【書評】きりこについて ※ネタバレ、閲覧注意※


小説の書評を担当することが決まった時に、これだけは絶対に書こうと決めていた。

“きりこについて”

この本から私が読み取ったメッセージは

自分への判断を、他人に委ねてはいけないということ。

そして誰もがみな、唯一無二であること。


このふたつの強いメッセージを伝えるにあたって、ネタバレと刺激のある表現は避けて通れないので、予めご了承ください。




この本は、書き出だしから清々しい。

きりこは、ぶすである。


“ぶす”と言うパワーワードをきっぱりと言い切った後には、長々とした説明が続く。


誰かを、ぶす、と感じるのは人それぞれ、千差万別だから、こう、のっけから「ぶすだ」と断定するのは早急だし、きけん!なことかもしれない。でも、例えば百人の日本人、働き盛りの男の人、若いお母さん、やんちゃな小学生、照れ屋の中学生、大人ぶる高校生、年老いたジャズプレイヤー、フランスかぶれの女の人、メタボリックな社長、詐欺で身をたてている女、とにかくランダムに、できるだけまばらに、色んな人を集めて、その人たち皆にきりこを見てもらい、「どうか正直に言ってほしい」とお願いしたら、きっと九十七人、いや九十八人、もうちょっと頑張って九十九人、こうなったらやけくそで百人!は、「ぶすである」と、言うだろう。


なにこれ!面白すぎか!

もうこんなの反則だ!!!


この西加奈子ならではの独特なアプローチで、物語の主人公きりこがいかに“ぶす”かが、執拗に書き連ねられている。これは物語の終盤まで、ずっとだ。


そんな身も蓋もない!可哀想に!

と思われるだろうが、安心して欲しい。

そんな彼女の幼少期は、とても明るいものとなる。


何故ならばあなたが思ったのと同様に、沢山の大人たちが彼女を憐れむからだ。

「(こんなにぶすならば、さぞ友達もできなかろう)きりこちゃんと、仲良くするのよ〜」

という声を母親からかけられる子供たちは、彼女のルックスに驚きつつも素直に従い仲良く過ごす。


そしてなんと!あろうことか!

きりこ本人は自分自身を心の底から可愛いと思い込んでいるので、当たり前のように“可愛い子”としての振る舞いをする。(何故ならそれは両親に溺愛されて育ったからでもあるのだが。)

そのことに子供たちは多少の違和感を抱くのだが、それでもきりこの絶対的な可愛い(しかも仕切りたがりな女王様)ポジションは揺るがない。


何故ならば子供とはみな、酔っ払いみたいなものだからだ。

「うんこ」や「おしり」で盛り上がれる彼らは酩酊としている状態。

すなわち判断が甘いのだ。

(この酔いは11歳頃まで続くと記されている。)


そんな中、“在り方”だけは抜群に可愛い子然としているきりこに、多少の違和感は覚えつつも誰が疑いをかけるだろうか。


そうやって彼女は、“女子たちの圧倒的なリーダー”として君臨し続ける。



そう、みなが酔いから覚めるその日が来るまで、、




その日はきりこが11歳の時に訪れる。

ある男の子の一言がきっかけで、いよいよみんな気づいてしまうのだ。

今まで自分が抱き続けてきた「納得できない」感覚に、、、


そう!きりこは“ぶす”だということに!!!


それに気づいた日からみなは、急に彼女への態度を変えることになった。

こう書くととても陰険なように聞こえるが、きりこ自身も今まで横暴な振る舞いをしてきており、(それはつまり“可愛いポジション”にいたからなのだけど)その因果が回ってきたようなシーンと捉えることも出来た。


だがしかし、この時点でも彼女はまだ一体自分のどこが“ぶす”なのか、皆目見当がついていない。

何故ならそれは今までずっと“可愛い”と言われて育ってきたため、自分の顔のどこが“ぶす”に当たるのかが、本気で分からないのであった。


だがある出来事をきっかけに、きりこはようやく自分が“ぶす”だということに気付き、気付いてから程なくして、学校へは行かなくなり、そして拒食や過食など不安定な時期を過ごしてから、やがてかなりの時間を睡眠へ費やすようになった。



そんなある日、彼女は泣いている女の子の夢をみる。

そして、その子が近所に住む子だということは風の噂が届けてくれた。


その夢の中で泣いていた女の子は“ちせちゃん”といい、私が初めてこの本を読んだ(約10年前)時には、私は彼女の訴えの意味が全くもって理解できなかった。


そう、私の自己肯定感は圧倒的に低かったのだ!!!


