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堂本剛さん

はじめて好きになったアイドルは堂本剛さんでした。小学生のころから大好きで、KinKi Kidsの歌もめちゃくちゃ歌ったし、若い頃は服装もたくさん真似しました。

花柄のシャツを着て、カラーパンツを履いて、アディダスのジャージを着て、髪型はもちろんアシメ。鏡の前でポーズをとってはニマニマしていました。
雑誌に載っているのと同じ服は高価でとても手が出ないので、似たようなデザインの服を探しによく古着屋巡りをしました。

 私はアイドルの写真集を2冊持っていて、1冊は剛さん、もう1冊は元乃木坂46の伊藤万理華さん。(卒業後に写真集を発売したのでアイドルという枠に入れていいのか微妙だけど)

剛さんのファッションは時期によってかなり嗜好が変わるのですが、私が夢中で真似していたのは、いちばん剛さんの服が(一般的に見て)派手な時期でした。

私はむかしから街や人混みが苦手で、いつもだらだら脂汗をかきながら競歩の選手のようなスピードで街を歩いていたのですが、剛さんのような服を着た(例えば花柄シャツに花柄ベスト、明るいオレンジ色のカラーパンツ、金色のスニーカー)日は、なんだか強くなれたような気がして、いつもより落ち着いて街を歩くことができました。
ありがとう剛さん。
(当たり前だけど剛さんはそういった意図で服を選んでいるわけではない)

「頭悪いなぁ」と思うエピソードがあって、剛さんリスペクトが強すぎるあまり、いつしか身長も剛さんと同じ166cmになりたいと願うようになりました。成長期に入ってから、眠る前にベッドで『166で止まれ166で止まれ166で止まれ』と密かに祈り続けました。

もし166cmになれたら、それは剛さんと同じシルエットになることであり、つまり私が堂本剛そのものになることであると、固く信じていたわけです(?)

そして、高校3年の身体測定で私は正に166cmになりました。ぴったり!願えば叶うじゃん!!!とひとり喜びました(166cmを目指していることは誰にも話していない)

しかし、その夜、部屋の鏡でまじまじと自分の姿を見て、とある事実に気づきました。

「顔が全然違うぞ」

顔のパーツはどこも似ていないし、なにより(隣に立って比べたわけではないけれど)顔の大きさが違うので、身長が同じでも、シルエットは堂本剛とはまったくの別物でした。当たり前ですけどね。

当人は至って真剣だったので、本当に血の気が引きました。毎晩『166で止まれ…』と祈っていたばかりに、ただの「ちょっと小さい男」になってしまった。私はその日から方向転換して『170まで伸びろ170まで伸びろ』と祈るようになりました。

結果的に身長は171cmまでは伸びました。
危ない。

もうひとつ、頭の悪いエピソードがあって、私は20歳から5年ほどデュオで歌を歌っていたのですが(まさに剛さんリスペクト)、いつもマイクを左手に持って歌っていました。それもまた剛さんの真似をしていたわけなのですが、そのデュオを解散してしばらくしてからKinKi Kidsのライブ映像を観ていたら、剛さんが右手にマイクを持っていることに気づきました。

あれ?剛さん変えたのかしら?
と思ったのですが、そんなことはなくて、私はライブ映像で正面を向いて歌う剛さんの左側にマイクが映っているのを見て「左手にマイクを持っている」とずっと勘違いしていたのです。(子供の頃から真似していたので軽く10年は間違えていた)

自分の頭の悪さにがっかりしました。
人に話してもあまりこの無念さを理解してもらえないのですが、出来得る限りかっこよくステージに立ちたかったのです。剛さんかっこいいんだもの。


#エッセイ #堂本剛 さん

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