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note の戦略、noters の選択

YouTube が CMを増やして有料会員へのアップグレードを露骨に誘導したり。
Amazon のプライム・ビデオが無料で観れるコンテンツを露骨に減らしたり。
Zoom が 40分制限を設けて有料プランへのアップグレードを露骨に勧めたり。
Twitter を ”X” に名称変更して金融サービスを企む Tesla の CEO がいたり。

いよいよプラットフォーマーたちが本性を現してきた感がありますね。
見境なく儲けようとするのは、今どきのプラットフォーマーだけではありません。Microsoft はコンピュータウイルスとウイルス対策をイタチごっこさせる、マッチポンプビジネスを長年やってきたし、Apple はほとんど違いのない新機種を毎年のように発売してきました。

いちいちお付き合いしなければいい。
と、多くの人がわかっていると思います。
でも、ソフトウェアのバージョンアップのような、お付き合いせざるをえない半強制的なものもあるし、ゆでガエルよろしくジワジワと課金を許してしまうこともあるでしょう。

さて、noter のみなさま。
note は今後どのような戦略を仕掛けてくると思われますか?

先日、とある noterさんとオンラインで飲んでいるとき、そんな話になったんですよ。
有料記事のススメとか、プレミアム会員の特典とか、メンバーシップとか、マネタイズするのに必死だよね~って。

もちろん、事業として収益化を図るのは当然のことだし、万年赤字の企業は存続できません。
note がまだ上場していなかった頃、note が黒字化するために何をすべきかという主旨の記事を書きました。

☝の記事で言いたかったこと:
✅広告・会員課金・グローバル展開をしない note は潔くていい
✅会員ではなく企業からお金をいただく事業モデルを構築すべき
✅記事を無報酬で供給する ”書き手” を動機付ける仕組みが必要

「クリエイターが創作を楽しみながら稼ぐ」
というコンセプトのうち、「稼ぐ」という部分に注力するならば、「note でマネタイズしよう!」と会員に推奨するのも頷けます。
しかし、創作を楽しみたいけど稼ぐ気はない会員も多い、と私は書きました。

note のビジネスモデルは、記事を売る人と買う人をつなげることで手数料をいただくプラットフォーマー、と一般的には言えるでしょう。
一方、メーカー(製造業)でメシを食ってきた私は、note をメーカーとして捉えたくなります。

シンプルなメーカーのモデル

 

note をメーカーに見立てたモデル


まず特徴的なのは、記事の調達コスト(原価)がゼロというところですが、無料記事に関しては収入もゼロです。
これではなかなか儲かりませんよね。
そりゃ記事の有料化を鋭意推進したくもなりますよ。

で、ここからは推測になりますが、note は「有料記事を増やす」という目標が思うように達成できていないのではないか。有料記事がなかなか増えないのは、私のような銀行口座すら登録していないような稼ぐ気ゼロ noter が想定していた以上に多いから。

noteさん。あなた方が考えているほど、私たち普通の人はマネタイズに興味がないんだと思いますよ。

有料記事を増やすのには限界がある。でも会社を潰すわけにはいかない。
そう考えたとき、note はどうすると思いますか?

まず、note が「創作」というドメインを離れて、まったく新しいサービスを始めることはないと思います。それは、創作に対する創業者の思いが非常に強くてアツいからです。
同じ理由で、note が新聞社やテレビ局に身売りする可能性も低い。創業者が現在 40%近くの株式を保有していますが、彼がそれを手放すとは思えませんし、TOB を仕掛けてまで買収しようとする企業もいないでしょう。

なので、note が現在の経営と事業を継続する前提で、黒字化するためにやるかもしれないことを考えてみました。

A. 広告収入に手を出す
B. 「今までの note は無料体験版でした」と言って、一斉に有料化
C. 無料会員に様々な制限を設けて、プレミアム会員への加入を促す

note は「広告がない」ことをセールスポイントにしているので、A は考えにくいのですが、絶対にないとも言いきれません。「試験的に一部導入しました」と小声で始めて、いつのまにか定着しているパターンもありえます。

B はさすがにないか。ライトユーザーだけでなく、ヘヴィユーザーも大量に失うことになるでしょうから。会員数を KPI にしている note がそんな愚かなことをするわけがありませんよね。

そこで C です。プラットフォーマーの王道ですね。
たとえば、1週間に読める記事の本数を制限したり、1日にスキできる回数を制限したり。
また、読むことよりも読んでもらうことを重視する noterさんにとっては、ビュー数の制限や、スキされる回数の制限、フォロワー数の制限なんかも悩ましいでしょうね。このような制限に関する情報を note は開示する必要はなく、「無料会員の記事は、ビュー数やスキ数が伸びにくい仕様になっているらしい」という噂を流すだけでも一定の効果があるかもしれません。

note が A・B・C のどれをやっても、私は note をやめると思います。
どれもやらない場合は、いつまでたっても黒字化できず、早晩存続できなくなることを懸念します。
(だから、企業から太い収益を得る事業モデルを早く開発したほうがいい、と言っているわけですが)

だから私は思ったんです。
私の note が終わる前に、note でやれることをやっておこうと。
私が note でやりたいことは noterさんとの交流、この一点に尽きます。
といっても、「メンバーシップ」とかいうサブスクリプションでお金を稼いだり納めたりする気はありません。(noteさん、ごめんなさい。私は note上ではいっさいお金と関わらないポリシーなんです。お金をやりとりした瞬間に楽しくなくなる気がするのですよ)

note を読み、note を書くことを通じて、noterさんと関わっていきます。
今までもある程度はやってきたつもりですが、これからはもっと広く深く、積極的にアプローチしていくことにしました。
思えば、今までの私は憶病でした。記事とコメントを通した交流はそれだけでもじゅうぶん楽しいものでしたが、note 内で完結していて、それ以上発展することはありませんでした。

コロナをきっかけに note を始めたこともあり、私にとって note は、人と人がリモートでどこまで通じ合えるかを実験する場でもありました。
2年やって、その実験の結果が出たように感じています。
やっぱり、人と人は会わなきゃダメなんだ、とわかりました。少なくとも、顔と顔を見合わせて対話しなければ、心が通じたことにはならないのです。

最後に、note社で働く人たちへ。
note株式会社にとって、私は 1円の収益ももたらさない noter です。同様の noterさんが noteユーザーの過半数を占めています。私たちは、記事を 0円で供給するサプライヤーです。note社にとって、収入源となっていなくとも供給源です。しかも、なんの見返りも求めないコンテンツ提供者たちです。財務諸表に表れないこの無形資産を収益につなげることは、あなた方にしかできません。どうか、note を存続させるため、これからもがんばってください。