ハモれ
大橋トリオが歌う「Stay Gold」をハモりながら聴くのが楽しい。頭蓋骨が揺れてぐわんぐわんと反響する。不思議なことだと思う。声は口から出るのだし、その出どころは肺だったりお腹だったりするのに、震えるのは頭蓋骨なのだ。音と音がピタリと重なりあった時だけ、脳がとろとろにとろけて気持ちよくなれる。
「ハモり」と聞くと思い出すことがある。
10年ほど前、(現)東京ビーファイブの某Dと歌を歌っていた頃、ふたりで歌う楽曲には全てハモりパートが存在した。だけど、私は某Dと歌っていて頭蓋骨が震えたことがほとんどない。
私がないということは某Dもないはずだ。悲しいことだけど。
原因はいくつかあるのだけど、ひとつは、私が譜面をあまり読めないこと。そして、某Dの音程がほんの僅かに低くなりがちだったことだ。
当時の私たちの基本的な役割分担は「作曲・編曲 某D」「作詞 スナノ」だった。某Dは簡単な譜面をいつも書いてくれたけれど、私は某Dが歌ったデモ音源を聴きながらメロディラインを覚えて、歌詞を書いていた。
歌詞が完成したあとで、某DはDTMのアレンジを加えたり、ハモりのラインを考えたりしていた。しっくりくるラインが決まると、某Dはその場で歌いながら教えてくれた。
私はそれを聴いて覚えるわけなのだが、ここに落とし穴があった。某Dの歌が、若干、低いのだ。私はバカみたいに某Dが歌ってくれたままの音程で覚えていたので、一緒に歌うと、演奏とのピッチにズレが生じてしまう。
演奏とずれていたら、当然のことながら綺麗には聴こえない。頭蓋骨も揺れない。
「君たち、全然ハモらないね」と色んな先生に随分と言われた。
その度に「そうなんすよねぇ、エヘヘ」と誤魔化した。ちっとも誤魔化せてないけど。
練習の末に某Dがジャストの音程で歌っていたとしても、私が低かったら何の意味もない。当時の私は「圧倒的に某Dが"常に"フラットしている」と考えていたが(すぐ人のせいにする)私も同じくらい音程は狂っていたのだ。やれやれ。謝らないけどね。「そうなんすよねぇ、エヘヘ」
#日記 #エッセイ
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