靴下を脱いで

海水が靴に触れそうになる

冷たい秋の泡立つ海で
彼女は踊るように逃げている

海ではしゃぐようなタイプでもないが
それでも少しだけ笑っているように見えた
髪はやはり後ろでひとつに結っていて
陽は落ちたがまだ辺りは明るかった

彼女は真珠のピアスを付けていた
黒目より少し大きいサイズの真珠
確かめるみたいに時々指で触れた

駅から海岸までは殆んど話さなかった。犬の散歩をする老人とすれ違ったとき「おじいさん?おばあさん?」と僕が訊くと、彼女は老人の後ろ姿を見つめながらゆっくり首をひねった。
空き缶を5つくらい地べたに並べて、木の枝でカツカツと叩きながら寂しげな歌をうたう青年を見かけた。英語の歌だったがところどころ日本語にも聞こえた。

「今の彼氏はね」

彼女が海水を避けながら話す
「セックスのときいつも靴下を履くんだよね」

「いつも?」

「いつもなの、いつも。他は全部脱いでるのに。それでね、終わったらすぐに寝る。まぁ、それはいいんだけど」

「靴下だけかぁ」

見たこともない男の裸を僕は想像する
夕陽が真珠のピアスにあたってオレンジ色に光る

「嫌なのはさ、寝るときは服を着て、靴下は脱ぐんだよ」

彼女はいつの間にか、靴も靴下も脱いでいた。足は波の泡にまみれて濡れていて、まだぶつぶつ文句を言っていた。



■この音楽を聴きながら詩を書きました

#詩 #Poet #星野源 #雨音


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【詩】2017.10.1〜【New】

詩です。
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