全く共感出来なかったはずなのに、何故かふとしたときによく思い返したシーン。


恐らく自己肯定感が低いながらにも、自分に対し何かしらの違和感を感じていたのだろう。





きりこの元に届いた噂は、ちせちゃんがレイプにあったというものであり、それを聞くととても胸の痛む話なのだが、彼女がレイプにあったのは、出会い系で知り合った男と一緒にいる時で、それはつまり会うまでは彼女もその気だったのだが、生理がきたがためにその日はしたくなくなり、それを伝え「帰る」と言い、かなり抵抗をしたのに犯されてしまったという内容であった。(彼女の中のルールは生理の日にはしない。コンドームは必ずつける。)


うん、、、

はっきり言おう。

過去の私は完全に“自業自得だろ”と思いながらこのシーンを読んでいた。

ストーリーの中で噂話をしている人たちのリアクションも私と同じものだし、警察へ行っても相手にしてくれない。

実の母親ですら「家の恥やから、もう黙っててくれ」と言い出す始末。


そう、彼女は一人、猛烈な怒りと悲しみを抱えていたのだ。


それを察知したきりこは彼女と共に、「あなたの心を取り戻す会」というレイプ被害者の相談施設の扉をノックする。



ここ!ここからのシーンが本当に本当に大好きで、過去の私には全くもって共感できなかったシーンだが、今の私はちせちゃんの圧倒的に“自分である”ことを大切にする姿勢に、大きな拍手を贈りたくなる。



施設にいる人のリアクションも今まで関わってきた人達のそれと、結局同じもので、

“そんな状態なら仕方がない” “そんな服を着ているからだ”

まるでもっともらしい顔をして、正しい(ふりした)言葉を投げかけてくる相手に対し

「セックスが好きで、男の気を引くためでもなんでも、自分の好きな服を着て、自分の体を大切にして、、、」

と、説明し続ける彼女の姿をみて、今の私には胸に迫るものさえある。


そして最後にきりこがいう言葉が、過去の私に大きな気付きを与えてくれ、この本は確実に私の人生を変えてくれる一冊となった。


ちせちゃんは、ちせちゃんでおるだけやねん。他の誰かの真似をする気はないし、出来へんと思います。ちせちゃんはセックスが好きで(きりこは生まれて初めてセックスと言った)、いろんな男の人としたいと思ってる。でも、嫌や、て思ってるその瞬間に無理やりセックスをされたんやったら(これで、二回目だ)、それは、レイプやわ(言うまでもなく、これも初めて言った)。ちせちゃんは久方さんに慰めてほしいわけやなくて、心のひだつ、なんて言うてほしいんやなくて、勇気とか、そんなんもいらんねん。被害者なのに、隠れるようにせなあかんこと、恥ずかしいと思わされることに、腹立ってんねん。それと、セックス(この頃には、もうその言葉を口にすることに慣れてきた)をたくさんしてるから、体を大切にしてへん、のやなくて、ちせちゃんは、自分の体が何をしたいのかをよく分かってて、その望む通りにしてるんやから、それは、大切にしてる、ていうことやと思う。自分のしたいことを、叶えてあげるんは、自分しかおらんと思うから。」

注:久方さん=レイプ被害者施設の人

きりこは、すう、と息を吸った。
「自分しかおらん。」


そう、自分のしたいことを叶えてあげられるのは、自分しかいないのだ。


これを期に、彼女たちは決意する。

そしてその決意が、明るい光となり、物語は佳境を迎える。


そうそう!きりこの相棒、黒猫の“ラムセス2世”を通して知る猫の世界も、この本の魅力のひとつだ。



あとこれは西加奈子作品ほとんど全てにおいて言えることだが、彼女の描く主人公の親は子供を深く愛し、徹底的に信じている。

親という存在の在り方を、私は彼女の小説から深く学んだ。


、、、と

本書ひいては西加奈子の魅力は挙げだしたらきりがない!!!


もう、ほんと、これ最高だから!みんな読んで!


#さいご雑か



執筆:かすみん


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