『BLUE GINAT SUPREME』が最高すぎた

『BLUE GIANT』の続編。面白すぎてアプリに課金し、深夜3時まで読みふけってしまった。

本作は主人公である宮本大のヨーロッパでの挑戦を描いている。相変わらず、大は計画性に欠けるし不器用なのだが、必要だと感じたことを真っすぐに追及していく。

そんな大の成長劇だけでも面白いのだが、今作ではバンドメンバーと向き合い、化学反応を起こしていく様子が最大の見どころだろう。最初からウマがあっていたわけじゃない。それどころか最初のライブは大失敗。

そこからドサまわりの演奏旅行をしながらじっくりと相互理解を深めていく。バンドとして成長していくことの充実感、そして成功のカタルシス…最高のメンバーと共に、サクセスロードが開けてくるのだ。

こんなサクセスストーリーの快感に浸っているところでしかし、前作と同じ問題にぶち当たる。大は「バンドを解散したい」という気持ちに駆られるのだ。この旅の中で大は誰よりも大きく成長し、メンバーよりも高みに到達してしまった。だから成長には新しい刺激が必要だと直観してしまったのだ。

前作での解散は後味の悪いものになってしまったが、今回の解散に至る流れは素晴らしかった。そこには友情があり、エゴがあり、未練があり、寂しさがあり、尊重があった。読んでいて胸がいっぱいになる。

このあと、解散をかけたラストライブに向けての練習は壮絶だ。互いへの要求はエスカレートするし、罵り合いや殴り合いまで発展する。それは、メンバーが「大を引き留めるだけの演奏をしてみせる」と心に決めたようでもあり、大との最後の時間を味わい尽くそうとしているようでもあった。何より、あれだけ本心をさらけ出しあった後である、演奏への要求に配慮など必要なくなっていたのだろう。


この続編である『BLUE GIANT EXPLORAR』も楽しみだ。それと第一作が映画化しているはずだ。音楽ありで是非体験してみたい。

余談:NUMBER8氏について

Wikipediaで見ると、「原作・原案など」の欄に以下の記述がある。

「NUMBER8(story director)※9巻から

ストーリ漫画の、それも続編の9巻から原作の参入があるとは妙な響きである。しかも本作は、『岳』の石塚真一らしい作品であり、原作・作画体制ではなさそうだ。

気になって調べてみたところ、NUMBER8氏はもともと編集者であり、BLUE GIANTの立ち上げから二人三脚だったという。ほぼ日で二人がインタビューを受けていて、面白いくだりがあった。

石塚 プレイしてるポージングは、
できる範囲だと思うんですけど、
ただ、ストーリーメイクのほとんどは、
じつはNUMBER 8さんが背負っているところで。
糸井 おもしろいふたりだなぁ(笑)。
石塚 ぼく、ちょっと悔しいんですけど、
漫画を作るときにまず打ち合わせをするんです。
次の話どうするっていうときに、
やっぱりいいセリフを言った人が、
じゃんけんでいう「勝ち」なんですよ。
そのじゃんけんに、
ぼくはあまりにも負けつづけていて(笑)。
だからまあ、音楽シーンの絵は、
ぼくががんばらなきゃなってところで。

ほぼ日インタビューより

なるほど、このレベルでの二人三脚だったのか。それなら、彼が表に出ることを決意した時点で連名になることもうなずける。

このほぼ日でのインタビューはとても面白くて、石塚氏は本当に宮本大に似ている。物事に挑戦する態度は大そのものだし、物語を理屈っぽく組み立てる性分でもないようだ。そんな石塚氏だからこそ登場人物のスケールが出てくるのだと納得できるのだが、一方で読者目線をバシバシぶつけながら一緒に考えてくれる編集者でないと、読者がついていけない作品になっていたかもしれない。


どうでもいい話だが、以前に某漫画家がストーリー作りについてインタビューに答えたところ、その編集者がtwitterで「そこ考えたの俺だよね?」みたいなことをボヤキまくっていてとても嫌だった。

NUMBER8氏のようなレベルで作品に関わるなら名前を出してもらった方がいいかもしれないし、そうでないなら黒子に徹してもらった方が、自分は気持ちいいかなぁ。


※1作目の『BLUE GIANT』についての感想は、昨年末に列挙した中の一つとして書いてある。

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