第2回⑤ 寺澤佳洋先生
冒頭いきなり、運営スタッフと参加者への「感謝状」から講演を始めた寺澤先生こと、「医はき師 てらぽん」。効果音と共に「ガヤ大歓迎!」の発言に、視聴者も最初から盛り上がる10分になりました。
(あえてこの記事でも「てらぽん先生」と呼ばせていただきましょう!)
愛知県育ち、明治鍼灸大学で鍼灸師を取得したのち、東海大学に編入し医師となったてらぽん先生。医師となってからは「診断・推論」への興味をもち、千葉の病院で研修したのち、藤田医科大学で救急総合内科から総合診療科へと進みます。総合診療科では有名な「藤田総診」の一期生にあたります。
妻が産婦人科医であり、生まれ故郷の南島原市に帰るとのことで、一緒に島原に移り住んだてらぽん先生。現在は口之津病院で家庭医として働いています。
ここまでスルーしてきましたが、「医はき師 てらぽん」。まず「医はき師」とはなんでしょうか。
開業できる国家資格である、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師はまとめて「あはき師」と呼ばれています。
はり師・きゅう師でありながら、医師でもあるてらぽん先生。これをもじって「医はき師」と名乗っているのだそうです。
そんなてらぽん先生の医師になってからの疑問は、「医師と鍼灸師の距離感が遠い」ということ。
鍼灸師として、効果はあると考えているが、同じ医療なのに疎遠な関係であり、鍼灸、鍼灸師がもっと活躍できれば良いのではと考えた寺澤先生。
デザインしたいことは「病院と鍼灸院、医師と鍼灸師をつなぐ仕組みづくり」であり、自身は「患者・鍼灸師・医師・日本のために」ありたいといいます。
そのために現在、医師に対しては医学界新聞に寄稿をしたり、プライマリ・ケア連合学会やオンラインでの勉強会を開催しつつ、全国鍼灸マッサージ協会でも「医師との付き合い方」などを広報、さらには国際学会でも日本の鍼灸師を宣伝しています。
そして一般向けの広報活動の一環としてYouTubeでも活躍しています。
前半は生い立ちや今の活動を話してくださっててらぽん先生。後半は目指したい医療の姿を教えてくださいました。
まずてらぽん先生にとっての「家庭医・総合診療医」の定義は、「あらゆる主訴の入り口で対応できる医師」です。
ある一家が、それぞれ色々な主訴を持っていたとして、大学病院に行くとそれぞれが違う・様々複数の診療科で診られることになります。専門的な診療も重要ですが、この様な人がワンストップで最初に診てもらえるのが「家庭医・総合診療医」であり、これがてらぽん先生の立ち位置です。
そして鍼灸は様々な症状に対応でき、これをてらぽん先生は「鍼灸師は最強」と名乗ります。
実際に学術的にみても、片頭痛や緊張性頭痛に対しての推奨があったり、慢性疼痛のガイドラインにも治療の選択肢として挙げられています。Cochrane LibraryやUpToDateといった二次資料で検索しても、様々な疾患に対する効果が挙げられていながら、鍼灸はまだまだ広まっていません。
そんな中で、「医療の入り口」という「家庭医・総合診療医」を活かし、鍼灸を広めています。
ここまで鍼灸師×医師として、情熱的な講演を繰り広げたてらぽん先生。最後は有名なエピソードのパロディで、「てらぽんのことは、嫌いになっても、鍼灸のことは嫌いにならないでください」と独創的に締められました。
視聴者からはこっそりプロフィールに書いてあったにもかかわらず、講演中に触れられなかった経営大学院(MBA)について、「MBAはどのように活かしたか?」という質問がでました。
てらぽん先生はグロービスで学ばれましたが、その意味を「世の中は医療者ばかりではないことを認識できた」「人をどう巻き込むかを知ることができた」「リーダーシップを学べた」と表現されました。
取材・文:平野翔大(産業医/産婦人科医/医療ライター)
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