見出し画像

シリーズ A 投資|Resilire

この度DNX Ventures(以下、DNX)は、サプライチェーンリスク管理SaaSを提供する株式会社Resilire(以下、Resilire)の総額6.2億円のシリーズAラウンドにて、リード投資をさせていただきました。また、今回ラウンドは、既存投資家であるArchetype Ventures、DEEPCOREと共に、シードおよびプレシリーズAラウンドに続き3回目の投資実行となります。このNoteでは、なぜ今サプライチェーンリスク管理市場が魅力的なのか、その中で当社がResilireへの投資を決めた理由についてお伝えします。

なぜサプライチェーンリスク管理市場なのか?

日本におけるサプライチェーン市場は、今後数兆円規模に成長すると言われており、その成長ドライバーの一つが、サプライチェーンリスクの増加によるものと考えられています。サプライチェーンリスクといっても、そのリスク要因は様々あり、特に複雑なサプライチェーン構造を擁する製造業等では、その影響範囲も大きく複雑化しています。

<サプライチェーンリスク要因の例>

  • 新型コロナウィルスのパンデミックによる影響:原材料の調達が寸断され、特に製薬業界では、医薬品の生産中断や供給遅延などの問題が深刻化し、今現在もその影響は続いています。

  • 地政学的リスクの増加:ロシア・ウクライナ戦争や、米中台湾問題など、グローバルなサプライチェーン構造を擁する日本の製造業等は、これら地政学的な不確実性に大きく影響を受けており、直接の取引関係にない2次、3次の上流のサプライヤーを含めた、リスク管理の強化に迫られています。

  • 気候変動により自然災害の影響:近年、気候変動による自然災害の発生頻度が増加傾向にあります。洪水、台風、地震などサプライチェーンに深刻な影響を与える災害に対し、BCP(Business Contingency Plan)の策定や発生時の瞬時な対応に対する意識が強まっています。

  • ESG(環境、社会、ガバナンス)の重要性の高まり:ESG要因については、企業の持続可能性に対する投資家や消費者の関心だけでなく、欧州を中心に、企業に対する規制の遵守体制構築が求められています。また、一企業の自社努力に留まらず、サプライチェーン全体を巻き込んだ成果が求められていることも、サプライチェーンリスク管理市場が拡大する要因の一つになっています。

  • その他企業固有のリスク:従業員によるストやサプライヤー企業の破産による調達への影響、電力の供給停止などインフラ環境による生産中断、サイバーアタックによる情報流出や生産システム稼働への影響なども、企業が直面する無視できないリスク要因となっています。


Resilireが提供するソリューションは?

このように、企業は様々なリスク要因に直面しており、従来のように直接取引関係にあるサプライヤーに依拠するだけでは不十分であり、広くサプライチェーン全体に対する策を講じる必要があります。

Resilireが提供するプロダクトは、クラウド上で、複雑なサプライチェーンの上流から下流までを「ツリー構造」で可視化し、あらゆるリスク要因に対する影響範囲をツリー上で特定し、対応策を講じることが可能となります。更に、世界中のあらゆる拠点で発生したリスクをResilire上で検知することができるため、たとえば、地球の裏側で発生した事象が、今後自社のバリューチェーンに影響を及ぼすかもしれない調達リスクを特定でき、代替品の確保など先手を打つことで、安定した供給を維持することが可能となります。


なぜResilireに投資をしたのか?

当社は、2019年のシードラウンドからResilireをご支援してきました。当時は、地震や豪雨等による被災など、有事の時のBCPソリューションとして活用されるイメージを持っていましたが、導入を決めた顧客企業の多くは、平時においてもResilireを活用したいというニーズが強く、いい意味でそのイメージは裏切られました。

1. 日本を代表する顧客企業からの声

Resilireが提供するサプライチェーンのリスク管理ソリューションは、コロナ禍に入り、ある製薬会社の購買担当者から寄せられた「調達先から原料が仕入れられず、製品をつくれなくなってしまった」というご相談が、大きなターニングポイントとなっています。

Resilireは、既に日本を代表するエンタープライズ企業に導入されている、シードフェーズでは珍しいスタートアップです。当社が投資検討時に行なった顧客インタビューでは、Resilireが単なるソフトウェアベンダーではなく、課題解決のパートナーと位置付けられていること、そしてResilireのプロダクトの進化によって、サプライヤーがResilireを通してつながり、今まで捉えることができなかった多くのリスク要因をResilireで管理し、サプライチェーン全体が強靱化されることへの期待を寄せる声が多くありました。

