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新規投資のご報告|米国Joymode

DNX VenturesはシードステージからサポートしてきたJoymodeのシリーズAラウンドへの投資を実行しました。既存投資家であるHomebrewLOWERCASE CapitalNaspersという素晴らしい投資家の皆さんと共に今回のラウンドをクローズできたことを、大変光栄に思っています。


所有 VS 体験

家族や友人にプレゼントを贈るとき、あなたはその後も所有しておける“モノ”をあげますか? それとも体験することができる“コト”をあげますか?

その日限りで終わってしまう旅行や高級レストランなどの“体験”をプレゼントするよりも、今後長く使うことができるファッションアイテムやデジタルデバイスなど“モノ”をプレゼントしたほうが、長いこと恩恵を受けることができ幸せだと思うかもしれません。

しかし、近年の研究では「“コト”の体験」が、「“モノ”の所有」よりも求められるようになってきていると言われています。トーマス・ギロヴィッチ教授の文献では、研究対象者はまず“コト”と“モノ”それぞれを購入した時の過去の経験を文章に書くよう指示されます。一週間後にそれぞれ自身の書いた文章を音読するよう促されます。研究者がそれぞれ二つの実験中の研究対象者の幸福度合いを調べたところ、“コト”に関するタスクをこなしている最中の研究対象者の幸福度が、“モノ”に関するタスクをこなしている時よりも高くなるという結果が得られました。
その理由は体験の方が“モノ”の所有よりも個人のアイデンティティと深く結びついているからです。人生というのは体験の積み重なりでできています。より豊かな体験をした人は、それだけ豊かな人生を送ることができるのです。

これは“モノ” の所有には当てはまりません。

さらに、過度な“モノ”の所有への執着は世界的に問題になっています。『人生がときめく片づけの魔法』の執筆で有名な近藤麻理恵(こんまり)さんは、米国でも連続テレビドラマ化されるなど大ブームになっています。ドラマでは、近代消費者の消費行動によるモノの溜め込みに焦点をあて、手が付けられない状態になった一般家庭のクローゼットをこんまりさんが綺麗に片付けてしまう、という内容になっています。米国だけでも1億4千万人の人々がモノの溜め込みによる精神的なストレス、家族や社会的問題を抱えていると言われています。2017年WHOがものの溜め込みを精神的障害として認めると発表し、ものを所有しすぎることが健康に悪い影響を与えることが社会的に認知されてきました。


所有に関する価値観の変化

そうした背景のもと、近年、人々の消費行動が“モノ”の所有から“コト”の体験に移り変わっている傾向が見受けられるようになってきています。アメリカ合衆国商務省経済分析局が2000年から2015年の間に行った調査によると、車、ファッション、生活用品(“コト”)への消費行動が、減少または伸び悩んでいる傾向にあるのに対し、娯楽、旅行、外食(“モノ”)への消費が増加傾向にあることが証明されています。

当然“モノ”の購買行動を完全に無くすことは不可能ですが、革新技術によって消費者が“モノ”の所有をしなくても体験を楽しむことができるような仕組みが整ってきました。


"For Everything Else, There is Joymode"

Joymodeは米国カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とする、サブスクリプション型日用品シェアリングプラットフォームです。会員になると、屋外での映画鑑賞、VR体験キット、ピザ釜セット、大掃除ツールなど、Joymodeを使って様々な体験を楽しむことができます。

倉庫や棚の奥に眠っている調理道具やスポーツ器具や娯楽用品などを見て溜息をついた経験は誰もがあるのではないでしょうか。

Joymodeはそんな悩みを解決するべく、人々が購買をしなくても様々な商品を使うことができる世の中を作り出すことをミッションに創設されました。

価格設定はいたってシンプル。サブスクリプションモデルを取り入れ、月々2,500円程度の会費を払うだけで、何度注文してもOKの借り放題サービスです。

また、サービスの利用方法はいたってシンプル。会員はまずプラットフォーム上で体験したいアイテムと受け取り方法をデリバリーまたはピックアップから選択します。あとは、使い終わったら回収しにきたJoymodeチームに返却するだけ、非常にシンプルな仕組みです。


Joymodeの仕掛け人は?

シンプルなサービスを支えるJoymodeの秘密は、綿密に計算された物流会社としての顔です。プラットフォーム上の全ての製品は、回収されてから次の会員のものに届くまでに、清掃、点検、保管、配送の対応が必要です。Joymodeは、各製品、工程に関するデータを詳細に収集し、常に改善し続けています。
その一方で、物を持たないというこの新しい体験のワクワク感を上手に伝える、Instagramの活用術も目を見張るものがあります。
これら各側面から秀でたサービス設計を手がけているのは、創業者で社長のジョー・フェルナンデス(Joe Fernandez)率いる経営陣たちです。

DNXが2012年にジョーに初めて会ったとき、彼はKloutというインフルエンサーの影響力分析プラットフォームのCEOをしていました。
当時インフルエンサーマーケティングという考え方はまだそれほど知られておらず、企業/ブランドが適切なインフルエンサーを見つけることができる唯一のプラットフォームとして、Kloutは急成長しました。その後リチウムテクノロジーズに2014年に売却するに至りました。

Kloutの経験を元に、データサイエンティスト、ソーシャルメディアマーケター、オペレーション専門家など、素晴らしいメンバーを揃えて新たな挑戦をしているジョーと、こうして再びパートナーを組めることを光栄に思います。

Joymodeについての詳細はこちらから:
https://www.joymode.com/


(文・Rickie Koo / 編集・上野 なつみ)

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