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新規投資|ゼロボード

11月1日、株式会社ゼロボードより配信されましたプレスリリースの通り、この度DNX Venturesは、同社の資金調達ラウンドに参画、投資を実行いたしましたことをご報告致します。

同社が運営する企業のCO2排出量算出・可視化SaaS「zeroboard」の拡大・強化に尽力してまいります。


zeroboardとは?

株式会社ゼロボードが運営する「zeroboard」は、脱炭素化の取り組みが加速するグローバル企業に対して、非財務情報、とりわけCO2排出量の開示業務をサポートするクラウドサービスです。

「サステナビリティ・アカウンティング」と呼ばれる企業の非財務報告は、これまで多くの企業が行政の環境規制に付随する開示基準に則り、コンサルティング会社の活用や、自社のエクセルシートで集計し、報告していました。

しかし、近年、企業はGHGプロトコル等の国際的な気候変動対策のフレームワークへの遵守を求められる様になり、2022年の東証プライム市場の登場や、有価証券報告書への記載などの検討が進んでいる事などから、上場企業やその関連会社を中心に急激に対応の進化が求められています。

こういった制度変更に加え、気候変動に対して先進的な取り組みを始めている機関投資家やグローバルで活躍する製造業からの遵守圧力も相まって、「サステナビリティ・アカウンティング」は企業の開示業務にとって必要不可欠なものになりつつあります。

中でもGHGプロトコルで求められている、「Scope 3」 と呼ばれる開示範囲については、企業が製品別に、仕入れ先を含めた製造工程、物流・販売チャネル、エンドユーザーの利用を加味した排出量計算を求めるものであり、膨大な関係者からの情報収集が前提となります。

zeroboardは、煩雑な情報収集や開示業務をクラウドに集約する事により、部署間・関連会社間のみならず、サプライチェーン全体での連携を容易にし、CO2排出削減目標に向けた具体的な施策の立案実行、モニタリングを可能にします。

モビリティ分野のスタートアップである、A.L.I TechnologiesからMBOという形で立ち上がった同社ですが、DNXはMBOスキームのディスカッション段階から参画させていただいておりました。この度、B2B SaaSの新領域であるサステナビリティ・アカウンティングのスタンダードを作り上げていくゼロボード社の資金調達をリードできた事を大変嬉しく思うと共に、ソフトウェアを通して地球規模の課題解決に取り組む同社の急成長を支援していく所存でございます。

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ゼロボードが実現しようとしている世界

ゼロボードは以下を実現することにより、業界の課題解決を目指しています。

1) クラウドによる情報の一元化

現在、日本の多くの企業は既に省エネ法や温対法に基づく各省庁への報告義務を負っており、エクセルシートを活用した集計を行っています。しかしながら、GHGプロトコルに基づくScope 3 (自社活動による二酸化炭素排出の報告のみならず、バリューチェーン全体を対象とした報告) を求められると、取引先等、多くのステークホルダーから情報をいただく必要が出てきます。

クラウド化によりエクセル運用による人為的なミスの軽減はもちろんのこと、報告義務に必要な情報をタイムリーに集計することが可能となります。集計のみでしたらエクセルシートでの対応も不可能ではないものの、今後は削減目標への具体的な戦略策定、及び効果のトラッキングが必要となってくるため、分析の基礎となるデータベースも提供することができます。


2) 世界基準のサステナビリティ・レポーティングの支援

企業が国際的な金融市場から資金調達を行う際、日本で求められる開示基準以上に様々なフレームワークや開示基準への準拠が求められる事となります。

脱炭素社会に向かっていく不可逆の社会変化によって、開示義務を負う事となる大企業のみならず、取引関係にある多くの会社にも同様の責務が発生します。サステナビリティ・アカウンティングの先進市場である欧米では、そういった業務は既に発生しており、欧米企業と取引のある日本企業は一部、既に詳細なCO2排出の報告を行っています。

