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フジファブリックとの出会い

 フジファブリックというバンドに出会って、今年で10年になる。このバンドに出会って、人生が変わったと言っても過言ではないと思っている。
 もともと音楽は好きで、アルバムを聴いてゆるく追っているミュージシャンはいたけれど、全アルバムのCDをそろえたり、ライブのDVDを買ったり、年に何回かライブに行くまで追いかけるようになったのはフジファブリックが初めてだった。ロックというジャンルにこだわりは全然なかったのに、フジにハマって以降、ロックばかり聴くようになってしまった。

 きっかけは、母の友人からの紹介だった。母に勧めるつもりで送られてきたシングル「若者のすべて」がフジとの最初の出会いだった。一度聞いていきなりハマったわけではなく、最初は「あ、何となく好きかも」程度で、カップリングの「セレナーデ」は「拍子が複雑で難しそう」、そして「熊の惑星」に至っては「なんじゃこりゃ!」という感想しか持てなかった。
 そのあとYouTubeで何曲か聴いてみて、たしか「銀河」「虹」「陽炎」だったと思うが、「陽炎」が妙に耳に残った。もうちょっと聴いてみたいな、と思った。ツタヤで3rdアルバム「TEENAGER」と1stアルバム「フジファブリック」を借りて聴いた。「これは!」と思う曲がだんだん増えていった。

 そして「このバンドが好きだ」と思った決定打は、YouTubeにアップされていた「虹」の両国国技館のライブ映像だった。今ではお決まりの、間奏での全員のソロ回しがあり、それがものすごくかっこよく、なによりMVでは仏頂面だった志村がものすごく楽しそうに暴れていて目を奪われてしまった。動きはちょっと変だけど。
 メンバーにソロを振り、keyのダイちゃんをいじり倒し、ハンドマイクで腰に手を当てて、あの大きな目を輝かせて、楽しそうな顔で歌っていた。それを見て、ああ、なんて楽しそうなバンドだろう!と思ってしまった。

 両国国技館のライブDVDを買った。ライブの映像を見ることで、メンバーの顔と名前もだんだんに覚えていった。「蒼い鳥」ではギターソロが長くなっていて、エレキギターに特に興味がなかった自分でも「めちゃくちゃかっこいいな!」と衝撃を受け、初めて好きなギタリストができた。「陽炎」のキーボードの跳ねるようなメロディーのソロを聴いて、キーボードのいるバンドっていいな、と思ったし、「TAIFU」のイントロのベースソロにわくわくした。最初は「変な曲」としか思わなかった「銀河」も、いつの間にか大好きになっていた。

 初めてライブに行ったのは、2013年5月のVoyagerツアーのNHKホールだった。まだ3人で活動を初めて2年目だったため、3人体制で作った曲も少なかった。事前にアルバム「STAR」「voyager」もバッチリ聴いていたけれど、いざライブを見に行ったら、志村の不在を突き付けられるような気もして、ちょっとだけ不安だった。
 だけどいざ音が鳴り始めると、そんな不安は吹っ飛ばされるくらい、生の音に引き込まれてしまった。夢中になって音を聴いて、体を動かして、楽しいという感覚でいっぱいになった。最後に秋のツアーが発表され、帰りにフライヤーに書かれたツアーの日程を見て、どこなら行けるかな、と考えていた。その後、ワンマンツアーは必ず1公演行く、くらいの頻度でライブに通うようになった。
 残念ながら私は志村のいるフジファブリックを生で見ることはできなかったけど、こうして次のライブを楽しみにすることができる。それがすごくありがたいと思った。フジファブリックを続けてくれて本当にありがとう、と思ったし、それは今もことあるごとに感じている。

 こうしてフジファブリックに魅了されたまま、10年が経とうとしている。フジのおかげで初めてライブハウスに足を踏み入れ、もみくちゃになりながら無心で踊る楽しさを知った。新曲が出るのを指折り数えて待つワクワクを知った。音楽を鳴らしてくれることに素直に感謝の気持ちがあふれてくる、こんな気持ちを初めて感じた。ちょっと気持ち悪いことを言っている自覚はあるが、本当にそうなのだ。

 このご時世柄、ライブに行くことはなかなか難しくなってしまい、次にいつ彼らの演奏を目の前で見られるかわからない。わからないけど、見るまで絶対に死ねないなぁと思う。
 現フロントマンの総くんは、(普段は天然でよくわからない発言もあるが)バンドマンと思えないくらい非常に礼儀正しく丁寧な方で、ブログを読んでいると何とも言えず安心する。ライブに行けても行けなくても、置いて行かれるような気持にはならないし、自分は自分の生活をまず大切にして、状況が許せば行けばいい、と無理なく思える。そういう地に足の着いた愛情深いところが本当に好きだしありがたい。

 この先もこのバンドを好きでいれば、きっと楽しいことがたくさん待ってる、と思える。こんな時代に、こんな風に信頼できるバンドに出会えて良かった。

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