今だから聴いておきたい9人時代のStray Kidsの曲⑩ 〜最終章・LEVANTER〜
アルバム「ODDINARY」リリースから1年
STAYにとっては怒涛と感動の1年でした
貫禄さえ出てきたStray Kidsのメンバーに、いつの間にか「大人」を感じて、TVに映る姿も、ステージに立つ姿も、逞しくて、眩しくて。
海外の有名なトークショーに出たり、雑誌の表紙になったり、コンビニスイーツとコラボしたり、誰にも彼にも有名になっちゃって、なんだかちょっと寂しくなってしまうのは親心?
そうだよね。あれから3年半。
みんな大人になったよね。私たちも変われたのかな。
来日してくれたStray Kidsのツアーを振り返って、ウジンのソロライブに行って、9人時代のアルバムを聴き直して、色々思い出して、考えて、気がつき、そして確信しました。
あの時、進む道は分かれてしまったけど、正解だった
スキズが世界で成功したのは、偶然ではなく、必然だった
2019年10月28日、
Stray Kidsからウジンが脱退することが発表されました。
当時のJYP公式コメントにはこう書かれていました。
ウジンの「新しい道」というのは、ソロアーティストとしての再出発、というのは後々分かったことで、当時は脱退の理由が「ネガティブなもの」と「憶測」されており、ウジンや事務所への批判が相継ぎました。
そう、当時のSTAYはパニック状態でした。
落ち着いて物事を見られなかったと言われればその通りで。
何回泣いたか分からないし、意味もなく敵や味方を作ってたかも。
でも、今、振り返ってみて、色々なことが見えてきました。
ウジンの脱退は「突然の出来事」ではなかったこと
3RACHAがアルバムの中に色々な「答え(鍵)」を織り込んでいたこと
8人のStray Kidsとして「次のステップへ飛躍する」準備をしていたこと
「I am NOT」「I am WHO」「I am YOU」が3部作に続き、シリーズとして計画されいていた「Clé(鍵)」シリーズ。
2019年3月にリリースされた「Clé1 : MIROH」は、初めてMカウントダウンや米iTunesアルバムで1位を獲得するなど、記念すべきアルバムになりました。
しかし、このアルバム、タイトル曲の「MIROH」をはじめ、ハンジソン推しの私でもあれっと思うくらい、ウジンのパートが極端に減っていました。
その3ヶ月後、2019年6月にリリースされた「Clé2: Yellow Wood」は、新曲はなぜか3曲しか収録されておらず、残りの4曲は、過去のアルバムのラストに収録されていた「Mixtape#」シリーズの再収録。
しかもこのCDだけ「スペシャル」アルバムとしてリリースされた不自然さ。気がついていたようで、気がつきたくなかった、何かが起こっていました。
Stray Kids TRACK "Mixtape Spin-off"
ここに一つの「鍵」があります。
アルバム名「Clé2: Yellow Wood」の「Yellow Wood」が意味するのは米国の詩人ロバート・フロストの詩「The Road Not Taken(誰も踏み入れたことのない道)」の冒頭部分
黄色は「幸福」、森は「不安」を表しており、その先の道が「二つ」に分かれていた。
8人のStray Kidsとウジンが、別々の道を行くことを暗示しているような。
このアルバムに収録された曲「Road Not Taken」の歌詞です。
スキズの曲で度々登場する羅針盤。ウジン脱退を告げるJYPのコメントでも「羅針盤を抱いて夢に向かって再び進む」という言葉で、8人の再出発を表現していました。
「Road Not Taken」は短いイントロ曲ですが、EDM風の重低音が効いたハウス系ビートが、明らかに「これまでの」Stray Kidsとは違う雰囲気、「新しい時代の」Stray Kidsを彷彿とさせる曲でした。
8人のボーカルのパートが続いた後、しばらく間奏が入り、最後にウジン1人のボーカルが入って終わる、という8+1の構成になっているのも何か意図的なものを感じさせます。
さらに、もう1つの収録曲「TMT」のMVでは、バンチャンとウジンがそれぞれ「DO WHAT YOU WANNA DO(自分の好きなことをやれ)」という看板を見つめた後、2人がすれ違って反対方向に走っていくシーンがあります(2:46〜)。
Stray Kids "TMT" Video
Stray Kidsの独創性を象徴するアルバム「Clé2: Yellow Wood」。
当時は変なアルバム・・・と思って聴いていましたが、今改めて聴いてみると、彼らが当時もがき苦しみながら、9人から8人のStray Kidsとして再出発するための準備をしていた事実を突きつけられているような。
当時のSTAYが気が付かないほど繊細なメッセージを暗号のように曲の随所に組み込ませ、アルバムを完成させた3RACHA。
戸惑いや葛藤、不安の中、それを全く見せることなく活動を続け、STAYに最高のパフォーマンスと明るい笑顔を見せてくれたStray Kidsの心の強さとプロ意識。
ウジンの脱退が、STAYの心に大きな傷跡を残したことは事実です。
でも、もしウジンが脱退しなかったら、Stray Kidsは現在の「世界のStray Kids」に到達しなかったかもしれないし、ウジンはソロアーティスト「KIM WOOJIN」として羽ばたくチャンスを失っていたかもしれない。
「TMT」でチャンビンが歌っていた「危機と好機」という二つの道。
「危機」を「好機」に変えたStray Kidsが、自らの手で自分たちの未来を変えていったこと。私たちがこれまで見てきたもの全て。
2019年12月9日にリリースされたアルバム「Clé: LEVANTER」。
Clé1、Clé2と来てClé3にはしなかった、でもCléという名前を変えなかったこと。Stray Kidsが8人として再出発する旅立ちのメッセージ。
タイトル曲の「바람 風 (Levanter)」。
そこにはもう、ウジンの姿はありませんでした
Stray Kids "바람 (Levanter)" M/V
Levanter(レバンタール)は、地中海からジブラルタル海峡を通って大西洋に吹く風のことです。
大きな変化を起こす力のシンボルで、大航海時代に世界に旅立っていったヨーロッパの船舶を大西洋に押し出した強い風。
パウロ・コレーリョの名作 The Alchemist「アルケミスト*」の中で、主人公の少年サンティアゴの運命の象徴としてLevanterが登場します。
(*小説の内容は、yujiさんのブログの素晴らしい解説をお読みください。)
平穏な羊飼いだったサンティアゴが、住み慣れた小さな街を出て、憧れの地へ旅立つことを決断した、物語の重要なシーン
「慣れ親しんだ」9人のStray Kidsに別れを告げ、「本当にほしいもの」を求めて世界に飛び出す決意をした8人のStray Kids。
9人のStray Kidsを惜しむように振り向くアイエン、そして、もう振り向くことなく、新しい何もない世界へと1歩を踏み出す8人の表情が、演技ではなく、現実の彼らそのものとしか思えないこのシーン。
あの時、8人になることが一番辛かったのは彼ら自身のはず。
でもその「困難」に果敢に立ち向かい、乗り越えてきたStray Kidsにとって、きっと一番大事にしていることは「変化し、前に進み続けること」
彼らにでさえ予想できない、しかし確実に彼らのものでしかない、Stray Kidsの「変わっていくもの」を見守り応援しながら、私は「変わらないもの(STAY)」であり続けたいと思うのです。
You make Stray Kids STAY
このシリーズの記事はこれで終わります
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