便利・自由・快適志向によって追いやられた人たち

便利・自由・快適を求める強い人たちと、それによって疎外された弱い人たちという構図は、私らしい例で言うなら、遊戯王5D'sに登場する"シティ"と"サテライト"の関係を連想させる話だ。

裕福な人たちが暮らすシティでは治安も良く、街も綺麗で、社会的弱者のためのさまざまな配慮が行き届いている。一方でサテライト、犯罪者や貧民が押し込められる、陸から隔離された島では、生きるためには暴力や犯罪に手を染めずにはいられない。血で血を洗う……とまではいかないが(カードゲームアニメだし)、鉄と化学物質の臭いに塗れながら油で油を洗うような世界が広がっている。
現実のスラム街を詳しくは知らないから迂闊に例えていいものかはわからないけど、サテライトの世界は私の中の『スラム街』のイメージそっくりだった。


たまにはエッセイらしい話題をしてみよう。私の故郷の話だ。
私はかの悪名高い岸和田出身(西成の次にヤバい地域と言えばわかるだろうか?)で、そこでは道で他人とすれ違う時には常に退路を意識するような少年期を送ってきた。幸いにもサテライトとは違って、その気になれば大阪市内へ出かけることもできる(ただしこれには少年には安くないような電車賃と時間を要する)し、大金さえ積めば東京へ旅行することだってできたのだが、それでも私は、社会から常に見捨てられているような感覚があった。
見捨てられているのは『私が』ではない。『この街が』だ。

カラオケは町に一つしかなく、老人のたまり場でない喫茶店は存在しない。同人誌を買うにも往復1,000円以上は必要だし、ライブや同人イベントとなるとそれ以上の出費と時間を求められる。とにかく文化がない町だった。
インターネットに繋げば、全国展開のコンテンツが東京ローカルでイベントを開催しているらしいと知れる。知ったところでどうすることもできない。そもそも子どもにはAmazonや駿河屋を利用する権利などない。

生まれたときから東京近辺で暮らしている人ような連中は想像もつかない話なんだろう? 少しでも多くの富裕民の後頭部に、この事実をズドンと叩きつけてやりたい。

私の故郷は世界に見捨てられていたのだ。

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