輝け!Myリリック

 スガシカオの話。
先日このブログで書いた通り、僕は音楽系の専門学校に通っていた頃(10年前くらい)、スガシカオの歌詞研究に熱中していた。
 『Suga Shikao Complete Song Book』という分厚い辞書のようなコードブックを毎日持ち歩いていて、学校のテラススペースでぱらぱらとめくっては気になった歌詞をノートに書き写してその奥深さに感動していた。

 そんな中で自分でも作詞をするわけなのだが、ちっともいいものが書けなかった。才能がないのはなんとなく理解していたが、それにしてもひどかった。10書いて1使い物になればいいくらいだった。当時は(今もか)プライドがすこぶる高かったので、自分の書いたものを読んではいちいちショックを受けていた。そんなことでショックを受ける暇があればもっとたくさん書けばいいだろ、と今は思うのだけど僕は古いタイプの陶芸家みたいに「だめだこんなんじゃ!!!!なぜだ!!!!」と駄作をいつも床にぶちまけていた。

 僕は当時、相方のD君と音楽活動をしていたのだけど、(CHEMISTRYみたいなツインボーカルのデュオをしていた)D君は歌詞にあまり興味のない人で、僕が書いた歌詞を見せると「よくわかんないけど、いいんじゃない?」といつも言っていた。”よくわからんて、お前も一緒に歌うねんぞ!!!”と反論したときもあったが、ほとんどは「そうすか」と答えていた。ちなみにD君との解散の理由は「方向性の違い」。ベタすぎる。

↓ D君は現在YouTubeの世界で頑張っている。

 話がそれたけれど、作詞という世界はなかなか難しくて、どこに正解を設定すればいいのか分からなかった。
 そんなときに、我が心の師匠、スガシカオ様がブログで面白い企画をスタートさせたのだ。
 その名も『輝け!Myリリック』。タイトルはちょっとアレなのだが、企画の内容としては、スガシカオさんのブログのコメント欄に誰でも自作の歌詞(リリック)を投稿することができて、それをスガシカオさん本人が(!)読んで、気に入ったものをコメント付きで紹介してくれる、というスガシカオファンやシンガーソングライターの卵からすると涎の垂れる素晴らしいものだった。僕は確か3つの歌詞をコメント欄に投稿した。

 結果から言うと、僕は2つの歌詞をスガシカオさんのブログで紹介して頂くことに成功した。ほとんど初めて他人に歌詞を褒められたのだ。しかもそれがあのスガシカオ。しかも3分の2。打率が良い。僕はまわりが引くほど自慢した。ライブのMCでも毎回話した。人気のない僕らはお客さんが入れ替わらないので、2回目以降リアクションがなかった。それでも良かった。それくらい嬉しかった。
 当時のブログが残っている。

「月とアパート」(上から2つめの歌詞)

飲み会の帰り道
ひとり空を見あげた

雲のむこうに月が
ぼうっと見えている

タバコ臭いスーツと
酒臭いぼくを
いやがる君はもう
ここにはいない

一緒に住んだアパートは
もう取り壊されたらしい

大きな窓から月が
いつも見えた部屋

いまのぼくを見て
君はなにを言うだろう?
立ち止まるぼくはもう
風に追い越された

立ち止まるぼくはもう
風に追い越された…

【スガシカオさんコメント】

  好きです!!「立ち止まるぼくはもう 風に追い越された…」←きた!きた!って感じ、黄金の1行だね。さすがシンガソングライター!!一瞬の虚無感とか喪失感が、風とリンクしてロマンティックな雰囲気が出てます。曲にしたら、どんな曲になるんだろう??聞いてみたいね~!

「PASSWARD」(一番下の歌詞)

ねぇ 偶然 見つけたんだ
君が書いてるブログ
誕生日と名前からして
間違いなく君のものだろう

だけどカギが掛かってて
パスワードを入力しないと入れない
4桁のヒミツの数字
ぼくが見事 解いてやろう!

"ぼくと君の記念日"
"君の両親の誕生日"
なかなか当たらないなあ…

君のヒミツのブログ
毎日更新されてる
ブログのジャンルは
「恋愛と音楽」

結局わからないまま
時間だけが過ぎていく
一番新しい記事の
タイトルは『限界(泣)』

"車のナンバープレート"
"高校の学籍番号"
これもちがうのか…

君のこと知りたいんだ
表も裏も真ん中も
ぼくらにヒミツは
絶対ナシだよ

君のこと知りたいんだ
表も裏も真ん中も
何も知らないんだ
君のパスワードも解けない…

【スガシカオさんコメント】

  すごくいいです!!好き!!サスペンスチックなストーリーと、スピード感のある文体。このスピード感は、シンガーソングライターならではって感じ!一番新しい記事のタイトルは『限界(泣)』↑これも、すごくいい!!たぶん、思ってる彼女のブログじゃないのかもしれないけど・・・もしかしたら付き合ってもいないのかもしれないけど・・・そんなとこも含めて、妄想と思い込みの世界観がとても面白かったです。また、いいのできたら投稿してね!曲もきいてみたいな。

 ほ、ほめられてる~。今見てもニヤニヤする。
 ただ、スガシカオの音楽が好きな人ならばすぐに気が付くくらい、この2つの歌詞はあまりにも「スガシカオの細胞」が強すぎる。まるで”ちょっと下手になったスガシカオ”だ。そう思ったきっかけもまたスガシカオさんのコメントだったのだけど、この話は長くなるのでもし機会があればまたあとで。

 でも、とにかくうれしかったし、今こうして詩を書き続けていられるのもスガシカオさんのおかげだと思っている。感謝します。

#ブログ  #スガシカオ #歌詞



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