サステナビリティ・アカウンティングが通常の会計業務と同様に、全ての企業が対応しなければならない業務になるのは時間の問題です。

一方、こういった取り組みはまだ黎明期にあり、開示基準自体もベストプラクティスが確立されるまで、刻々と進化を重ねることが予想されます。ゼロボードは同分野の専門家として、常に最新の開示基準に対応するデータの集約やレポーティング方式に対応することにより、ユーザー企業様のスムーズな対応を支援いたします。

従来は規制対応のための集計報告であったのが、今後は精緻なレポーティング、及び削減目標の進捗が企業価値の評価にも影響を及ぼす事となり、排出量削減が新たなバリュードライバーとなっていくものと考えております。


3) 自治体、金融機関、最終消費者との連携

ゼロボードが見ているのは、サステナビリティ・アカウンティングが普及し、当たり前となった未来です。

会社のサプライチェーンに限らず、国や自治体レベルの排出量削減目標やゼロ・カーボンシティの実現や、金融機関が取り組みを始めている、企業のESG対応の数値目標の達成で金利を引き下げる「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」等を提供する金融機関に対する活動報告のベースとなるデータの蓄積・共有のインフラを目指します。

さらに、最終消費者の環境問題への関心も日々高まっており、個人レベルにおいてもカーボンオフセットを意識することが生活の一部となっていく中で、購入品のカーボン・フットプリントの可視化や、個人が購入できるオフセットソリューションの提供も普及する可能性が高いと考えております。

企業や個人の消費活動における脱炭素活動の全ての基盤となるサービスを、ゼロボードは目指しております。

なぜ、DNXはゼロボードに出資したのか?

1. DNXの当領域における投資仮説

弊社も世の中の流れに先行して対応するべく、本年から自社のESGポリシーを策定する等、サステナビリティの領域に取り組んでまいりました。その中で、DNXとしてESGというテーマに対して、どうVCとして取り組むかを考え、得意とするSaaSの領域でのサービスを模索し、調査・研究を行っておりました。

米国にはつい先日、100億円規模の資金調達を実施した「Persefoni」といったサステナビリティ・アカウンティング領域のSaaSが続々と立ち上がっており、本邦においても同様の投資機会はあるものと考えておりました。

炭素排出量の計測、開示の為のソフトウェアプラットフォームは、弊社の投資仮説において想定していたものであり、CEOの渡慶次さんにzeroboardのコンセプトを聞いた際に、まさに探していたプロダクトであると共感することができました。


2. CEO渡慶次さんのFounder-Market Fit

渡慶次さんは弊社が定期的に開催しているSaaS部のレポート記事を拝見され、弊社にご連絡いただきました。これまでのキャリアにおいても環境関連のサービスに取り組まれており、ゼロボードが戦う分野における深い知見、鋭いマーケットビューに弊社一同、感銘を受けました。

ベンチャーのいち事業として始まったゼロボードと事業責任者の渡慶次さんがこの事業を通して社会に有益なインパクトを与えたいという想いを強めたことが、今回のMBOに繋がったと思います。

サステナビリティ・アカウンティングの領域は企業にとって大変重要な業務であり、普及・啓発を含め多くのお客様やパートナー企業様と共に取り組まなければいけない課題です。また、資本市場や行政の動向にも常に目を配り、場合によっては制度設計の段階から深く関わる事も重要です。

渡慶次さんはこの様な多元的な事業構想に求められるビジネスパーソンとしての実行力やバランス感覚を兼ね備え、同領域を主導するべき素晴らしい経営チームをリードしていると考えております。


3. ずっと言われていたものの、急激に訪れた「新しい世界標準」

1992年の「気候変動に関する国際連合枠組条約」、1997年の京都議定書から連なる国際的なCO2排出削減目標の枠組みについては長らく議論が重ねられていました。2015年のCOP21におけるパリ協定の採択により具体的なルールの策定が進み、2018年のCOP24におけるパリ協定運用の実施指針が採択されたことにより、ようやく多国間レベルの足並みが揃ったのがここ数年です。

