あけましておめでとう

私の知る限り、東京でいちばん美しい人というのはあなたのことで、私はことあるごとにそれをあなたに伝えることを憚らなかった。会うたびに、ああ、もう会えないかも、と思った。顔を、目を、見るたびに、ああ、もう見れないかも、と思った。私たちは精神的な側面で繋がっているからこそ、東京という現実の街では実際に会う回数が限られているのではないかということを肌感覚として知っていた。あるいは、私が勝手にそう思い込んでいた。今でも写真であなたを見ると嘘みたいに胸が熱くなるし、呼吸のやりかたを一瞬だけ忘れてしまう。けれど、それすらも心地がいい。私たちはモノやヒトとの距離を測るものさしが似ている。あなたが何に感動して失望したのかを想像するのは決して難しいことではないし、私はあなたを理解することを人生の大きなテーマのひとつとしてきた。

だから、先日届いたこの短い文章も、私は全身を使って解読する。目を凝らしてじっと眺めていれば、あなたの心の機微を感じ取れるようになる。私たちの高尚で清潔な繋がりは、他の何よりも尊いのだ。

「あけましておめでとう」


#詩

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