10月16日(金)日記

お金が無くなってきたので路上でベースを弾くことに。
難波や梅田でやるには少し自信がなかったので、南森町へ。

人通りの少ない良いところを見つけた。
たくさんの人に見られるのは恥ずかしいので、
金持ちおじさん1万円ぶち込み1点に賭けた。

到着して気付いたが、アンプを忘れてしまった。
忘れた自分に腹が立って
「あああああーーー!!!!!」と大きな声を出すと
人が集まってきてしまった。
小さい警察まで来る始末。

逃げるように場所を変更。
仕方ないが生音でやるしかない。

「弦太(げんた)」と書いた看板を立て、
1万円がぴったり入るケースを目の前に置き、
べんべんを始める。

4時間ほどした頃だろうか、
(実際は1時間しか経っていなかった)
高そうなスーツを着たおじさんが近づいてきた。

ここぞとばかりにべんべんアピール。

立ち止まるおじさん。

しばらく演奏を聴いていたおじさんが口を開いた。

「ボサノバいける?」

僕はよく分からなかったので
「今日はちょっと持ってきてないすね、家にはあるんすけど」
と答えた。

おじさんは
「はは…」とごっつい困った顔を見せたが
そのまま演奏を聴いてくれた。

しばらくすると、おじさんがスーツの内ポケットに手をかけた。
僕は財布が出てくると思い、演奏をピタッと止めて
生唾をゴクッと飲んでしまった。

おじさんが財布を取り出した。
僕は生唾をゴクッゴクッゴクッと一気飲みした。

おじさんが
「すまないな、今手持ちがこれしかなくて」
と言い、

4千円を渡してくれた。

僕は1万円が貰えるものだと言う思いと
4千円でもまあだいぶ嬉しいかと言う思いがぶつかり合い

歌舞伎役者が見得を切る時の顔をしてしまった。

画像1


そう、こんな感じだ。

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