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スポーツは消費されるエンタメで終わるのか

良くも悪くもHotな話題「駅伝」

あまり良い面でHotでないのは残念ではあるが、大きな話題になっている「プリンセス駅伝」に対しての雑種な意見を書かせていただく。

ちなみに、僕はそもそも大会自体を知らなかったし、この日に行われているということも知らなかった。そして、この大会は前哨戦であるということはもちろん、知らなかった。

何の前哨戦なのかといえば、女子駅伝日本一決定戦である「クイーンズ駅伝」への出場権をかけた大会なんだそうで、女子駅伝界では格式のある大会なのかもしれない。

公式HPには下記のような煽り文まで用意されていた。

毎年、アクシデントや最終6区でのボーダー争い大逆転などドラマティックなレース展開が繰り広げられる大会です。チームで戦っているからこそ生まれるドラマが駅伝にはあります。優勝を目指しているチーム、なんとしても予選を突破したいチーム、誰かに走っている姿を届けたい選手など、どういった思いで走っているのか。そういった視点でご覧いただくといつもとは違う楽しみ方ができるかもしれません。

今となっては苦笑いすら出てくる煽り文だ。

何が話題になっているのか

話題、というのはその情報を得た人たちだけが知っているということなので、本件を知らない人だっているだろう。

上でも触れているように、僕は全く知らなかったが、Twitter上でワチャワチャとなり始めたことから目に止まった。が、恐らく、何もなければ全く知らなかった試合(大会)だ。

この大会で何が話題になっているのかといえば、下記2件のトラブル

・走れなくなったが四つん這いになり、膝を血だらけにしながらもタスキを繋いだ選手がいた

・脱水症状なのかフラフラになりながら折り返し点を間違え、結果、倒れた選手がいた

怪我をしていた、脱水症状だった、監督はリタイアを申し出ていた、運営はそれを受理できていなかった、止めるべきだ、感動した、仲間のため、素晴らしい、云々...

悲喜交交がTwitterを始め、ワイドショーなんかでも取り上げられながら溜まっている何かしらの鬱憤を吐き出すかのように出てきていることに思わず感心した。

スポーツの観戦というものが「感情をかき乱される機会」なのだと捉えたら、今回のプリンセス駅伝は成功したのかもしれない。まぁ、賛同はできないが。

駅伝は日本のみで行われる競技

「駅伝」という競技は日本限定で行われる競技で、海外で表記する際には「EKIDEN」になる。本当に日本だけで行われているもので、ガラケーもびっくりするぐらいにガラパゴスな競技だ。

日本で駅伝といえば正月に行われる「箱根駅伝」が有名な所なのは言わずもがな。

正月に時間を持て余しているところにTVをみていて、CMの合間にチャンネルをザッピング(古い表現だ...)していると視界に否応なく飛び込んでくるので、ご存知の方も多い大会だろう。

だが、あまりご存じない方も多いだろうが箱根駅伝は、いうなれば「関東地域に属する大学の順位戦」で、駅伝を取り組む大学の日本一を決める大会ではない

大学日本一を決める大会は「秩父宮杯全日本大学駅伝」という大会がそれにあたるが、こちらの知名度は箱根駅伝の足元にも及ばない。

※大学日本一を決定する駅伝は出雲ではなく、秩父宮杯全日本大学駅伝ということでご指摘いただきましたので修正いたしました。

ちなみに女子大学日本一を決める大会は杜の都駅伝だ。

陸上関係者以外で「駅伝」という競技の大会を知っている方はどれだけいるだろうか。ちなみに僕は全く知らなかった。この記事を書くためだけに調べた。おかげで少し勉強になった。

だが、この駅伝という競技を日本の中で有名にしているのは「箱根駅伝」であることに他意はないだろうし、有無を言わせないだけの地位を確立もしている

なぜなら、商業ベースで成り立っている大会だからだ。

「スポーツ」は結局「ビジネス」か

大学日本一を決める秩父宮杯全日本大学駅伝が大した世間的な注目を浴びることなく行われ、箱根駅伝は毎年大衆の耳目を集めるに至っていることの違いはなにか。

開催日時がそうだというのはもちろんそうだ。

正月という時期に行われるがため、TVの前に座っている、そうでなくとも自宅にいる人の数が多いが故に視聴率が高くなる。広告を出したい企業的にも露出の機会が増えるために出資をしたいと考える。

