コント交換note⑦

コント交換noteとは…
リレー形式でいろんな芸人がコント台本を書き進めていく交換ノートです。

7話目の担当はわたくしドドん石田です!よろしくお願いいたします。私はコンビの"象徴"担当なのでネタは普段書かないのですが…。

これまでのお話はこちらから!
https://note.mu/polanakata/m/me431e3bc9b22


第7話 ドドん石田


【明転】

とある工房に作務衣を着た白髪の男、何やら作業をしている。男はゆっくり話し始める。

男「ワシの名前は"桐ヶ谷長助"。名の縁か否か、桐箱職人として六十数年を生きている。決して主役になることはない桐箱、何かを入れる箱、しかしその箱の空白の中にこそ技術が問われる。ワシはそこに誇りを持っておる。世の人間国宝達も自分の作品を入れたくてワシを頼るほどだ。いかんいかん、慢心してはいい桐箱は作れん。桐箱はすぐ気の緩みを見抜く。"気り"がぬけんのぉ。…なんてのぉ。さてまた命を宿そう。」

下手から若い男が入ってくる

弟子「師匠ー!!」

師匠「大きな声を出すな。桐箱が怯えるではないか。」

弟子「すみません!親が私設応援団だったもんで。」

師匠「そうか。」

弟子「隣の部屋の掃除終わりました。」

師匠「では、あっちの木くずも掃除しといて…。」

弟子「師匠!…そろそろ私にも桐箱作らせてください!」

師匠「馬鹿者!」

弟子「!?…。」

師匠「ワシの弟子になって何年だ?」

弟子「もう3年です。」

師匠「まだ3年だ。」

弟子「……。」

師匠「桐箱職人の世界にはこういう言葉がある。『クズ履き五年、いや七年、あったかいご飯に木クズと醤油、食べれてこその桐箱人』」

弟子「…師匠は食べたんですか?」

師匠「もちろん。その日の晩はひどい高熱が出たのぉ。」

弟子「僕には果てしない境地です。」

師匠「つまり桐箱というものは果てしない。ゆっくり時間をかけて学んでいかないといけない。」

弟子「…はい。」

師匠「…とも言ってられん!」

弟子「え!?」

師匠「ワシもこの先そう長くはない。この桐箱の技術を後世に残さずしては死んでも死にきれん。そしてお前にはその素質がある。」

弟子「…僕に素質が?」

師匠「そうじゃ。ある日お前はぽつりと言った『この木クズに牛乳入れたらコーンフレークみたいになるかなぁ』ワシはその時思った、お前にならこの桐箱の技術を伝承していいと。」

弟子「!?」

師匠「今日から桐箱を作らしてやろう。」

弟子「ありがとうございます!!!!嬉しいです!!!!」

師匠「どんな桐箱を作りたい?」

弟子「どんな?」

師匠「桐箱というのは自分の入れたいものを入れれるわけではない、依頼人がコレを入れる箱を作ってくださいときて、はじめて作る。しかしお前には依頼はまだない。まずは自分が入れたいものを想像して作りなさい。」

弟子「なるほど!僕が作りたいもの…。」

師匠「そう。自分が桐箱に入れたいもの。」

弟子「あ!昨日買った5個入りの小さいあんぱんがまだ2つ残ってるので、あれ入れたいです!」

師匠「あんまり桐箱を"ちょっとの間入れておこう"には使わんけどな。」

弟子「え?」

師匠「食べきったら空になるだろう?空になったらどうする?」

弟子「でも、あんぱんが入っていたという記憶が入ってます。」

師匠「!?…お前には才能がある!」

弟子「あとスマホも入れておきたいですね。」

師匠「小物入れとかじゃないんだぞ、桐箱は!卓上に置くきか!桐箱はもっと価値のあるものを入れるもんだ。」

弟子「今でこそ当たり前になってるスマホも、昔の方からしたら全て奇跡みたいな作業をしています。遠くの方と連絡がとれ、見たい映像を見れる、知らないことを知れる。とても価値があると…。」

