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転がる春

『新じゃが 入荷しました!』

おお、もうそんな時期ですか。
スーパーの野菜コーナーで一人呟く。


一人暮らしをしていると、どうも食卓が単調になってしまっていけない。
いつも買い込む食材はたまねぎ・ほうれん草・きのこ類と大体相場が決まっているし、お肉や魚は安い日にほぼ決まったものを買って小分けにして冷凍庫へ逃すだけだ。
食材のパターンが同じだと、料理のバリエーションもそれほど増えない。


季節感を意識して生活すると、いつまでも若々しくいられるだなんて話を聞いたことがある。
ほんまかいなと思いつつ、たしかに年がら年中単調な生活してると1年が過ぎるのも早そうだよなと納得する。

例えば服装。春と秋で色合いやテイストを変えましょうとか。
乾燥する冬と汗をかく夏ではスキンケアが同じではいけませんよとか。

うーーん、なんだか耳が痛いなあ。
写真だと老けて見られる要因は、もしかするとこんなところにあるのだろうか。ショック。
そんなに丁寧に暮らす余裕はないのだけれど。


あ、じゃあせめて、食べ物なら。
今時どの季節でも手に入らない食材はほぼ無いくらい便利な時代だけど、やっぱり旬のものって美味しいじゃない。
結局自分が美味しいものを食べたいだけだが、季節感を意識したら老けないと言うのなら、ね。

と言っても知識は無い方なので、冬 旬 美味しい などと検索して、美味しそうで作れそうな食材とレシピを見つけ次第スーパーに走る。
それは時にトマトであり、さつまいもであり、鰤である。
なんとも取ってつけたような季節感の出し方だと思うし、結局のところどの食材がどの季節かなんてはっきりと覚えられていない。
気まぐれに思い出しては食卓にほんのちょっとのイレギュラーを添えていただく程度だ。


だが、新じゃがは別格だ。

わたしはもともとじゃがいもが好きで、居酒屋でも8割くらいの確率でポテトを頼む。
余談だがポテトは細いやつ派である。もちろんマクドナルドのポテトは大好物だ。

そんなわたしが、皮ごと美味しい新じゃがバターの魅力に気付かないわけがなかった。


先日はいかの塩辛を一緒に買ってきて、禁断の塩辛新じゃがバターを作った。
新じゃがを洗ってレンジでチンして、塩辛とバターを適量のせるだけ。

うん、美味しい。間違いなく美味しい。美味しい以外の単語が出てこないくらい美味しい。
この禁断の味を誰かと分かち合えたら、と思うが、いやこれは独り占めしたくなるわな、とも思う。
横で「うまそー」って言う人に自慢しながらぜんぶ食べたくなる味だ(一つ二つくらいは分けてあげるかもしれない)。


毎年、冬も終わりに近付く頃は、野菜コーナーであのコロコロとしたかわいいヤツらが袋詰めにされていないかチェックする。

『新じゃが 入荷しました!』

あったあった、もうそんな時期ですね。
このあと蒸される新じゃがたちのホクホクっぷりを想像して、スーパーの野菜コーナーで一人ニヤつく。

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