犬と月と小鳥のさえずり
光太郎には、秘密があった。
彼は中学一年生で、いま、ある場所に向かって土手沿いのサイクリングロードを走っている。自転車ではなく自分の両足で。冬の初めの夕暮れ時、彼の上気した顔は、どことなくうれしそうに見える。
夕方の土手はどんどん冷えてきている。彼の眼前には路上生活者が建てたと思わしき青いテントがある。中で何かがごそごそと動く気配がした。
出入り口らしい真ん中の隙間からひゅっと顔を出したのは、焦げ茶色の子犬だった。
光太郎はしゃがみ込み、両手を差し出して、その子犬の突進を受