シード期において、このような稀有な信頼関係を築くことのできるResilireの存在意義と、有事だけでなく、平時においても、様々なリスクを解決したい顧客課題に応えるソリューションへと進化することで、更なる事業の広がりを描くことができました。

2. 解決する課題の大きさとタイミング

もう一つ当社が注目しているResilireのユニークな点は、事業の拡張可能性と潮流を捉えたタイミング「Why now」に応えたプロダクトにあります。

コロナ禍をきっかけに、世界的にサプライチェーンの寸断リスクが顕在化し、日本を含め各国の政府・企業主導でサプライチェーン強靱化の取り組みが活発化しています。米国や欧州でも、サプライチェーンリスク管理SaaSプロダクトがここ数年の間に誕生しており、特に製造業や製薬業界を中心に、活用の広がりを見せています。

Resilireは、既に製薬業界での導入が進んでいますが、日本は製造大国であり、サプライチェーンは、その製造業の生命線といっても過言ではありません。自然災害や地政学リスクの影響を受けやすい日本の地理的特徴も重なり、日本の製造業におけるサプライチェーンリスク管理は、より難易度が高い課題といえます。その高度な顧客課題に真に応えるプロダクトをResilireがつくることが、そう遠くない将来、グローバルに活用されるプロダクトへ進化していくものと期待しています。

3. 優秀なCEOとチーム

そして、当社が投資を決める際に大事にしていることが、起業家でありチームです。

まだプロダクトもない頃から、当社が運営するSPROUND(インキュベーションオフィス)で孤軍奮闘していた代表の津田さん。西日本豪雨の被災地で復旧作業のボランティアを行なっていたご自身の経験から、サプライチェーン寸断による影響の深刻さを理解し、安定供給を実現するために必要なものは何であるのか、顧客の課題に向き合い顧客に伴走しながら情熱を燃やしプロダクトをつくっていました。

また、津田さんは、高い傾聴力でSaaS事業や組織について多くを学び、起業家として素晴らしいビジョンを描くとともに、そのビジョンに共感した志の高い優秀なメンバーが、シード期には珍しい程Resilireには集まっています。二人目社員がHR採用担当者であったり(一般的にはPMF後のグロースタイミングで採用担当者を置くことが多いため)、スタートアップCXO経験者を既に複数迎え入れていたりと、津田さんの起業家としての採用力と組織マネジメント力にも、頼もしさと強い期待を感じています。


Resilire CEO津田さんからのコメント

DNXには、これまで2度のご出資を賜り、今回のシリーズAにおいてはリード投資家をつとめていただきました。
DNXとの出会いは、SaaSビジネスモデルに関する深い知見を求めていた中で、既存の投資家からご紹介いただいたことが始まりでした。
初めて投資をいただいた当時、まだ社員が一人もおらず、事業戦略に関する意見交換だけでなく、採用候補者のご紹介、面接への同行、顧客のご紹介など、幅広いサポートを泥臭くご支援いただきました。
SaaSに関する知見だけでなく、それ以上の学びとコミットメントをDNXからいただいています。ResilireはDNXチームのほぼ全員に関わっていただいており、チーム全体としてResilireを応援してくださっていることを日々実感しております。この2年間で、気づけばDNXのファンになっていました。
DNXは、顧客に対して本質的な価値を提供することを一貫して重視されており、それがSaaSビジネスで最も重要なファクターであると認識しています。その一貫したアドバイスが、私たちの視野を広げ、中長期的な施策に集中することを可能にしています。
この度のシリーズAにおいて、さらに大きな期待を寄せていただいていることを認識しております。リスク管理を起点としてサプライチェーン領域への参入を果たしたResilireが、そこから得られたサプライチェーンネットワークデータを基に、未開拓の市場を創出し、世界をより良い方向へと導いていけるよう、挑戦を続けてまいります。
長期にわたる旅路になることが予想されますが、今後とも変わらぬご支援を心よりお願い申しあげます。

ーー株式会社Resilire 代表取締役 津田裕大


最後に

Resilireは、製造大国である日本のサプライチェーン強靱化に寄与するプロダクトとして、まずは顧客が直面する様々なリスクの課題解決を目指します。そして、その過程でつながるサプライチェーンネットワークと、そこで得られるデータから、新たな顧客価値を生み出すことができる、事業の奥行きの深さにも、強い可能性を感じています。

津田さんをはじめ、SPROUNDを卒業していったResilireのメンバー達、そして新たに参画してきた優秀なチームの皆さんと一緒に、引き続き「日本発」の素晴らしいプロダクト作りのご支援ができることを、DNX一同楽しみにしています。

ResilireのSPROUND卒業セレモニー(2023年7月)

(文:井無田ゆりか)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?