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第3回)京都アニメーション作品の紹介〜土居豊の既出文章を無料公開 #prayforkyouani

(第3回)京都アニメーション作品の紹介〜土居豊の既出文章を無料公開中
#prayforkyouani

京アニ放火事件について、及ばずながら過去に京アニ作品について書いた文章を無料公開します。報道でそのアニメ作品の魅力が伝えられていますが、拙筆で少しでも京アニ作品を視聴したくなる方が増えることを願って。(逆もあるかもしれないですが)

※過去2回分へのリンク

第1回は、
⒈ 映画『涼宮ハルヒの消失』について
(土居豊『ハルキとハルヒ』より引用)
⒉ 「ハルキとハルヒ」刊行イベントでの、珈琲屋ドリームのマスターとの思い出
の2本です。

https://note.mu/doiyutaka/n/ndd22a826dea3#FiXO8

第2回は、
⒊ 「涼宮ハルヒ」の聖地・珈琲屋ドリームに、台湾からツアーが!『涼宮ハルヒ』聖地巡礼ツアー from 台湾
⒋ 土居豊 著『沿線文学の聖地巡礼 川端康成から涼宮ハルヒまで』より、「涼宮ハルヒ」シリーズの聖地について
です。

https://note.mu/doiyutaka/n/ne36cb44fed41


第3回は、

⒌ 映画『けいおん!』評

⒍ アニメ「けいおん!」聖地で軽音甲子園、とのこと

⒎ 「けいおん!!紬ゆかりのフィンランドとロンドン5日間」だって?

の3本です。



⒌ 映画『けいおん!』評
(元記事 2011年12月23日)

※『けいおん!』公式HP
http://www.tbs.co.jp/anime/k-on/


話題のこの映画は、アニメ映画ではなく、音楽映画、と思って観ると、素直に感動できると思います。
少なくとも、映画前半のロンドンへの卒業旅行エピソードは、テレビシリーズを観ていない人には素朴に?マークがつきそう。
そのあたりの予備知識なしでも楽しめるのは、なんといっても、ロンドンでの即興ライブと、帰国後の卒業ライブのシーンです。
ある意味、アニメだからこそ実現できた演奏のクオリティと、実写ではありえないハイレベルの女子高生バンドの魅力が相まって、見事な音楽フィルムとして結実しています。
特に、卒業ライブでの、観客の女子高生たちの自然なノリのよさ、リアルさの描写は、曲の魅力と、演奏の巧みさを最大限引き出していて、思わず立ち上がって一緒にステップを踏みたくなるほどの完成度でした。
このところ、ミュージカル映画の良作が少ない中、この映画は(特に後半は)稀にみる音楽性の高さで、すぐれたミュージカル映画に近いわくわく感を実現していると思いました。
しかし、この音楽映画としての作品作りは、近年、アニメ作品の多くに共通する魅力となっています。一例をあげれば、今年公開された『スィートプリキュア』でも、観客の子どもたちが客席で、プリキュアたちと一緒になって歌い、踊るような演出がされています。
『プリキュア』にしても、『ポケモン』にしても、子どもたちはごく自然に、アニメのキャラと一緒に歌って踊るようになりました。アニメ作品が、こういう楽しみかたを視聴者に提供するようになったのは、『涼宮ハルヒ』シリーズのエンディング曲が、「踊ってみた」という形でYouTubeで世界中の若者に受容されたことがきっかけだと思います。
アニメ『けいおん!』にしても、アニメ『涼宮ハルヒ』の文化祭でのステージがあって、始めて可能になった作品だといえましょう。
ともあれ、映画『けいおん!』は、普通のアニメ映画、あるいは話題の映画だと思って身構えて観るのではなく、心躍る音楽映画だと思って観ると、素直に楽しめる映画だと思います。
この映画だけは、大人数で、大入りの劇場で、できればみんなノリのいい観客たちと一緒に観る、そういうライブ感覚の楽しみ方をおすすめします。




⒍ 【アニメ「けいおん!」聖地で軽音甲子園、とのこと】
(元記事 2011年10月6日)


※記事引用
「けいおん!」聖地で軽音甲子園 11月に滋賀・豊郷町(2011年10月2日朝日新聞)

