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追加投資|メダップ

DNX Venturesは、前回のシリーズAラウンドに引き続き、メダップ株式会社(以下、メダップ)に追加出資をさせて頂きました。DNXは、今回のラウンドでもリード投資家としてご支援させて頂き、新しく参画頂いた投資家の皆様と共にメダップの資金調達を無事に完了できたことを嬉しく思います。本稿では、我々DNX Venturesが追加出資をするに至った背景とメダップがもたらす提供価値について、触れてみたいと思います。

アフターコロナの病院経営

コロナ禍は、病院経営に大きなインパクトを与えました。その一つが、コロナに関する補助金と診察報酬の特例(加算)です。この補助金等による「増収」は、コロナ禍に並行して進行していた物価高による診察材料費や諸経費の負担を補填する効果を担いました。2018年度に経常赤字病院の割合は46.4%ありましたが、2021年度には19.9%まで縮小しています。しかし、2023年の5類移行によってコロナ関係の補助金が廃止され、医療報酬の特例措置も大きく縮小されると、高騰する光熱水費等のコスト削減が難しい病院経営はコロナ前に比べて厳しさが増しています。実際、補助金を除いた経常利益が赤字の病院の割合は増加傾向にあります。コスト削減が難しく、かつ医師の働き方改革が求められている中、アフターコロナの病院経営は難しい舵取りを迫られており、特に医療収益の二大柱である入院(収益の約7割)と外来(同約3割)をいかに取り戻すかが鍵になります。

参考文献:日本政策投資銀行他監修「ヘルスケア業界データブック2023」および日本病院会他「2022 年度病院経営定期調査」「2023 年度病院経営定期調査」

メダップが提供する価値

メダップが提供する主力プロダクトの「foro CRM」は、病院向けのSaaSプラットフォームであり、患者獲得(紹介)を促進することを主眼としています。紹介の促進をすることは病院とクリニック間の相互理解を深めることにつながります。これにより、患者が適切な医療機関を選択しやすくなり、より質の高い医療やサービスを受けられるメリットが生まれます。

コロナ禍で来院を控えてきた患者を取り戻すことがアフターコロナの病院経営において重要となっているのは前述の通りですが、foro CRMはそのペインに応えるサービスです。主に病床200以上の大病院に利用されており、特に400病床を超えるような地域の基幹病院に利用されています。大病院の地域医療連携部門は、対象地域にある病院・クリニックからいかに多くの患者を紹介してもらうかを担っており、企業で言う営業活動を行っています。foro CRMは、こうした患者紹介の促進のため、地域からの紹介データを一元的に蓄積でき、クリニック毎の紹介状況が可視化されることで、効果的な営業施策の立案、振返りの実行を支援しています。データの蓄積といっても、 院内で分割管理されている患者データやフリーテキストで入ってくる情報を統合、識別するだけでも大きな困難がありました。foro CRMは、そうした課題と向き合い、リリースにあたっては済生会熊本病院と共同開発を行い、その後も病院ユーザの声を誠実にプロダクトに反映して解決してきました。地道な開発を続けてプロダクトを磨き上げ、大病院の利用実績を積み上げてきたことこそ、DNXが追加出資をした大きな理由になります。

メダップへの更なる期待

DNXは、メダップが病院DX分野の文脈で担う役割が更に大きくなるだろうと考えています。例えば、大病院は地域の病院(クリニック)から患者を紹介してもらうことだけが課題ではありません。逆に、症状が安定している患者さんを大病院から地域の病院にお戻しする「逆紹介」が必要になっています。この逆紹介は、医師の働き方改革の動きと合わせて、病院経営においては重要な活動となっています。このように病院経営が抱える周辺の課題を解決するため、メダップはプロダクト拡充を進めており、外来の前方連携から逆紹介の後方連携までの地域医療を一気通貫で把握、管理できる病院のコマンドセンターのような役割を担っていけるのではないかと期待しています。


今回の追加出資に際し、メダップCEOの柳内さんからコメントを頂きましたので、最後に掲載して終わりたいと思います。

柳内CEOからのコメント

2021年8月のシリーズAラウンドに続き、DNX Venturesからは引き続きリード投資家として支援を受けることになりました。この数年間、医療・病院業界ではアフターコロナや少子高齢化への対応が求められています。
一方で、メダップは市場ニーズの変化やマルチプロダクト化への対応など、様々な挑戦に直面しており、その中で試行錯誤や学習が極めて重要な局面にあります。
DNX Venturesからの支援は、投資だけでなく、形式化された知識の共有、長期目線でのアドバイス、さらには投資先企業間の学びの促進など、様々な形でメダップの事業成長を加速させるものと確信しています。
ーーメダップ株式会社 代表取締役 柳内健

(文:白石 由己)


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