CASE 3 Coff

 CASE 3 は、ベーシストDaBass改めCoff(コフ)さん。「どついたるねん」脱退後、2019年4月に初のソロアルバム『Tiny Music』の録音環境は、驚きの『THE 宅録』でした。今回は、レコーディングエンジニア(お世話係?)を努めた馬場友美さんにも同席していただきました。

暇さえあったらビート作り

− ソロ活動を開始後、初のアルバム『Tiny Music』リリースおめでとうございます!素晴らしかったです。早速ですが、Coffさんは普段、どんな感じで曲を作り始めてます?

Coff ありがとうございます!暇な時にビートをバーっといっぱい作っていて、その中から気に入ったものを拡大していくって感じですかね。

− じゃあ、リズムが先なんですね。

Coff そうですね。ギターを持って弾き語りしながらとかっていうよりは、雰囲気だけで自分が気持ち良いと思うビートを大量に作っていって、その中で気に入ったものに音を足したり引いたりして、最後に歌メロとか歌詞を考えてる。8小節くらいのループで入れたい楽器が全部入ってるものもあって、それを何個も複製して、そこから音色を抜いて、抜いて、抜いて、ここはちょっと足して、って作ってきます。

− あ、それは面白いですね。最初に全部の楽器を入れるんだ。

Coff そう、4分の曲にしようと思ったら、4分ぶんの8小節を複製して。アルバムの収録曲ほどんどがコードチェンジしてなくて、ボーカルで曲に展開をつける。

− メロディと歌詞だと、どっちが先ですか?

Coff うーん、メロディの方が先ですね。

− メロディをつける時はトラックを流しながら、歌ってみるとか?

Coff メロは鍵盤で考えます。ある程度雰囲気決めて思い付くメロディを、トラック流しながら全部ボイスメモで録って、録り溜めたものから良いのを使う感じ。R&Bとかって、オケを最初に作るんで、それに何個かっこいいメロディ思い付くかの勝負なんで、多分ああいうのって。

− それはCoffさん独自の解釈?

Coff 俺独自の解釈でもあると思うけど、でも絶対そうです!オケを作る人がいっぱい雰囲気の良いオケを作って、歌い手なり作曲家なりがそのコードで歌えるメロディをいっぱい作って、ブリッジのところだけ変えたりして、多分それで曲ってできてるんで。90年代のR&Bとか全部そんな感じですよ。俺あんまり邦楽は聴かなくて、作ったビートに洋楽っぽいメロディをつけて、最後に歌詞を乗せてます。

− そうすると歌詞のせる時大変じゃないですか?歌い方とか、言葉の乗る感じが日本語と英語だと全然違うので。

Coff そうですね。やっぱり日本語を乗せるとはまらない、イメージと違うってことは結構あります。でもその感じもいいのかなって思います。

どついたるねんをやってた頃は良くも悪くも面白さを出さなきゃいけないっていう使命感があったから、変な歌詞を書いたりしてたけど、今回は真剣に考えてみようと思いました。自信は、持ちたいけどまだ持てないですね。自分の歌詞に。けど書いてて、作詞って楽しいなと思いました。

馬場 なんか「成りきる」って言ってたよね?「死んだ友達がいる設定にする」とか。

Coff 最初は、このことについて書こうとか決めてなくて、パっと浮かんだ言葉をメモして、そのうちまた次の言葉が出てきて、何ワードか出てくるうちに頭の中で話が出来上がって、設定を作って、歌にしてました。

− Coffさんはベースプレイヤーのイメージだったんですが、前に馬場ちゃんから「Coffは最近ギターとかドラムも練習してるよ」と聞いたことあって。最初に始めた楽器ってなんですか?やっぱりベース?

Coff ギターですね。父親がずっとギターを弾いてたんで。

− へえ!ベースじゃないんですね。

Coff 親父がブルースとかソウル、R&Bとか好きで、最初「ギターやりたい!」って言ったらジミヘンを練習させられて、「Voodoo Child」って曲をひたすらやってた……(笑)
親父がレッチリのコピーバンドをやってたんですよ。それを聴いたら「ベースかっこいいな」と思ってベースをやりはじめた。

布団の敷けない宅録

− Coffさんの部屋(4.5畳ワンルーム)の写真を見るとかなり狭そうだけど、寝て起きたらすぐに楽器を触れるようにセッティングしてありますよね(笑)

Coff 一応すぐ触れるようにしてるっすね。アルバムは自宅で録音したんですけど、レコーディングするまでは寝床として布団一枚敷いてたの。けど布団敷いちゃうと、PC机の椅子が奥に入ちゃって、わざわざ布団畳まないと椅子に座れなくて。もうめんどくさいから、座りたい時すぐ座れるように布団を半分に畳んだままにして寝てるっていう……寝返りが打てない(笑)
楽器は、練習をしてるというより、練習って特に思ってるわけじゃなくて、なんか弾いちゃってる。一番良く手に取るのはギターか、ビートを作るものだったり。

− ビートは何で作るんですか?

