ルイボスティを飲みながら

たまにはゆっくり湯船に浸かろう、と思ってお風呂にお湯を溜めた。いつもはシャワーで済ましているのだけど、江國香織さんがエッセイで「毎日お風呂に2時間入る」と書いていて、影響を受けやすい私はお風呂がみるみる魅力的に思えたのだった。

お湯を溜めている時間が暇なので、いったん風呂場から離れて、ルイボスティを飲むためにお湯を沸かした。

(どうでもいいのだけど、最近の秋元康の歌詞には"ルイボスティ"がたびたび登場する。数あるお茶からどうしてルイボスを選んだのだろうか。若い女の子に人気なイメージがあるわけでもないと思うのだけど。語感?おしゃれ感?私はルイボスティが好きで常飲しているのだけど、なんだか公言しずらくなった。本当にどうでもいいけど。)

秋元康のことを考えながらルイボスの味が染み渡るのをぼんやり待っていたら、そのうちにお風呂のお湯が溜まった。熱くてまだ飲めないので、仕方なくそのまま放置してお風呂に行ったのだけど、
ふと、もしこのまま死んだらルイボスティが飲めないなぁ、と思った。

何故そんなことを唐突に思ったのかと言うと、私の祖父は紅茶を淹れてお風呂に入って、そのまま心臓発作を起こして死んでしまったのだ。当時高校生だった私は、祖父の遺体がどこかへ運ばれてから部屋に入った。

そのとき、かすかに紅茶のいい匂いが香った。匂いの元を探してテーブルの上を見ると、なみなみ注がれた紅茶の入ったマグカップがそのままで置いてあった。

正直、あまり祖父のことを好きではなかったのだけど、「ずいぶん優しい匂いを遺して死んでいくなぁ」と思ったのを覚えている。

私はというと、無事に2時間のお風呂から生還して、ルイボスティを味わって飲んだ。少し冷めていたけれど、喉が渇いていたのでしみじみと美味しかった。


#日記 #エッセイ

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