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ぷっくり太ったさんまと「Yokozuna_A5」

<午前7時30分>

昨日だらだらしていて夕食を食べていなかったので、夕食分のご飯を朝に食べる。お腹は空いているけれど頭はまだ半分寝ている。ぷっくり太ったさんまの身を箸でほぐしながら、いつか人間も巨大生物に捕食されることになるかもしれないと想像する。

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彼らはきっとゴジラくらい大きくて、知能が人間の5000000000倍くらい発達している。あっという間に人間が創ってきた文明は乗っ取られて、人間は“そこそこ美味しい肉”という存在に変わる。

人肉にはランクがある。いちばんランクの高い人肉は豊富な筋肉量とまろやかにあまい脂肪が魅力で「Yokozuna_A5」と呼ばれていて、その名の通り力士として丁寧に“飼育された”人間たちだ。

巨大生物が1万人以上も収容できるスタジアムで力士たちは相撲をとる。午前8時から序の口の取り組みがはじまり、序二段、三段目、幕下、十両、幕内と土俵が進行していく。
客席にはピンク色の服を着てやたらと写真を撮りたがる夫婦の巨大生物や、お金を気前よく使うことで有名な医者で金髪の巨大生物などがいる。

引退する力士たちの将来は2パターンあり、協会に残って後進の育成にあたるか、断髪式の終了後に殺処分されて高級人肉業者の手元に渡るかだ。それを決めるのは相撲協会の人間の理事会ではなくSumo Ministry(相撲省)で働く巨大生物の職員たちだ。

人間たちはまったく抗うことをしない。なぜなら、彼らはゴジラくらい大きくて知能が5000000000倍も発達しているのだ。

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わたしのように肌が弱くて痩せた人間はランクの対象にならず「Goboh(ごぼう)」と呼ばれる。そのまま食べても不味いので、ミンチ状にしてからさらによく砕き粉末にしてふりかけとして安価で販売される。

基本的に太っているほうがランクが高くなるので、とにかくみんなよく食べる。人間の平均体重は130キロを超える。病気がちになるがそんなことはもはや関係ない。

美味しそうな身体でいれば、巨大生物たちがもれなく食べてくれるのだ。殺されることに変わりはないのに、残さず食べてくれてありがとうなどと思えるはずがないのに、それでも人間たちは憑りつかれたように体重を増やしてランクを上げようとする。

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そんなことを眠い頭でだらだらと考えていたら食欲がなくなってきた。それでもわたしはさんまを食べる。やっぱりおいしい。
黒いところが特に好きです。


#エッセイ  

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