ショドー

◆忍殺TRPG◆ 【ハーフ・ペーパー・アタック・ザ・アーバン・レジェンド・ベンディング・マシーン】 ◆ソロアドベンチャー・リプレイ◆


◆毒々◆この記事は先日ニンジャスレイヤー公式アカウントで開催された『ニンジャスレイヤーTRPG入門用ソロアドベンチャー:第2シーズン3回目:消えたヤクザと都市伝説』のリプレイ小説です◆羊毛◆

◆ハーフペーパー (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       2    体力        2
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        0      万札        4
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆家族の写真:【DKK】獲得をキャンセル(1/2の確率で使い捨て)
◆『ショドー十段』:各シナリオ終了後の評価タイムにおいて、このキャラはチームの報告書を
          自らのショドーによって提出したことにし、D6を振ってもよい。
          出目が6だった場合、チームの評価が1段階向上するが、
          出目が1だった場合は慢心による誤字を指摘され評価が1段階下がる
         (どちらの場合も評価リストの上限と下限を超えることはない)。

交通事故に遭って死に瀕していたショドー家の女に突如ニンジャソウルが憑依。
そのままソウカイヤに拾われた。カラテに乏しいものの頭の回転が速く、
モータル時代に培った高いショドーのワザマエを生かして組織の役に立っている。
一人暮らしだが生き別れの妹がおり、常に彼女の写真を懐に忍ばせている。

今回のソロアドベンチャーに挑むのは上記のハーフペーパー=サンです。ダイスを振って無から生成され、エネルギー問題の解決とかに貢献しました。

彼女は生い立ちスキルで『○ショドー十段』を獲得していますが、これはソロアドベンチャーだと活かす機会は無く、実際フレーバー程度のスキルと言えるでしょう。ちなみに「元ショドー家」という設定はここから生えてきたわけですが、「ショドーで生計を立てているプロのショドー家が十段ってちょっと低すぎるのでは?」という風に考えたので、ショドー三十段ということにしておきます。常ショドー十段の三倍のショドー段位です。スゴイ!

(上のイメージアイコン画像はPicrewの明日の着物で作りました)
ニンジャネームはショドーからの連想で半紙ハーフ・ペーパーです。

それでは早速プレイしていきましょう!

◆◆◆◆◆◆

この日、ハーフペーパーはトコロザワ・ピラーで普段通りのショドー作業に勤しんでいた。そこを恐るべきシックスゲイツのニンジャ…スカウト部門の筆頭であるソニックブームに捕まったのだ。「ソウカイヤ傘下にあるヤクザクランのケチな電脳薬物売人が、スラム地区の地下駐車場で突如消息を絶った」「はぁ…薬物売人の方が行方不明ですか…それはご愁傷様で…」

「何を他人事みてェなツラしてやがる。テメエが探しに行くんだよ」「エッ?私が?」「そうだ」「調査に?」「そうだ」「どうしてまた、私なんかに…」「本来ならもうちっとマシなニンジャにやらせるんだがな。あいにくどいつもこいつも出払ってやがる。それで日がな一日ショドーしてばかりのヒマなテメエに白羽の矢が立ったわけだ。ありがたく思えよ?エエッ?」

「そう言われましても…私は人探しなんてしたことがなくて」「だったらできるようになればいいじゃねェか。下っ端のテメエに拒否権があると思ってんのかコラー…?」ソニックブームは肩を怒らせて凄む…が、このハーフペーパーという女が見かけによらず動じない性格であったことを思い出し、ぽりぽりと頭を掻いた。「…チッ。心配すんな、ナビゲーションは付けてやる。わかったらサッサと行ってこい!」「ハイヨロコンデー」

◆◆◆

ヒュンヒュンと飛び回る赤色のAI搭載六面体型浮遊ドローンが、地下駐車場へ辿り着いたハーフペーパーの前に現れた。『安心してください。私がそばにいてナビしますよ』「一人じゃなくて良かったです」彼女はこのチイサイなドローンを頼もしく感じた。ミッションから無事に生還できたらこの子を文鎮に使ってショドーしてみたいと考えながら、周囲の様子を慎重に伺う。

「ギャハハハハ!」「イカチャン、オッキクネ」「誰でもいいからブッ放してェよォー」シャッター前にたむろする野良ギャングスタは10人ほど。そのどれもが銃で武装しており、危険である。ハーフペーパーはシャッターにスプレー落書きされた『バカ』『スラムダンク』などの文字に眉を顰めた。

ワザマエ判定。ダイス出目は[1,6,5,5,5] 成功!