Coff Ableton Live の 『DrumRack』っていうサンプラーです。そこに貯めたサンプルを落として、MIDIキーボードで鳴らしてます。ハイハットとかライドシンバルは打ち込みだと曲によってはダサいというか、だから部屋にある実物のハットとかシンバルを叩きながら、同時にキックとスネアはMIDIキーボードで打ち込むとかしてます(笑)

− えー!同時にやるのってすごいですね。写真でも、常にハットにマイクがセッティングされてる……。

Coff 思い付いた時にすぐ録れるようにしてる。他の楽器もラインとかマイクを予めミキサーにまとめてあって、録りたい時にそのチャンネルのスイッチを押したらすぐに録音できるようにしてます。

− アルバム制作中の自宅はずっとそんな感じでした?どの位の期間をかけて作ったのか気になります。

Coff 基本的にいつもそんなかんじですね。「どついたるねん」を辞めたのが、2018年の9月の終わり頃だったんですけど、そこからはちょこちょこ作り始めてました。

− アルバムの収録曲は全部、その期間中に?

Coff そうですね。でもビートの断片みたいなものは、それ以前にも作ってたのでいっぱい溜まってました。

− 断片多いと整理大変じゃないですか?一つ一つ聴き直して整理してました?

Coff そうですね〜。作りながら整理して、やってみて、うまくいかなかったらまた寝かせて、その間別のものに取り掛かる感じ。

でも曲の断片だけ作って寝かせるのって、後からその時やりたかったこととか和音の響きとか忘れちゃって「あれ、これどういう音の感じだっけな?」「このベースの音なんだったけなあ」ってなる(笑)

− それって、MIDIじゃなくて生音で録音してるからですよね。わからなくなるのよくわかります。

Coff わからないですよ。全部オーディオで録ってるから。

− MIDIが使えなくて、録り直し逃したところもあります?

Coff ありますね。音色変えたいけど、前の音色でのボイシングの感じが出ないから「やっぱり、そのままでいくか!」って諦めたり。MIDI覚えたいなあ……(笑)テンポよくいけないと、曲作りはテンポが大事なんですよね。だからソフトシンセやりたいなあ(笑)楽だなあって。でも多分俺のPC、ソフトシンセ使ったらすぐに止まるんで(笑)

馬場 無理無理無理(笑)


− あ、以前Coffさんに「メモリいくつですか?」とかPCのことについて質問した時「メモリってなんですか?」って言ってましたよね。PCは詳しくない……?

Coff まあ、PCっていうより、MTRだとしか思ってなくて。基本的に俺はPCに嫌われるタイプの人なんで(笑)ほんと嫌われてるんですよ。大事な時に動かなくなったり、トラックが一個だけ真っ白になって「トラックがありません」ってなって(笑)

− わかりました(笑)プラグインは『DrumRack』しか使ってないんですか?

Coff そうですね、でもそれも使いだしたの本当に最近で。それまでは一つ一つオーディオのワンショットをDAWに貼り付けていくっていう、めちゃめちゃ面倒臭いことしてた。でもそうしてると「これ違う。音楽やってる感じがしない!」って思って、色々調べた結果、Abeleton Live8の『DrumRack』を使い始めました。

− Abeleton Live8を選んだ理由は?

Coff どついたるねんの頃、ウガイくんが勧めてくれたんですよ。

破壊アリ!引き返せない忍耐レコーディング

− 馬場ちゃんにレコーディングエンジニアをお願いする頃には、もうアルバムの全体像は出来上がってたの?

Coff 「アルバムを作りたい」っていう気持ちはあって、それを何となくやりながら決めてました。馬場ちゃんには、早い段階からギターとかをラインで録るためにアンプに通す作業をお願いしたり、歌とかベースも録り直してもらったり。

馬場 ギターはお風呂で録った。もうそうするしかあの部屋で録る方法が無かったっていう。この人の家ワンルームだから。ユニットバスだし録音してる時はトイレ行けないんだよね。

Coff トイレ行けないし、シャワー浴びて12時間経たないと風呂が乾かないから、レコーディングが続くと風呂入れないですよ(笑)

馬場 Coffさんが風呂場の扉の隅に穴を開けて、そこからケーブル通して、アンプを風呂場の浴槽の中に置いて、下にも上にも360度布団をかぶせて、上にまた板をかぶせて録った。その中だけ、防音ルームみたいになってる。

Coff おすすめですよ(笑)ぜひやってみてください。布団もいつも掛け布団にしてるのを巻きつけるだけです。寝る時はまた寝る場所に戻す。

− めちゃくちゃ宅録ですね(笑)

馬場 けど穴開けたから、出る時はお金取られるだろうね。

Coff 一生いるよ、あそこに(笑)

− ミックスも馬場ちゃん?

