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追加投資|ヤモリ

この度DNX Ventures(以下、DNX)は、「不動産の民主化」をミッションに空き家や中古アパートの再生に取り組む株式会社ヤモリ(以下、ヤモリ)の総額10億円のシリーズAラウンドをリード致しました。DNXとしては、2021年のシードラウンドに引き続き、2度目の同社への出資となります。本シリーズAラウンドでは、DNX以外の投資家として、三菱UFJ信託銀行株式会社および米国最大の不動産領域特化のベンチャーキャピタルMetapropが参画しております。

ヤモリが解決する社会課題とは?

日本では空き家が2018年に約850万戸となり、多くの空き家は修繕が必要な状況です。他方、高齢や低所得などを理由に賃貸住宅に入居できない人は年々増加しており、大きな社会課題となっています。こうした築古物件や空き家増加の背景には、相続等で受け継いだ一部の不動産オーナーに所有権が偏り、上手く活用できていないことが影響しています。

これらの空き家問題に対して、ヤモリは個人の不動産投資家に焦点を当て、より多くの人が不動産による資産形成ができるサービスを展開し、手付かずの中古住宅の賃貸市場活性化と住居環境の向上を実現してきました。


ヤモリのこれまで(第一章)

ヤモリはこれまで一般の会社員や主婦の方々向けに不動産による資産形成を寄り添って支援するサービス「ヤモリの学校」と「ヤモリの家庭教師」を提供してきました。また、一般の個人投資家向けに不動産賃貸業に特化したクラウドシステム「大家のヤモリ」を無料で提供しています。提供開始から3年間で利用者は5,000人、登録物件規模は1,000億円以上まで利用が拡大しています。

このクラウドシステム「大家のヤモリ」を活用し、全国の中古物件情報を集めたポータル機能、収支シミュレーション機能、賃貸需要調査データベース、融資資料作成機能、購入後の収支管理、書類管理機能などIT化し、不動産事業運営の効率化を図るとともに、「家庭教師のヤモリ」では不動産の購入から管理・売却まで一貫して不動産事業に精通した自社スタッフが個別の相談や質問に回答することで、会員生徒の目標に合った賃貸経営をサポートしています。

SNSや口コミでサービスが拡大し、20-30代の個人投資家を中心にこれまで1,600名以上の会員生徒が入会しており、全国に中古不動産の再生に取り組むオーナーの育成を目指しています。また、現在までに会員生徒が購入した中古物件規模は合計50億円を超えており、会員生徒は中古の戸建や一棟アパートをリフォームした後に、貸し出すことで、安定した賃貸収入を得ています。

更に、会員生徒向けに無担保融資の「ヤモリローン」の提供を開始しました。中古物件の再生をより一層後押ししていく上で、さらに重要となるのが、不動産事業に対する融資です。これまで法定耐用年数を経過した中古物件に対しては、物件取得の際に融資を活用することが難しく、流通を妨げる大きな要因でした。今般の「ヤモリローン」により、中古物件の取得やリフォームであっても無担保で融資を提供する仕組みを構築することで、より多くの人が空き家となっている戸建てやアパートの再生に取り組むことができるようになります。


ヤモリのこれから(第二章)

ヤモリは今回の10億円の資金調達により、全国の中古戸建物件を購入出来る事に加えて、会員生徒が購入してリフォームした物件をヤモリで買取り、運用管理することも可能となりました。これにより空き家問題の解決だけでなく、会員生徒は出口戦略を取ることが難しいとされた中古物件の賃貸業に取り組みやすくなり、投資回収期間を短縮化できます。

また、国内外の機関投資家や個人投資家を呼び込み、三菱UFJ信託銀行と協業して日本初の空き家賃貸ファンドの組成を目指します。ヤモリは今回調達した10億円に加えて三井住友銀行及びみずほ銀行、さらには各地域の金融機関からの借入を活用することで、今後5年間で全国の地方都市エリアを中心に7,500件の中古戸建物件を取得して運営管理していく計画です。

今回投資に至った経緯

弊社が今回、ヤモリへの投資を決定した理由は、これまで築いてきた優位性、マーケット、経営陣です。

1. これまで築いてきた優位性

前述の通り、ヤモリはこれまで非常に熱量の高いユーザーコミュニティと不動産賃貸業に特化したクラウドシステムにより、人的ネットワークと良質なデータアセットを溜めてきました。地方の不動産マーケットは情報が限定的で一般的にはaddressしにくいマーケットではありますが、これまで地道に築いてきた全国に拡がる人的ネットワークと良質なデータアセットがヤモリの大きな武器となっています。

2. マーケット

ヤモリが注力している地方の不動産マーケットは非常に大きな市場ですが、ヒト・モノ・カネがあまり流れていない手付かずのスペースです。また、前述の通り、地方の不動産マーケットでは空き家が一貫して増え続けており社会課題となっていますが、逆にヤモリにとっては大きなビジネス機会でもあります。地方不動産という大きな手付かずのマーケットをヤモリが開拓してくれることを期待しております。

3. 経営陣

ヤモリの藤澤CEOと共同創業者の廣瀬さんは、大手総合商社で培ったビジネススキルをベースに、不動産業界での経験も長く、深い業界知見と不動産投資に必要な高い専門性をもつ経営陣です。また、そのリーダーシップと不動産民主化に賭ける熱いパーパスで、多くの人の共感を集めながら、これまで力強く事業を進捗させてきました。この領域で勝つのは藤澤CEOと廣瀬さんの経営チーム以外にいないと確信しております。


ヤモリ藤澤CEOからのコメント

SaaSでオーナーと物件データを蓄積し、それを基盤にヤモリ自らが物件を保有していくという新しいビジネスモデルに挑戦しています。DNX倉林さん、新田さん、DNXのメンバー皆さんと議論する中で、ヤモリが目指す未来の目線が上がり、やるべきことの解像度が上がりました。今後もDNXの皆さまと一緒にこれまでホワイトスペースであった「中古物件X地方」において、ヒト・モノ・カネが揃う仕組みを作って、新しい市場を創ることを目指していきます。
ーー株式会社ヤモリ 代表取締役 共同創業者 藤澤正太郎

最後に

空き家問題は日本の深刻な社会課題である一方、地方不動産マーケットは依然として開拓余地の大きい有望マーケットでもあります。これまでヤモリが培ってきた不動産コミュニティはじめとする人的ネットワーク、データアセット、ノウハウを武器に、ヤモリが空き家問題という日本の深刻な社会課題を解決し、不動産の民主化を牽引してくれることを期待しております。

(文・新田修平)


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