「困りますね。イヤーッ」ハーフペーパーは気の抜けたシャウトと共に棒状の金属物体を投擲した。クナイ・ダートであろうか?否!「アバーッ!」「アイエッ!?」スプレーアートに勤しんでいた哀れなギャングスタの側頭部に突き刺さっていたそれは…文鎮である!頭骨陥没即死ナムアミダブツ!「ワッザ!?」「ダッテメッコラー!」突然の事態に動揺しながらもギャングスタ達は身構え、こちらに向かって歩いてくる女を見据えた。

「ドーモ、私はこういう者です」黒漆塗りのメンポと変形キモノめいたニンジャ装束を身に纏ったその女は奥ゆかしくオジギし、自身の名前がショドーされた半紙を広げた。これが彼女流のアイサツだ。したためられた『ハーフペーパー』の字は美しく繊細な筆致であり、ショドー三十段の彼女のワザマエを如実に示している。「ニンジャ!?」「ショドー、ナンデ!?」

無惨な亡骸に変わった仲間と突如現れたキモノ姿のニンジャ。恐るべき夜の怪物への本能的恐怖と、美しきショドーへの日本人的畏怖が混じり合い…「アイエエエ!!」ギャングスタ達は発狂し、叫びながら逃げ去った!「あら、お金が落ちているわ」ハーフペーパーはそれを気にも留めずに万札を拾い、汚れを払ってから自身の財布に収めた。『先を急ぎましょう』「はい」

『人の気配はありませんね……』「ええ…何か手掛かりがあればよいのだけど……」ハーフペーパーは周囲を見渡し、ネオンの光を失った前後ワゴンを目に止め、憂いを帯びた表情でほんの少し物思いに耽った。「………」

『ハーフペーパー=サン?』「!」モーターロクメンタイの電子音声が彼女を現実に引き戻した。「ゴメンナサイ、調査をするんですよね。では…」ハーフペーパーは懐から筆ペンと半紙を取り出した。最低限のショドー・セットである。だが、このような場所で?何をしようというのであろうか。

「……」『……』ハーフペーパーは筆を構えたまま瞑目し、微動だにしない。モーターロクメンタイは彼女を見守りながら落ち着かぬ様子で揺れている。やがて…「キ エ ー ッ !」『!』凛としたシャウトが地下駐車場内に響き渡り、ハーフペーパーの腕が恐るべき速さで振るわれる!ニンジャの速度だ!

ニューロン判定。ダイス出目は[5,6,2,4,5,6] 成功!

半紙に記されたショドーは…『自販機』である!ハーフペーパーは額の汗を拭って立ち上がり、駐車場の隅に並んでいるドリンク自販機へと近付いていった。そして…「これは!」『間違いありません。ソウカイヤ紋のバッジです!』ゴウランガ!自販機の前に光り輝くクロスカタナのバッジを発見!

このショドー占いがハーフペーパーの特技であった。彼女はショドー時の極度集中によって、無意識的かつ一時的にニンジャ第六感をブーストさせているのだ!その効果は実際100倍近い!「でも…なぜこんなところにバッジだけが?」バッジを拾おうと自販機の前に屈みこんだ彼女のニンジャ観察力が違和感に気付く。(このバッジ…なんだか濡れているような…!?)その時!

ニューロン判定。ダイス出目は[3,6,5,5,6,2] 成功!
回避判定。ダイス出目は[6,2,5,6,2,6] 成功!

シュシューッ!」自販機の取り出し口から飛び出した粘液塗れの無数の触手が、ハーフペーパーの頭を呑み込まんと襲い掛かる!「イヤーッ!」ハーフペーパーは間一髪でバック転を打ち、タタミ3枚分距離を取る!『これは!』ナムサン!自販機に潜む恐るべきバイオ生物、ベンダーミミックだ!