広告出稿に伴う条件面等を踏まえると、それほど簡単な問題ではないのは承知の上だが、単純に日本の中で行われる「駅伝」という競技の注目度を比較するとしても、箱根駅伝並みに注目を集めることが出来る大会は見当たらない。つまり、箱根駅伝が一強といえる状況。

その大会が魅力的だ、感動する、といったことで見たいと思える人が増えると共に、現地で応援をする人たちも多く存在する。

完全に横道にそれるが、沿道には毎年、フリーザが出てきては何かしらのパフォーマンスを繰り広げる様は、個人的にスゴく注目している。

現地への観戦者が増えるということは、映像を通して見る人達は、それを「盛り上がっている」と受け取る。その様子を見れば、広告出稿者としては露出したいと思える大会になる。すると、お金も集まる。

優勝したからと言って直接的な金銭が用意されるとは考えづらいが、注目度が非常に高いことは参加者である選手たちは理解しているし、そこが憧れの舞台になる。

結果、優秀な選手たちは、優秀な素養を持っている選手たちは、その憧れを目指す。結果的に、箱根駅伝が大学駅伝の中で最もレベルの高い大会になる。

この構図はUEFAチャンピオンズリーグとFIFA World Cupの関係によく似ていて、レベルが高いのはUEFAチャンピオンズリーグだ。だが、国同士の世界一を決める大会というのはFIFA World Cupとなる。

レベルの高い試合を見たいのであれば箱根駅伝だし、大学同士のバチバチしたやりあいをみたいのであれば出雲大学駅伝、ということだ。

サッカーのそれらとの大きな違いはマーケットの大きさで、サッカーはグローバルなコンテンツであるのに対し、駅伝は日本の身が対象となるローカルなコンテンツということだ。

消費されるエンタメで終わるのか

スポーツ観戦を「感情がかき乱される機会」と上で表現したが、僕はスポーツというものはそれが出来る立派なエンターテイメントだと考えている。

考えてはいるが、ただ消費されるだけのエンタメで終わってしまってはもったいない、とも思っていて、その「消費されるエンタメ」というのは感動の押し売り的なものを指している。

多くの学生スポーツはトーナメント制であるが故に「負けたらおしまい」だ。それを良くも悪くも利用しているのが今の日本における学生アスリートの試合を放映しているメディア。

僕は高校サッカー出身者だが、高校サッカーといえば箱根駅伝と同様に正月に行われる全国高校サッカー選手権大会が最後の大会になる。

地方大会でしのぎを削り、全国大会まで進みながらも、負けてしまったチームのロッカールームへ入り込み、涙を流しながら監督の言葉を聴く選手たちを映す「お涙頂戴劇」が有名だ。

そこで出た名言「大迫半端ないって」は今年行われた2018ロシアWorld Cupで日本代表を応援する言葉として浸透していた。

このお涙頂戴劇は、まさに感動の押し売りでしかない。

これで終わってしまうこと自体は消費されるエンタメとしての機能を終えれば、それでおしまいだ。なぜなら、その消費されるエンタメというのは毎年代替物が用意されてしまう消耗品だ。

冒頭で引用したプリンセス駅伝の煽り文は、まさに自らの立ち位置、つまりスポーツの捉え方を「消費されるエンタメとしてお届けする」という態度に見えてしまう。

なぜなら、明らかに感動を押し売りするような文言を選んで書いているからだが、書いている当人はそんなことは微塵も思っておらず、純粋に紹介しているだけなのかもしれないし、もしかしたら出身者なのかもしれない。

エンターテイメントの大前提は身体的・精神的な衛生状態が保たれていることだ。それでいうと今回のプリンセス駅伝内で起こったことは、選手たちの身体的な安全状態を保てていたとはいえない。

スポーツというのは環境があるものだから、屋外で行うスポーツは天候に左右されるというのはわかるし、厳しい気候条件のもとで行われることもスポーツだというのは理解している。

そして、選手の立場からみると同じチームに所属する選手たちに対する申し訳なさも含めると同情するが、そうすることが本当にチームの為になったのか。

そして何よりも、そこで倒れる選手に感情移入をさせようと意図することはエンターテイメントの提供者として、運営者はドラマティックな展開を「創ろうとし過ぎ」ではないか。

今回の件、是々非々が起こること自体は良いのかもしれないが、そもそもの在り方としてスポーツが消耗品コンテンツの道をたどることを許容すべきではないと僕は思う。

そして、それを脱却できないとダメなんだろうな、なんて遠くから無責任に言い放つ。

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