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京都アニメーション作品の紹介その1〜土居豊の既出文章を無料公開〜 #prayforkyouani


京都アニメーション作品の紹介〜土居豊の既出文章を無料公開中
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京都アニメーション放火事件について、及ばずながら、過去に京アニ作品について書いた文章を無料公開していこうと思います。
報道ですでにそのアニメ作品の魅力が伝えられていますが、拙筆で少しでも京アニ作品を視聴したくなる方が増えればいいな、と。(逆もあるかもしれないですが)


初回は、京アニの代表作といえる『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズと、映画『涼宮ハルヒの消失』です。
この作品について、筆者は2010年以来、主に原作のライトノベルと、作者の故郷である阪神間の風景描写に関する研究を続けてきました。


⒈   映画『涼宮ハルヒの消失』について
(土居豊『ハルキとハルヒ』より引用)

映画『涼宮ハルヒの消失』は、アニメ史上に残る名作となるだろう。たとえ原作が未完に終わっても、アニメ版が2期までで終ったとしても、『消失』を映画にしたことで、『涼宮ハルヒ』という作品の名は、長く残るに違いない。
映画『消失』は、予備知識なしに見ても、よくできた映画だった。なにより、完璧に描かれた高校の日常生活の描写は、出色だ。女子高生がはいているスカートの下のジャージまで忠実に再現している。風景描写は、見事に阪神間の日常の光景を感じさせてくれた。
逆説的だが、日常描写が完璧に仕上げられていたからこそ、時空改変という非日常へのスリップが、リアルに感じられたのだ。
映画の終りの方で、大人版朝比奈さんが言う、「この高校生活を懐かしむときがきます」というセリフは、原作にはない。平凡なセリフだが、時空改変をリアルに味わったあとでは、しみじみと胸に迫るものがあった。
つまり、あのセルフは、いかにも直球すぎて、クサくなるすれすれの言葉だが、非日常的な情況に追い込まれた主人公たちが、かけがえのない日常を懐かしむ思いを吐露する瞬間と重ね合わせてみれば、そこには作者が作品にこめた密かな過去への思いが透けてみえるのである。

※写真
映画『涼宮ハルヒの消失』公開時の映画館ポスター




土居豊 著『ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する』(大学教育出版 2012年刊)

http://www.amazon.co.jp/dp/4864291276/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1334231386&sr=1-1



※『涼宮ハルヒ』シリーズの場面としてアニメに描きこまれた西宮の風景






⒉ 「ハルキとハルヒ」刊行イベントでの、珈琲屋ドリームのマスターとの思い出
(2012年5月13日 土居豊ブログ記事より)


西宮北口の喫茶店・珈琲屋ドリームは、商店街に昔からあるレトロな風情の喫茶店です。


このお店のマスターだった故・細海さんの命日である今日、彼とご一緒させていただいたトークイベントを思い出しています。

http://ameblo.jp/takashihara/entry-11249206749.html#main


このイベントは、拙著「ハルキとハルヒ」刊行イベントとして、ジュンク堂書店西宮店で開催したものです。

※土居豊『ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する』刊行記念トークイベント
2012年5月12日(土)19:30~21:00
ジュンク堂書店西宮店内カフェクローチェにて


当時、健在だった細海さんにこの本を献本し、珈琲屋ドリームの常連客だった「涼宮ハルヒ」作者の谷川流さんについて、エピソードをお聞きしました。
このお店で、「ハルヒ」ゆかりの特集コーナーを設置し、管理していた「ちゃうけ」氏にも、このトークにご出演をお願いし、谷川流さんが「ハルヒ」作者としてデビューする前のことや、有名な作家になってからのこと、「ハルヒ」アニメ化のときの京都アニメーションスタッフ陣のロケハンについてなど、様々にお話を聞きました。
ちゃうけさんには、お店に「ハルヒ」コーナーを作った当時の事情や、その後のファンたちの交流について、詳しいお話を聞きました。特に、ハルヒファンの交流ノートの設置と、そこに書き込まれた外国からのハルヒファンのことなど、興味深いお話でした。
ちなみに、このファン交流ノートは、今もお店のハルヒコーナーにあって、海外から聖地巡礼したお客さんの書き込みも読むことができます。
さらに、これは内緒ですが、このノートの中のどこかに、谷川流さんの高校時代の先輩の書き込みもあるとのことです。

故・細海さんのトークがみれるネット動画が、以前はアップされていたのですが、いまはリンク切れになっているようです。







※2017年4月、移転前の珈琲屋ドリームで開催した「ハルヒ」読書会。



次回は、

⒊ 「涼宮ハルヒ」の聖地・珈琲屋ドリームに、台湾からツアーが!

を掲載します。

土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/