師匠「才能がすごい!」

弟子「価値を自分で決めすぎることは己の慢心に繋が…。」

師匠「それ以上言うのはやめなさい!師匠と弟子の関係性がゆらぐ!」

弟子「あとあれも入れたいです!亡くなった祖母の形見。」

師匠「いいぞ!そういうのいいぞ!桐箱に向いてる。」

弟子「パソコンのマウス。」

師匠「向いてない!」

弟子「晩年祖母は祖父も亡くなり元気がなかったんです、そんな時近くにパソコン教室が出来てふと通い出し、新しいものを学べるよろこびにどんどん元気になっていきました。」

師匠「向いてそうだなー。」

弟子「どんどん技術を吸収していった祖母は最後Google社に入るんですが。」

師匠「待ちなさい!…優秀な人材なら国籍、年齢を問わないとは聞いたことがあるが。本当か?」

弟子「本当かどうか分かりません。でも僕の目には元気にニコニコパソコンを触ってる祖母の記憶があります。そんな祖母が最後まで握りしめてたマウスを、もう片方の手でギュッと握ってくれてた僕の手で入れたいです。ダメ…ですか?」

師匠「誰だー!!ダメって言ったのはー!!ワシが許さんぞーー!!!この弟子から学びがあるぞーーーーー!!!」

遠くで女性の声がする

女「すみませーん。ごめんくださーい。どなたかいらっしいませんか?」

師匠「誰だ?こんな山奥まで。」

弟子「見てきます!」

一度はける弟子

弟子、女と一緒に入ってくる

弟子「師匠!桐箱の依頼の方のようです。」

師匠「若い女性一人で参られるなんて珍しい、どこぞの人間国宝のお付きの方ですか?」

女「人間国宝…。やっぱり立派な方なんですね。そんな大先生にとても言いづらいんですが…。」

師匠「何ですか?言ってごらんなさい。」

女「先日、子供を産みまして。」

師匠「それはおめでとうございます。」

弟子「おめでとうございます。」

女「男の子で。初めての子供でもありますし、かわいくてかわいくて。この子を産んだんだぞー、ずっとお腹の中にいた子がついに世界に飛び出てきたんだぞーって思ったら、何か思い出を取っておきたいと思いまして…。だからへその緒を大切に取っておきたくて。」

師匠「へその緒。」

女「私、ジップロックに入れようとしたら旦那にめちゃくちゃ引かれて。

師匠「ジップロック!?」

女「もっといい物に入れなさい!って怒られて。入れ物、スペース、いい物でGoogleで検索したらここが出てきて。」

師匠、弟子「Google!?」

師匠「いやいや。それはそうと、そんな安易な検索でここは出るのか!国宝御用達だぞ!」

女「そうですよね。私みたいな一般人が自分の子供のへその緒を入れるために桐箱を作ってくださいなんて失礼でしたよね。ごめんなさい。…ありがとうございました。」

帰ろうとする女

師匠「待ちなさい!…ぽいじゃないか。」

女「え?」

師匠「桐箱とへその緒。めちゃくちゃぽいじゃないか!!桐箱に入れるものとして向きまくってるじゃないか!!!そういうのを求めてたんだよ!電子機械じゃないだろ!普通!桐箱に携わってたかが3年ほどの奴に諭されるとこだったわい!」

弟子「誰のこと言ってるんですか?」

師匠「お前耳どうなってるんだよ!」

弟子「すみません、親が私設応援団なもんで。」

師匠「そうか。…わかりましたよ。そのへその緒の桐箱、引き受けましょう!」

女「本当ですか!?ありがとうございます、ありがとうございます!!!」

師匠「さぁ初めての依頼だ!丹精込めて作ってあげなさい!!」

弟子「え!?へその緒を桐箱に入れるんですか!?」

師匠「ぴんとこい!」

弟子「すみません、親が施設応援団なもんで。」

師匠「そうか。」


【暗転】


さて!次の担当は誰になるのか!?私は一切の責任を負いません!!!



よろしければお布施をお待ちしております🙏