流行ってないお店

いつ行っても空いてて、すきな席にすわれる。

群集がひとつのものに夢中になるとき、スポーツの大きな大会があったときや、流行映画のテレビ放映があるときや、驚くようなニュースが流れたとき、そんなときでも流行ってないお店では静かにいつもの時間が流れている。掃除されていない棚の上の埃もいつもどおりそこにあって安心させてくれる。

流行ってないお店は儲からない。声の小さな愛好家が気まぐれに小銭をおとしても店主の首は回らない。儲からないお店はやがて看板をおろすことになる。

「私はこのお店のことが好きです」と伝えることができたら、おとす小銭の枚数を増やしたら、一人で行かずに友人と出かけていたら、看板をおろす日は遠のくだろうか。

「繁盛店では味わえない静けさが好きです」だなんて失礼なことは言えるはずもなく、今日も小銭を何枚かおとして挨拶もせずにおじぎだけして店を出る。このお店のことが好きだ。

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