギタープレイです。エコーも交え、まるで感情が爆発しているかのような凄まじいギターはこの曲とマッチしており、ギターが叫んでいるかのような印象すら受けます。彼のギターとボーカルが調和し、聴き手の感情に訴えかけてくるようです。
 ところで、リンジーは指で弦を弾いてギターを弾いていますが、痛くないのでしょうか。どうでもいいですね、失礼しました。

 この映像で個人的に好きなのは、ミック・フリートウッドのドラムプレイです。口を開けて何かに威嚇しているかのようにドラムを叩く姿に私は痛く感銘を受けました。私はドラムを始めて数か月というドラム初心者ですので、少し彼のプレイに憧れるところがあります。シンプルなドラムですが、こちらも感情を揺さぶるようなプレイです。

 この動画に出会って「I'm So Afraid」に魅了された私は、改めて原曲を聴いてみることにしました。

 ファルセットを駆使したボーカルと、感情を揺さぶるかのようなギター。そして私はしみじみこう思います。

「ええ曲やなあ…」

と。曲の構成はシンプルですが、聴きどころはアウトロです。感情がダイレクトに伝わってくるかのようなギターが、曲の終わりを、そしてアルバム『Fleetwood Mac』の終幕を彩ります。

 さて、この曲の魅力はブルースとポップの二面性にある、そのように私は考えています。元々ブルースロックバンドだったフリートウッド・マックの「ブルース」っぽさと、新生フリートウッド・マックの「ポップ」さが見事に融合した名曲だと言えるでしょう。

 フリートウッド・マックの不思議な魅力、すなわちブルースとポップの二面性。その魅力を余すところなく楽しめる曲が、この「I'm So Afraid」なのです。

 ちなみに、原曲ではリンジーはファルセットを使って歌っており、ライブではファルセットを使っていませんが、どちらにも良さがあります。

 前者の方は今にも崩れ落ちそうな美しさが強調されますが、後者は感情をダイレクトに訴えかけるような力強さが際立っています。

 「I'm So Afraid」。全体を通してブルースらしさを感ますが、どこかにポップさも漂う。つくづく不思議な名曲だと感じます。

■おわりに

 本noteでは、フリートウッド・マックの隠れた名曲である「I'm So Afraid」を紹介しました。何となく魅力が伝わったでしょうか。

 なお、もちろん原曲も素晴らしいですが、私が上に挙げたライブ映像も見て損はないと思います。YouTubeで見られますので、是非この機会にご覧になってみてはいかがでしょうか。また、ライブバージョンの「I'm So Afraid」も合わせて聴いてみてください。きっと原曲にはない良さが感じられると思います。

 それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。
 
 良き音楽との出会いがあらんことを。

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