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「大人になったら何になりたいの?」は大きなプレッシャーのかかる言葉でした

そんな風に質問をされるのがものすごく怖かったのを覚えています。

この質問は「何か一つのことに長けた人間にならなければならない」といった圧力のある投げかけだと認識していたし、それに対して応えようとするのは大きな労力と負担を自分自身に強いられていたのを幼い頃からの記憶としてすごく定着しているのを実感しています。

そして、子どもの頃から回答するのに難儀な感情を抱いていた苦い記憶と共に、ザラっとした感情が呼び起こしてしまうんです。

記憶の中で強いのは、年長の時にでた「将来の夢」を絵にするという課題。これがものすごく苦しくて、何をどう書いたらいいのかを把握することと、納得した上で描き進めるのに大変な苦労をした記憶があります。

これはつい先日まで忘れていたのですが、それを思い出してからは記憶から一向に消えることなく、当時の苦しみを存分に思い出しているところです。

何が苦しかったのかと言えば、当時の僕に「やりたいこと」を定めろと言われるのはものすごく苦渋でした。それはいまでもそうかもしれません。

やりたいことや面白いこと、取り組んでいて気持ちが沸き立つものはたくさんありましたが、それをどれか一つに絞って絵に描け、というのがものすごく心理的な敷居の高いものだったのです。

そこで僕が描いたのは「ウルトラマンになりたい」でした。

当時の僕は何の気なしにそれを描いたわけではなく、かなり苦渋の決断をした上で、それまでに知識として得ていた職業ではなく、象徴でありながらも、架空の存在だったウルトラマンを描いたのです。

苦肉の策でも何でもなく、僕はウルトラマンや仮面ライダーといった特撮物は大好きでしたが、それ以上に彼らの存在感が好きでした。

当時は勧善懲悪を果たす存在である彼らの存在はとても頼もしく思えたのですが、同時に違和感もはらんでいて、敵役となる怪人たちは押し並べて全て悪い奴なのです。

"正義"や"正しい"は、非常に強い言葉です。その言葉自体が持つ"つよさ"から、使い方を間違ってはいけないものだと今では捉えていますし、立場や視座、見る角度によって正しさなんてのは変わるもので、絶対的な正しさなんてのは存在するものではありません。

怪人や怪獣たちだって、のっぴきならない事情があって地球への信仰をしたり、世界征服を目論んでいるわけです。無論、そこに欲がないのかと言えば、欲が大いに強いのは否めませんし、何より強欲は他人を傷つける刃です。行き過ぎた欲は理性で制御しなければなりません。

そういう意味では怪人や怪獣たちは、その理性での制御を欠いた存在であるため、それら地球の人たちや日本を守る存在が仮面ライダーであり、ウルトラマンだったわけで、その防衛する為の行動は正しさを持っていると言えるのかもしれません。

でも、倒される怪人たちにだって生活があり、家族がいたのではないでしょうか。だとしたら、イヤだと思いながらも、闘いを挑んで返り討ちに遭ってしまった彼らは否定すべき存在なのでしょうか。そうなると"正しさ"にも陰りが出てきませんか。

そして、「大人になったら何になりたいの?」という質問は、その正しさをぶつけてきます。

何者かであることを目指すこと、それはある程度理解されている、認識されていることであればあるほどに大人たちは、その正しさを褒め称えます。

「頑張れ」「きっとできるよ」「じゃー〇〇しなきゃだな」

そんな風にして、自分たちの知っている範囲内での知識や経験から要否のわからぬ助言を行った自分に満足する。それが正しいと思っているからで、それ以外の接し方はよくわからないのが現実だったのかもしれません。

正義の味方、なんてものは個人の倫理観に沿った考え方の一つで、絶対不変な考え方や思考がないのと一緒で、人の数だけ存在し個人が抱く正義が数多とあるわけです。

僕の中で、それは「相手の言いたいこと、やりたいことを引き出せる存在」です。

大人になってからなりたいものは何かを問われ、過去にウルトラマンを描いた僕が、この年齢になり、改めて自分自身がやりたい、やって行きたいと思えるのは、それなのです。

それは何か一つのことを指すのではなく、曖昧で、微妙で、掴みようのない、捉えようのない、間に立った人間が行う行為の話だから、何にでも当てはまってしまうし、何にも当てはまらない。

今は、それをすることが僕にとっての正義なのだと思えていて、あの時ウルトラマンを描いた僕に対して、やっと答えわせをしてあげられる気持ちです。

わからないこと、困っていること、理解しがたいことや扱い難いこと...

それらを自分自身の知識や経験、そしてツールなどから照らし合わせて解決する為のサポートができる存在。それはウルトラマンを描いた当時の僕が考えていた正義の味方そのものなのです。

あなたは何になりたいですか。

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