【徹底解説】グラップリングが強くなる方法

私の経験談を踏まえて、「どうすればグラップリングが強くなるか」をまとめます。


私のこれまで

グラップリング1日目の人とGordon Ryanが「グラップリングが強くなる方法」を述べても、絶対Gordon Ryanのほうが説得力があるのは間違いないです。

※Gordon Ryanとは、現在世界最強のグラップラーです。

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https://www.graciemag.com/en/2018/09/16/gordon-ryan-dominates-to-win-double-gold-at-the-no-gi-pan/ より)

私はGordon Ryan並の強さでは当然ないですが、ある程度の説得力を持たせるために、これまでの経験を述べていきます。

私は、中学から柔道をやっていました。

しかし、中学・高校ともにガッツリはやっていないです。週1時間ほどの練習量で、都道府県大会とかに出ていたわけでもありません。

ただ、校内では強いほうで、寝技が好きでした

その寝技好きが高じて、友達を募って体育館でグラップリングの練習をしていたりしました。15年ほど前からグラップリングが好きでした

大学になっても惰性で柔道を続けていましたが、もうモチベはほぼありませんでした

また、大学で柔術のジムにちょっと通わせてもらっていましたが、週1時間未満くらいしか練習していなくて、全然モチベが出ませんでした。そのジムの中でも1番に弱いと言って良いほど弱かったです。周りが強すぎたのもありますが・・・。

加えて、道着(ギ)が嫌いでした。道着好きの人には申し訳ないですが、道着は

・掴まれると離されない。特に身体が小さい自分は大きい人とやると不利が広がりました。

・指が痛い。指を怪我しがち。

・暑い。

・臭い。

・洗うのが大変。

ということで嫌いでした。ノーギがやりたかったのですが、あまり適した環境がなく、モチベも上がらずでした。

社会人になって「もう格闘技は一区切りでいいや」と思ったのです。

が!社会人になって3年ほど経ち、ある試合を見ました。

RIZINでの桜庭和志&所英男 vs ヴァンダレイ・シウバ&田村潔司のグラップリングの試合です。

この試合を見て「あ、もう一回やりたいな」って思ったのです。

グラップリングを再開してから

再開してから、かつてないほどグラップリングのモチベが出ました。

大学までは「やらされている感」があって、自らの意志でのめり込む感じがなかったのですが、社会人になってからはグラップリングが楽しくてしょうがなかったです。

新しく入ったジムでも、最初は当然さほど強くなかったですが、(自分で言うのものなんですが)メキメキと強くなりました

再開してから3年間の間で大会で優勝したりしました。

また、ギありはやっていないので私は白帯のままですが、グラップリングの大会で柔術黒帯と対戦して互角の戦いをしたこともあります。途中極める寸前まで行ったのですが、詰めが甘くて逃してしまって、それが今でも悔しいです・・・。

私のは日本でほぼいないノーギのサブミッションオンリースタイルです。ギは着ません。

別にギを否定するわけではないのですが、今までいろいろやってきてノーギのサブミッションオンリーが自分の好みに合っていました。ポイントゲームもなんか性に合わなかったです。

ノーギのサブミッションオンリー・・・そう、私が一番好きなのは10th Planetです。

特にGeo Martinezが好きで、ハイサム・リダからタップ取ったときは叫びすぎて腹筋がつりました。

閑話休題、なぜ3年間ほどでそれほど強くなれたのか?を理論的に分析して、細かく述べていきたいと思います。

何よりも「好き」ということ

ここまで強くなったことの一番の根底にあったのは、やはり「グラップリングが好き」ということです。

それまでは、私は格闘技が嫌いではなかったですが、今ほど好きではありませんでした。

好きだからこそ、いろんな情報・テクニックを収集するようになるし、試合を山ほど見るし、練習に前向きに行くようになります。

グラップリングに限った話ではないですが、「好きこそものの上手なれ

では、グラップリングが好きではないという人は、どうすればグラップリングが好きになるのでしょうか?

これは非常に難しい問題です。

まずは、自分のグラップリングへの率直な気持ちを整理し、どう自分の生活・自分の人生においてグラップリングに接していく必要があると思います。

そうすれば、状況が明確になって、ちゃんとしたグラップリングとの付き合いができるかもしれません。

(これこそ、グラップリングに限った話ではないと思いますが)

知力をつける

次に重要なことは、「知力」をつけることだと考えています。

グラップリングは、大きな体重差がない限り、基本的に「知力」で結果に差がつきます。これはギありよりもその傾向は強いです。ギがあると、体格差がより物を言います。一番は、ギを掴む力です。これがギでは非常に重要になっています。しかし、ノーギだとスルスル抜けられるので、力よりもテクニックが相対的に重要になっていると私は考えています。(Keenan Corneliusが「ノーギはギありよりもテクニックの絶対数が少ないよね」というようなことを言っていましたが・・・・それはまたいつか議論するということにして、置いておきましょう)

体力でも筋力でもありません。「知力」です。

では、「知力」とはなにか?