《アニメファンの「聖地」になっている滋賀県豊郷町の豊郷小学校旧校舎で11月19日、高校生バンドによる「とよさと軽音楽甲子園」が開かれる。旧校舎は軽音楽部の女子高生を描く人気アニメ「けいおん!」の舞台のモデルとされ、人口約7400人の町に年間数万人のファンが訪れる。
 大会会場はヒロインが劇中で演奏した講堂のステージ。昨年開いたアニメソング大会も盛況で、主催者は「いずれは軽音楽の聖地に」ともくろむ。》


このニュースが今朝のNHKで流れていました。テレビ画面で豊郷小学校の校舎をみると、あらためて「けいおん!」の校舎そのものですね。ロケ地だから当然なのですが。
しかし、それ以上に、さすがヴォーリス建築! とても小学校の校舎とは思えないエレガントさ、シンプルかつ絶妙のバランスで整えられたフォルムの美しさは、ため息ものです。こんな校舎で学べば、子どもたちの情操にはかりしれない影響があったでしょう。
この校舎、一時は、取り壊しの予定だったとか。よくぞこの歴史的遺産を壊してしまおうなどとしたものです。保存してくれてほんとによかった。
しかし、他をみると、古い学校の校舎は、日本の文科省の機械的なお役所判断で、耐震性を理由に次々取り壊されています。かくいう自分も、戦前の古い校舎がある高校で学びましたが、今は味も素っ気もない校舎に建て変わり、もはや母校という感じがしません。
豊郷小学校の校舎も、本当は、保存するのではなく、耐震補強をして小学校として使うのが、理想だと思うのです。現に、同じヴォーリス建築の校舎である神戸女学院の中高も、歴史的建造物を大切に使って学び舎としているのですから。無論、校舎の保存のためにお金がたくさんかかるのは当然ですが。
旧豊郷小の校舎が「けいおん!」のメッカとして末永く愛されるのは微笑ましいことですが、滋賀県知事か、豊郷町長の英断で、小学校の校舎として復活できないものでしょうか。おそらく文科省のうるさい規則が邪魔するのでしょうけど。

※写真は、同じヴォーリス建築の神戸女学院中高の校舎




⒎ 「けいおん!!紬ゆかりのフィンランドとロンドン5日間」だって?


《けいおん!!紬ゆかりのフィンランドとロンドン5日間》

さすがに、このツアーに行くファンはいるのだろうか?
もともと、女子高生の卒業旅行がロンドン旅行というだけでも、不景気の昨今、なかなかなさそうに思うが、そこはこのアニメの主人公の一人が超お嬢様だから、よしとしよう。
けれど、このアニメ人気に便乗した様々なイベントや商法の中でも、これはさすがに、ちょっと無理なプランではなかろうか?
などと、いらない口出しをすることもないのだが、昔からのアニメファンとして一言いいたいのだ。
アニメの中には、海外を舞台に描いているものが多い。「ハイジ」などの名作アニメシリーズはもちろんのこと、『ルパン三世 カリオストロの城』や、『魔女の宅急便』などの宮崎アニメにおける海外の架空の街は、作品のロマン性を見事に補完するものだった。
けれど、『けいおん!』の場合、なぜわざわざ海外に?という疑問を感じるのだ。
まあ、まだ映画が公開されていないのだから、これ以上は、観てから考えることにする。
けれど、どうせなら、日本人のファンを海外旅行に行かせる商法より、せっかく人気のあるアニメなのだから、海外のファンを国内の作品舞台に誘致するプランを考えてはいかが? 『けいおん!』の舞台として有名になった、ヴォーリス建築の豊郷小学校と京都観光のプランとか。
いや、もうそのプランはすでにあるのかもしれないが。



※過去2回分へのリンク

第1回は、
⒈ 映画『涼宮ハルヒの消失』について
(土居豊『ハルキとハルヒ』より引用)
⒉ 「ハルキとハルヒ」刊行イベントでの、珈琲屋ドリームのマスターとの思い出
の2本です。

https://note.mu/doiyutaka/n/ndd22a826dea3#FiXO8

第2回は、
⒊ 「涼宮ハルヒ」の聖地・珈琲屋ドリームに、台湾からツアーが!『涼宮ハルヒ』聖地巡礼ツアー from 台湾
⒋ 土居豊 著『沿線文学の聖地巡礼 川端康成から涼宮ハルヒまで』より、「涼宮ハルヒ」シリーズの聖地について
です。

https://note.mu/doiyutaka/n/ne36cb44fed41


次回は、

『氷菓』

についての記事です。




土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/