【心臓カテーテル】どこから血管カテーテルを入れるか?【動脈アプローチ部位の種類とその特徴】

今回は,心臓カテーテル検査・治療において,カテーテルの挿入する部位,”アプローチ部位”の種類と,違いに関しての解説です.

(穿刺のリスクが高い動脈アプローチに関する解説のみです.)

どんなアプローチ部位があるか

・橈骨動脈アプローチ
・大腿動脈アプローチ
・上腕動脈アプローチ
・遠位橈骨動脈アプローチ

があります.

カテーテルアプローチ ぷーオリジナル 

それぞれの特徴を解説していきます.

 

1.橈骨動脈アプローチ

■メリット
・止血が簡単.
・出血合併症のリスクが低い.
■デメリット
・細いカテーテルを使用する必要がある.
・蛇行が強い場合,手技困難.
・稀に橈骨動脈が閉塞してしまう.

比較的低侵襲で済む橈骨動脈アプローチは頻繁に使用されるアプローチ部位です.

止血が容易なことが大きなメリットですが,血管が浅層にあり,骨挟むことで圧迫止血がしやすく,血腫ができるスペースもすくないことが,その要因です.

橈骨動脈アプローチ 止血モデル ぷーオリジナル

難点は,血管径が比較的細いため,蛇行している場合や,大きめのデバイスを使用する際には適さないこと.

また,橈骨動脈閉塞のリスクもあります.
CKDの患者さんでは,シャント用の血管をつぶしてしまう恐れがあるので,基本的には橈骨動脈アプローチは選択しないことが多いです.

 

2.大腿動脈アプローチ

■メリット
・穿刺が容易.
・太いカテーテルも使用可能.
・動脈閉塞の心配がない.
■デメリット
・止血がやや大変.
・出血合併症を起こしやすい.
・術後安静臥床が必要なので,患者さんの負担が大きい.

橈骨動脈に比して大腿動脈は太いので,穿刺は基本的に容易です.

しかし,一方で橈骨動脈より止血が困難であり,出血合併症のリスクが高くなります.

大腿動脈アプローチ 止血モデル ぷーオリジナル

後腹膜血腫などの大腿動脈アプローチに伴う出血合併症は,時に命にかかわることもあります.

ゆえに,私たちカテ―エル施行医は,細心の注意を払って穿刺部の止血を行うわけですが,動脈硬化の強い血管や肥満体型の方はしばしば止血に難渋します.

 

3.上腕動脈アプローチ

上腕動脈は,橈骨動脈より太く,血管蛇行の影響や閉塞の心配は軽減されます.

また,止血時も,大腿動脈アプローチのような安静臥床は不要です.

一見,バランスが取れていそうなアプローチですが,出血合併症を起こしたとき,神経損傷やコンパートメントなどのリスクが高く,カテーテルの学会などでも,”優先的には選択すべきでない”とされることが多いです.

 

4.遠位橈骨動脈アプローチ

遠位橈骨動脈アプローチは新しいアプローチの考えです.

橈骨動脈アプローチ同様の安全性で,止血時に手首を曲げても良くなるので,患者さんの負担をさらに減らすことができます.

万が一に動脈閉塞しても,橈骨動脈は温存されるので,シャント血管などで困ることも少なくなります.

但し,穿刺がやや困難であり,血管径は橈骨動脈以上に細くなります.

新しいアプローチゆえに,止血方法・止血デバイスの確立も浅く,手技の習熟や適応はしっかり考えていかなければなりません.

 

まとめ

まとめるとこんな感じです.

カテーテルアプローチ部位 比較 ぷーオリジナル

※大腿動脈アプローチには,アンジオシール®やパークローズ®などの止血補助デバイスはありますが,完全な止血が得られるわけではなく,過信はできません.
※遠位橈骨動脈アプローチにも止血デバイスが昨今発売されてきました.私自身は3回くらいしか使ったことありませんが...


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