それは「腕十字のかけかた」「ハーフガードからのスイープの仕方」など、点の知識をたくさん知っているだけではありません。

知力とは個々の技を知っているだけではなく、有機的・全体的に勝つまでの流れを構成できる力です。

だいたいYouTubeやInstagramに載っているテクニックというのは、点です。その点をたくさん知っていても、試合においてどのように流れにおいて点を繋げていくかわからなければ、勝てません。

逆に点が少なすぎると、個々の状況におけるベストな点が見当たらず、うまく展開できないこともあるでしょう。

このような知力は、スパーを繰り返して経験から学ぶこともできますが、効率的に強くなるためには、有機的な知識を得て、自分の戦い方に活かし、何か壁にぶつかったらまたそこで反省し、それに対する答えをまた見つける、いわゆるPDCAを明確に繰り返すことがベストです

PDCAとはPLAN(計画)・DO(実行)・CHECK(評価)・ACTION(改善)の意味です。(PDCAについて詳しい説明

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毎回のスパーで、なんとなくやっていませんか?誰かに負けたとき、必ずそこにはCHECKとACTIONのチャンスがあるはずです。このサイクルを密度濃く行うことが重要です。

また、私は実際にYouTubeや本を見て点のテクニックを学びつつ、プロの試合を見てどのような思考によって、それぞれの選手がどのような強みを出して勝ちに至るか、というところを熱心に学びました。

それを実際にプロの世界で体現しているのが、Gordon RyanやGarry Tononなどを育てた名コーチのJohn Danaherです。

DanaherのInstagramや、テクニックを教えている動画を見ればわかりますが、Danaherは理論の塊です。言ってしまえば、非常に説明が長いです。それはなぜかというと、点ではない、有機的・全体的な展開も含んでいるからです。

(サドルポジションからアキレス極める流れだけで3分46秒。他で20分超えの動画も多数!)

グラップリングは、点の勝負ではなく、心理戦であり、いかに状況に応じて流動的に自分の得意なパターンを出せるか、が重要です。

そのためには、総合的な知力が必要なのです。いかにこれを理論的に身に着けて、実践していくかが重要です。

座学をする

知力をつけるために、大事なのは座学です。

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ジムに行かずに、動画を見たり、ひたすら頭の中でPDCAを回したりして考えることこそが重要です。

重要度で言えば

座学>=打ち込み>>>>>>スパー

ではないかなと私は思っています。

ほとんどの人がスパーをひたすらしがちだと思います。確かに、スパーは楽しいです。が、スパーを回すだけでは強くなれないのが現実です。

座学で前述の有機的な知力を高めていきましょう。

ちなみに、この記事を読むのも座学の1つです。これを読んでいろいろ気づきがあると幸いです。

得意パターンを作る

私が今までさまざなプロの試合を見てきて、強い選手にはやはり得意パターンがあります。

Gordon Ryanなら、サドルからのヒールフック、もしくはバックテイクからのチョーク。Geoならトラックからのカーフスライサー、ツイスター、などなど。

また、自分がプロの強い選手とやると必ず得意パターンを持っていて、それに気づくと飲み込まれています。逆に、いまいち伸び悩んでいる人には得意パターンがないと感じています。

先ほど述べたPDCAにも、やはり目標が必要です。目的地なくしてPDCAを回しても、うまく試合を組み立てるに至りません。

私は、身体が小さいために最初はなんとなくクローズドガードが比較的得意で、そこからラバーガード、次になんとなく流行りの足関節を取り入れたら、ある程度の完成度まで行きました。

最初どこに目標にするか、それはなんとなく決めても大丈夫です。そこから少しずつ積み上げて、目標を広げていけば自ずと全体的な完成度が広がっていきます。そして、一通りの知識を身に付けた上で、対戦相手よりも秀でた得意パターンを持つのが重要です。

この得意パターンを意識的に作ることが重要です。

有利なポジションを知る・作る

強い選手は、極めにいくのとポジションを取るときの分配が上手です。

まずは、ポジションを取る、十分なポジションを取ってから極めに行く。前述の知力にも関わりますが、あまり上手でない人はすぐに極めに行こうとしたり、その逆をしたりします。

そのため、最初に「有利なポジションとはなにか」を知る必要があります。その紹介をしたいと思います。

私の考える完全に有利なポジションは「バック」「サドル」「スパイダーウェブ」の3つです。これら3つのポジションは、逆に相手から攻められたり、不利なポジションに持っていかれる可能性が極めて低いです

※スパイダーウェブとは、腕十字を取る一歩手前のポジションです

Geo MartinezがJoao Miyaoからオーバータイムのときバックからタップを取ったのがその証左です。あのJoaoがタップする姿はほぼ誰も見たことないでしょう。しかし、バックから始めればJoaoもタップするのです。逆に言えば、なぜJoaoがこれまで一本負けしたことないのか、それはこれらの完全に有利なポジションを絶対に取らせないからです