そこから徐々に脱炭素社会の実現に向けた具体策が議論される様になりましが、サステナビリティ・アカウンティングが急激に日本でも広がった背景には、政策、金融、そして産業界からの圧力が同時に現れた事が影響していると考えます。

2021年にG7が加盟各国の主要企業に対し、経営が気候変動へ与える影響を開示する様に求めた事により、それまで欧米の先進企業が社会的責任として取り組んできたESG関連のレポーティングが、金融市場を介して多くの企業に求められる流れが確立しました。

時を同じくして、米国証券取引委員会 (SEC)によるESG関連の情報開示に対する意見公募や、日本のコーポレートガバナンスコードや東証の市場区分改定により、多くの多国籍企業にとって温室効果ガス排出量の情報開示がマストとなりました。

金融市場が制度レベルで進化する事が確定的となり、Blackrockに代表される様な国際的に影響力の大きい金融プレーヤーがESGを重視するファンドに投資資金を集め、投資基準とする事により、世界の「株主」が企業に対して温暖化に対する具体的な改善策や行動計画を求める様になります。これからは、企業の財務パフォーマンスと並列で、温室効果ガス削減に向けた改善行動の進捗が金融市場に評価され、株価に影響を与える重要な指標となります。

その結果として、米アップルや独BASF、さらにはlyftやEtsyなどITの雄が削減目標を明確にコミットする動きが始まりました。サプライチェーン全体での削減目標である「Scope 3」が前提となっており、取引関係にある全ての企業に対して同様の開示基準を求める事になります。

こういった世の中の大きく、不可逆的な潮流より、サステナビリティ・アカウンティングが多くの企業にとって対応が必須な「新しい世界標準」として訪れ始めております。日本企業が国際社会で競争し続ける為には高いレベルでの開示基準への遵守が肝要であり、従い、ソフトウェアの力で非財務開示を支援するゼロボードへの参画は必然と言えます。

代表、渡慶次さんのコメント

DNX Venturesに、当社の「zeroboard」の開発・提供意義にご賛同いただき、大変嬉しく思っております。急拡大するサステナビリティ・アカウンティングの市場を開拓していく上で、B2B・SaaS領域に深い知見を有するグローバルなベンチャーキャピタルであるDNX Venturesに伴走いただけることを、大変心強く感じております。「zeroboard」が脱炭素経営インフラのデファクトスタンダートとなり、ユーザ企業の企業価値向上と、気候変動という社会課題の解決の一助となれるよう、社員一同邁進してまいります。
ーーー株式会社ゼロボード 代表取締役 渡慶次道隆さん


メディア掲載

本ゼロボードの資金調達ニュースについては、日本経済新聞電子版、ダイヤモンドシグナル、THE BRIDGE等の各種メディアでもご紹介をいただきました。特にダイヤモンドシグナルの記事では、渡慶次氏の熱いインタビューコメントも。ぜひ合わせてご覧ください。

「今の事業は言わば自分のこれまでのキャリアの交差点にあるようなイメージで、天職だとも感じているんです。zeroboardが脱炭素経営のインフラのデファクトスタンダードとなるように、まずは国内からしっかりと事業を作っていきます」


最後に

ここ数年で急激に注目を集め始めたサステナビリティ・アカウンティングという新たな分野におけるSaaSサービスを手がけるにあたり、日本一のFounder Market Fitと熱意を持つ渡慶次さん、そしてゼロボードの皆さんとご一緒できることを大変嬉しく思います。今回、カーブアウトの企画段階からご支援させて頂きましたが、これからの企業活動の重要な部分である開示業務を担う会社を作り上げていくに相応しいチームとして、最大限の自信を持って参画いたしました。多くの企業にとって新しい取り組みとなるサステナビリティ・アカウンティングの業界スタンダードを創出していく立場として、今後の躍進に大いに期待しております。


(文・田中佑馬)

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