「シュシューン…」獲物を取り逃したベンダーミミックは悔しげに触手をくねらせる。住処であり狩りの道具である自販機の重量が仇となり、身動きは取れないようだ。「……」ハーフペーパーは慣れぬカラテを構えて警戒していたが、既に自身が安全な距離にいることを確認し、身体の力を抜いた。

ハーフペーパーは懐から筆ペンと半紙を取り出した。最低限のショドー・セットである。だが、このような状況で?何をしようというのであろうか。

選択肢は…

キエーッ!」「シューッ!?」彼女は瞬く間にショドーを書き上げると、巧みな指捌きでベンダーミミックめがけ半紙を投擲した!なんたる空気抵抗すら無視したニンジャ身体能力とショドー三十段の合わせ技イポンめいたワザマエか!ショドー半紙は粘液に塗れた自販機上部にピタリと張り付く!

そこに記されていた文字は……おお、ナムアミダブツ!『故障中』の三文字であった!「シュシューッ!?」ベンダーミミックの触手が激しくのた打ち回る!これは実際、彼あるいは彼女にとって死刑宣告である!誰がこんな場所の、しかも故障中の自販機に近付こうか。もはや獲物は寄ってこない!

>1・証拠は十分揃ったので、帰投する

「シュギューッ!」ベンダーミミックは知能が高い。必死で故障中張り紙を剥がそうともがくも、絶妙なコントロールで投擲された張り紙はその触手がギリギリ届かない位置にあった。「さぁ帰りましょうロクメンタイ=サン」『はい』苦闘するバイオ生物を尻目に、ハーフペーパーは帰路についた。

◆◆◆

「ドーモ、ソニックブーム=サン」「ドーモ、ハーフペーパー=サン。売人は見つかったのか、エエッ?」「それが…」ハーフペーパーは現場で見た物を事細かに説明した。売人は自販機に喰われて死んだ事。自販機の中に恐るべき怪物がいた事。そして自販機は『故障中』なのでもう安心な事を。

「……アー…まぁ、なんだ。慣れねェ現場仕事で疲れただろ。大体わかった。お前さんはこれでスシでも食っとけや」ソニックブームは怪訝な顔をしながらも彼女の労をねぎらい、報酬の万札を3枚手渡した。「ありがとうございます」ハーフペーパーは深々とオジギし、奥ゆかしく部屋を退出した。

「…自販機の中の怪物か」ソニックブームはヤクザソファにどっかと腰を下ろし、モノホシ・タバコの煙を燻らせながら呟いた。「クソ、思い出したくもねェ」彼自身のロクでもない経験がフラッシュバックし、その眉間の皺は更に深まる。「チッ…疲れてるのは俺様もか。オンセン休暇でも取るかね」

【ハーフ・ペーパー・アタック・ザ・アーバン・レジェンド・ベンディング・マシーン】終わり。

ギャングスタから、ソニックブーム=サンから3。合計万札:4獲得。


◆◆◆◆◆◆


【アパート・アンド・メメントス・シスター】


「…スズリ。お姉ちゃん、今日は頑張ったのよ」自宅として与えられているソウカイニンジャ専用アパートの一室で、ハーフペーパー…スミコは財布から取り出した妹の写真に語りかけていた。偉大なショドー家であった父に指導され、スミコスズリ、姉妹二人で仲良く墨を磨ったあの頃を思い出す。

成人してから、スミコは病死した父の跡を継いでショドー家に、スズリは家を出て小さなショドー教室の講師として働いていた。だがある日突然妹と連絡が取れなくなり、心配して尋ねてみても彼女は見つからなかった。風の噂では、務めていたショドー教室が潰れ、オイランに身を堕としたと…信じられなかった。

放心状態で道を歩いていたスミコは、そこが車道であることにも気付けなかったのだ。そうしてスミコは死に、ニンジャのハーフペーパーとなり、ソウカイヤクザとなった。愛する妹のスズリがどうなったのかは、まだわからない。

ゆえに彼女は毎日語りかける。たった一枚しかない、大切な写真に。
ゆえに彼女は息災を祈り続ける。たった一人しかいない、大切な家族に。

【アパート・アンド・メメントス・シスター】



 り。

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