つまり、これらの完全に有利なポジションを目指すことが非常に重要です

次に有利なポジションだと考えているのは、「マウント」「サイド」「クローズドガードでのボトム」だと私は考えています。この3つは、ひっくり返されたりカウンターを食らったりする可能性もありますが、結構有利なポジションです。マウントはSマウント、サイドはキムラトラップ、クローズドガードでのボトムはラバーガードをマスターできればかなり強力になるでしょう。

このポジションを通して、先ほどの完全に有利なポジションへ移行するのも良いと思います。実際にGordon Ryanはパスからマウントに行き、そこから圧力をかけてバックに行くのが非常に上手です。選手によっては、マウント取られても絶対にバックは取られないようにしている人もいます。実際に私も基本的にそうしています。

このように、全体的な流れの中でポジションの重要性を把握し、流動的に有利を取ることが重要です。

常に両手両足・頭・重心の位置を把握する

みなさん、スパー中に両手両足がどこにあって、どこに絡みついてるかわからなくなっていませんか?打ち込み中も、どれがどう動いているか混乱していませんか?

グラップリングは両手両足を使って攻めて、両手両足を狙いに行くスポーツなので、自分と相手、どちらもその位置が非常に重要です。

加えて、チョークも狙いに行くので、頭の位置も把握しなければなりません。さらに、スイープしたりガードするときのために、重心の位置も大事です。この「両手両足・頭・重心」を常に把握する力は非常に大事です。

では、具体的にどうやって把握するのか?一番大事なのは、五感をフルに使うことです。「味覚はどう使うんだ」というツッコミはさておき、味覚を使う勢いで五感を使うのが大事です。笑

中でも、私は視覚に頼らず、触覚をたくさん使うのが大事だと思っています。視覚は基本的に頼りないと考えて良いと思います。自分が亀になったら地面しか見えないし、マウントになったら足は見えません。バックを取られたら相手はまるごと見えません。

しかし、触覚が与えてくれる情報は非常に多いです。純粋に面積が大きく、常にどこかに相手に触れています。そこから相手の体勢を把握し、どう攻めるかを考えるのが重要です。

また、重心をマスターすればパスされなくなるし、スイープも楽になります。相手に力をかけた反応で、どこに重心があるかわかるようになると最高です。これは結構な訓練と慣れが必要なので、スパーや打ち込みの中で意識すると良いでしょう。

原理をマスターする

いきなり突拍子もないことを書きますが、世の中は原理で出来ています。原理とは、この世を支配する真理です。その真理からは誰も逃れられません

これはグラップリング中も支配しています。つまり、原理をマスターして味方につければ、勝ちが近づきます。

では、具体的に何の原理かというと、一番はてこの原理です。

グラップリングでてこの原理の出番は非常に非常に多いです。腕十字を切るとき、アキレス腱固めをするとき、スイープをするとき・・・・もう常にてこであると言っても良いです。

てこをマスターすれば軽い人が重い人をひっくり返すことができるし、極める力もガッツリ上がるでしょう。

いかにグラップリングの中に原理が適用されている場面を見つけ、それを原理的に改良できるかが重要です。

2つ目は、2は1より大きいという原理です。何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、2 on 1ということです。

相手の1つの手を自分の2つの手でコントロールできれば、相当な体格差がない限り必ず勝てます。しかし、障害を持っていない限り、お互い2つの手・2つの足があるのは同じ条件です。いかにそこで2 on 1を作り出せるかが大事です。

なぜスパイダーウェブやサドルが強いかというと、2 on 1の状況を作り出せているからです。また、ラバーガードが強いのもうまい具合に2 on 1になるためです。

今あげた2つは原理の例ですが、他にもいろいろな原理が支配していると思います。その原理を的確に見つけ、グラップリングのパフォーマンスに還元していくことが重要です。

スクランブルは判断を早く

グラップリングでよくあること・・・それはスクランブルです。

スクランブルとは、ごちゃごちゃっとお互い激しく動いて、どちらも有利ではない状況ですが

強い人はスクランブルの判断がすごく早いです。その一瞬で今どういう状況で、自分がどういう動きをすればどういう有利を取れるかを一瞬で判断します。迷いがないです。選手によっては、スクランブルに見せかけて本人は完全に理論的に有利を取りに行ったりしています。

そのような動きをして、前述の自分の得意パターンに持っていく力が大事になります。

相手が動かないなら自分が動く

相手が固くてスイープ出来ない、良いポジションに行けない・・・というようなこと、よくありませんか?

こういうことはよくあるのですが、相手が動かなければ自分が動けば良いのです。

ボトムからスイープ出来ないなら、アームドラッグで後ろに登っていけば良いです。サドルに入るためには相手の足を動かさずに自分が回ればよいです。

こういう自分が動けばいいのに、実は力でどうにかしようとしてしまっている場面が結構あります。どうやって自分が望むポジションに行くか、柔軟に考えることが重要です。


まだ細かいレベルの上達テクニックが山ほどあります。

そちらは追々記事にできたらと思っておりますので、ぜひお楽しみに。


2020/07/19追記

たくさんの方に読んでいただけているようです、ありがとうございます!

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