見出し画像

書評 マエストロ・ガールズ~あたし今、コルネットに恋してる~

吹奏楽部。別名、文化系運動部。
私は中学で吹奏楽部だった。授業が終わればロングトーン、パート練習そして最後に合奏練習。毎年、夏にはコンクール。そんな部活生活をこの物語で久々に思い出した。

主人公の美香は高校2年生。吹奏楽部の顧問の先生に恋をしている帰宅部生。楽器の演奏経験はない。学校帰りに捨てられていたコルネットを拾ったところから物語は進んでいく。そのコルネットには紫乃という17歳で病死したコルネット奏者の霊が憑りついていて話しかけてきた。紫乃の望みは
コルネットを吹きたい
高校の吹奏楽部に入りみんなで練習して、コンクールに出る学校生活を送りたい
というものだった。
美香に演奏技術はないため楽器に憑りついている紫乃が演奏をする。美香は先生に近づけ、紫乃の願いもかなうし一石二鳥ということで吹奏楽部に入部した。

よくある青春部活物語だと美香は皆とぶつかり合いながらも成長しコンクールで優秀な成績を修め、紫乃は成仏していく。だが、この物語は違う。そして私の予想をいい意味で裏切ってくれる。確かに美香は紫乃とコルネットを通して音楽の世界に紆余曲折しながらものめりこんでいく。
幽霊になった紫乃の目的は何なのか。最後に生前の紫乃より美香へ手紙が送られてくることで明らかになっていく。

また、美香達がコンクールで演奏した行進曲「春」は2019年全日本吹奏楽コンクールで実際に使われた課題曲である。自由曲はエルガー作曲の威風堂々であり、吹奏楽経験者なら一度は演奏した曲である。作中に威風堂々の演奏の冒頭でこんな描写がある。

高らかな旋律はスタッカートとアクセントに彩られ、その行進の幕は切って落とされる。
中略
最初の五小節は多くの楽器で連符が続き、勢いのあるメロディーが八小節まで続き「poco allargando」、少しずつ遅くしながらも力強く。一度「f」に戻し、「a tempo」で元の速さに。

私の心は一気に中学時代に引き戻された。あり得ないことだが美香達と一緒に演奏しているような錯覚に陥る。目の前に譜面があり、音が聞こえる。曲の描写が終わると同時に演奏し終わったような感覚になった。
この作者は吹奏楽経験者なのか、でなくとも楽譜をみながら小説を書いたのかと思うぐらい曲の描写にリアリティーがある。

吹奏楽経験者は懐かしい気持ちになるし、そうでない人たちも音楽を楽しめる作品である。


執筆 Asami

〜小田桐あさぎ オンラインサロン 魅力ラボ 〜
仕事も、恋愛も、遊びも。
「自分らしさ」で全てを手に入れる

◆オンラインサロンのご案内
http://adorable-inc.com/miryokulab/

◆小田桐あさぎメールマガジン
https://55auto.biz/adorable-asagi/touroku/entryform2.htm

◆公式Instagram
https://www.instagram.com/miryokulab

◆公式Twitter
https://twitter.com/miryokulab

◆読書部Instagram
https://www.instagram.com/dokushobu1



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?