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不届きな贈り物

気持ちいい春の風、
のどかな農地に佇んで思う、
都会こそが三密そのもの。
ここでは嘘のように
密閉も密集もしていない。

 きっとこれは何かの警告だ。
 イーロン・マスクみたいに未来を見ようよ。
 それともマスク二枚で
 僕らの耳か目でも塞ぐ気か。

     *

再エネの時代に高効率な石炭火力、
この期に及びこだわる再稼働、
不要不急の「お肉券」から始まった
前代未聞の汚職事件。

 果たしてこれは何かの比喩なのか。
 拭いがたい違和感とともに
 そろそろ僕らのポストに
 二枚のマスクが届けられる。

 ああ、溢れかえっているよ、
 配達し忘れていた朝刊のように
 今朝も何かが、僕の郵便受けに
 溢れかえっているよ。

     *

閉じ込められた者と
放り出された者、
どちらも回りものならば
目くじらを立て合う理由などない。

ウィルスに国境など存在しないのと同じように
この問題には国境も人種の別もなく、
すでに僕らは無国籍者だ。
 
 こんな息の詰まる時代に
 ユヴァル・ノア・ハラリの言葉は
 柔らかで美しいパスのように
 僕らの心に届けられる。

 こんなふうに僕も
 誰かに自分の思いを
 そっと届けたい。
 
     *

最高な頃合い、
きっと来ないことはない、
これでうまい具合に
口でも塞げばいいんだろう?
責任は取ればいいというものではないから
森羅万象、不用意なことを繰り返す。
のべつ幕無し、丸腰で生きてく僕らは
転がりつづける以外にない。

 きっとこれは何かの警告か。
 隠していたものすべてを明るみに出すように
 そろそろ僕らのポストに
 二枚のマスクが届けられる。

        (2020年4月10日〜26日)

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