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「いざ!」ピントが合わない件

 最近は「マニキュア」とは言わないらしい。「ネイルポリッシュ」と言うのだ。足の爪だって「ペディキュア」なんて言ったらババア先輩お疲れさまです、だ。ちゃんと「フットネイル」と言うのだぞ。(発音は " F " だぞ)

  さて、私は毎日ネイルをするのである。爪がきれいだと、グレイヘアのおばちゃんでも「ちゃんとしてる感」を出せるからだ。とは言っても人目に付くほどの色は使わないので(もっぱらヌード系)、誰かに気づいてもらうためではなく自分自身の身だしなみ、ちょっとした「ときめき」のためにしているのかも知れない。こうしてポメラのキーボードを打っていても、爪がピカピカだと気分が上がるってもんでしょ。(生産性も上がってくれ)

 「え、毎日ネイルするの大変じゃない?」という人はたぶん、もう20年くらいネイルしてないんじゃなかろうか。我々が若かった頃と違って今のネイルはとっても楽なんですよ、先輩。「安い、速い、上手い!」品質が優れているので、ぶきっちょでも失敗しないし、速乾だし、OFFも一瞬だし。朝塗って夜落とすのもぜんぜん苦にならない。朝5分、夜1分の投資で済む。
 むしろ今どきのネイルは時間を掛けてはいけない。速乾なのでのんびりしてると乾いてしまう。やると決めたら「いざ!」、書道のように潔く筆を進めなくてはならない。

 ところがですよ。ひとつ困ったことに最近の私は「いざ!」ポリッシュを塗ろうとして刷毛を手元に近づけると、これがなんとピントが合わないのである。突然、ボケるーー。老眼か? 老眼だろうな。こればっかりはどうします? 老眼鏡てどこに売ってるんす? 眼科なの? メガネ屋さんなの? しまむらにもあるの? ないよね。

 私はこれまで一度もメガネを掛けたことがない。頭の悪い子あるあるで、勉強なんか大嫌いだったし、読書の習慣もなく育ったし、学校へ行っても窓の外の遠い山並みをぼーっと眺めているうちに一日が終わってしまうのであった。そんな私の取り柄と言えばまさに「視力が良好」ということだけしかなかったわけであるが歳を取るとその唯一の利点さえもが奪われてしまうのか。

 目が見えなくなったらどうなるのだろう。

 いつかはネイルも出来なくなるのだね。それどころか、自分で爪を切ることも出来なくなるんだろう。少し、怖い。

 最近スマホの広告に頻繁に出てくるのが、「介護される時のために永久脱毛しときませんか?」というやつだ。なんとまあ!
 でも確かになぁ。私は自然派を主張して、永久脱毛などしてこなかったし、すると将来、認知症にでもなったらムダ毛ボーボーのおばあさんになるわけでしょ。やっかいだな。

「でも老人がエステなんて行ったら全力でぼったくられるんだろうなぁ!」なんて思いながらスマホから目を上げる。するともう、悪い冗談のようにどこにもピントが合わない。世の中すべてピンボケ。本当に私が悪いのか? 世の中が腐っとるんじゃないのか? おい! そこの君! 老眼鏡がどこに売ってるか教えなさい!
(すでに老害もきてる)




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