高校生と、高校生に戻りたい大人のための、英語塾。[初日]

世の中に英会話の教室や教材は溢れているけれど、英語の読み書きを楽に、しかも深く学べるものは、あまり見かけない。

英語教育は会話力に重点を置くべきであるというスローガンは、もう数十年前から主張されていて、そのせいか、他愛もない日常会話をいかにネイティブに近い発音で言えるかの訓練に多くの時間が費やされる。しかし思うに、日常会話に文化はあるのか?「郵便局はその先を右に曲って二つめの角です」とか「ジャネット、君の服のセンスは最高だね!」みたいなことを流暢に言えて聴けるというレベルに、外国語を学ぶ最終的意義はあるのか?人は日常会話で哲学を語ったりしない。哲学は圧倒的に、書かれたものの中にある。

読み書きを日本語以外の言語(とりあえず英語)で自由にできるようになるために、越えなければならない課題が二つある。語彙を増やすことと、長いセンテンスが読めるようになることだ。この二つを同時にクリヤーするために、ここではクラスターというものに焦点を当てる。ふつうそれは「フレーズ」と呼ばれているが、言語学上の制約を無視するために、わざと新しい用語を使う。クラスターはワードの集まりだ。ワードよりも長く、センテンスよりも短いという、中間的な性質をもつ。例を挙げる。

...operating within the traditional boundaries...(活動している、伝統的な枠組みの中で)

operating, traditional, boundaries, ... という単語を個別に記憶しても、使える記憶にはならない。あるコンテクスト(文脈)の中ではじめて単語は "活きた意味" をもつからだ。逆に言えば、ワードが活きた意味をもつ最小の単位、それがクラスターなのだ。

クラスターは他のクラスターを結合しながら延長され、段階的にセンテンスに近づく:

...operating within the traditional boundaries of architecture and urbanism. (建築・都市という伝統的枠組みの中で活動している)
...an international practice operating within the traditional boundaries of architecture and urbanism. (建築・都市という伝統的枠組みの中で活動する、国境を越えた実践)

最終的には、

OMA is an international practice operating within the traditional boundaries of architecture and urbanism. (OMA は、建築・都市という伝統的枠組みの中で活動する、国境を越えた組織である)

となる。英文を書くときの意識は、単語を連ねるのではなく、クラスターを連ねる。読むときには、単語に分解するのではなく、クラスターに分解する。数を重ねていけば、クラスターの切れ目が簡単に見えるようになる。このとき、architecture=建築、urbanism=都市文化 というワードレベルの対応は無理に覚えなくてもいい。

もう一つ。

...to domains beyond. (その先の領域に)
...applies architectural thinking to domains beyond. (その先の領域に建築の思考を応用する)
AMO, a research and design studio, applies architectural thinking to domains beyond. (AMO は研究と設計の両方を行なうスタジオで、建築の思考を建築という枠組みを越えて実践するものである)

こうして英語学習の「枠組みの中で」、現代の世界の都市・建築をデザインする OMA/AMO の存在を、「高校生と、高校生に戻りたい大人」のために紹介した。その先 "domains beyond" は oma.eu をご覧あれ。

------------

例文の出典:http://oma.eu/office

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?