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【詩】モノクロ - リマスター

白い壁に、白いベッド。
名も知らない誰かの、黒い瞳、濁った肌、細い手首。  

外は透明な、雨の色。鈍い音。雨の音。
切り捨ててきた、色たちが、いびつな塊になって、汚れていく。冷たい井戸の底。
拾い集めてきた、影たちが、何層にも重なって、濃くなる。薄いホスピスの毛布。  

そこに居たことが、ここに来たことが、誰かに与えてきた罪の重さが、どすんどすんと、頭に当たる、夜。みしみしと崩れ始める命。心に刺さる、四月。  

つたう、涙?   

白い壁に、白いベッド。
名も知らない誰かの、黒い瞳、濁った肌、細い手首。  

ファインダー越しに、名も知らないその人を見る。みしみしと崩れる命の音を聞きながら。


(2013.4.3 初稿)


#詩

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