馬場 ミックスは、1曲目をCoffさんがやってるよ。ミュージックビデオのやつ。まあ、歌のミックスだけ私がやって、Coffに投げて、オケと合体系。

− それは家で?

Coff そう、Windowsで。

馬場 残りの曲は私のMacでやったけど、作業はCoffの家でやった。

− それはなんで?

馬場 ミックスしてる横で、また新たな音源くれるから(笑)

Coff 横で編集作業してて、USBで書き出して「はい、このトラック追加」みたいな。

馬場 「ここの音色変えるわ」っていうやりとり。

− (笑)フルートは松村匠さんですけど、フレーズなどもCoffさんが考えました?

Coff あの人はもう天才なんで、うちに来てワンテイクくらいで。

馬場 一回聴いて、多分自分の中で起承転結考えて、よし本番やろう、できたーみたいな感じだった。

− それも風呂場?

Coff それは部屋で(笑)パーカッションだけはリハスタで録りました。シマダボーイ。

馬場 でも今考えるとパーカッションも家でやれたよね。

Coff やれたよね。

馬場 いけたいけた。

− (笑)

男気の再録、ちまちま作業

− 最終的に出来た歌詞の世界観によって、トラックの音を変更することはあります?

Coff ありますね。「ちょっとこの音のぶつかりは違うな」って直したり。アルバムの中の『サン』って曲とかは、楽曲の感じと歌詞が合わないかなって思って、鍵盤のボイシングを変えたりしました。

− その時はもう一回オーディオで録音し直し?

Coff 男気の再録ですよ(笑)

− なんかストイックなのが似合いますね……。マスタリングの前日に大きいスピーカーで聴いたら、低音が全然イメージと違って、急遽キックの音色を全部変えたと聞きました。

Coff はい。でも1曲だけですよ。

− 家でミックスをした時は、スピーカーもヘッドフォンも使ってました?

Coff 使ってたんですけど、低音の低音の部分が全然聴こえなくて(笑)でかい音で聴いたら「あれ、全然違げー!やばい明後日マスタリングだあ」と思って急いで変えた(笑)

− Coffさんの低音って、独特ですよね。クオンタイズとか使ってます?

Coff 使うけど、キックにはあんまり使わないですね。キックは手打ちで、ちょっと変なところとか気に入らない部分だけ直すくらいで。クオンタイズは、打ち込みでハット入れた場合に使います。

やっていて気が付いたのが、クオンタイズして、リズムはキチっとするんですけど、使ってるオーディオインターフェイスがポンコツすぎて、レイテンシーがすごい出ちゃって。生音で録ったものだけ必ずちょっと遅れるっていう(笑)さすがに気になって、バッファサイズでレイテンシーを抑えようとすると、PC一瞬で止まるから、弾いてちょっとずれてるのを戻してみたいな結構やってて……。

− じゃあ、あんまり直感的には録れなかったんですね。

Coff そうですね、そういう不本意なところもあります。

機材はどこから……?

− そのポンコツのオーディオインターフェイスは何ですか?

Coff それも馬場ちゃんから借りてるめっちゃ古い、TASCAMの8チャンネルある『Tascam US-1641』。

馬場 私が中古で買って、一回も使わずにこいつの家に行ったから(笑)

Coff もう一個インターフェイス馬場ちゃんから借りてる。基本的に自分の機材がない(笑)

馬場 ヘッドフォンでさえも私の。マイクもだね。(『SM57 beta』『Audio technica AT』)

Coff ほとんど借りてるよね(笑)

馬場 うん、だってウッドベースも私の。

Coff まだお金払ってないしね。

− それはレンタルってこと?

Coff レンタルですね、じゃあCoffの機材はレンタルだって書いといてください〜(笑)

− アンプも?

Coff アンプは俺のです。ヤフオクで買った『Ampeg J-12T』。

− キーボードやエフェクターも沢山持ってるみたいですけど、機材を買う時はどんな基準で買ってます?

Coff 「安いやつ」ですね(笑)ギターは楽器屋で試奏して、キーボードは、今って検索したら音色が聴ける動画アップされてるじゃないですか、それで選んでます。エフェクターは、基本的に「安くて良いものが欲しい」ってスタンスですね……(笑)音色でいうと、ぬくもりある温かい音が良いですね。新品の機材って買ったことない。買うのはヤフオクかハードオフが多い。

PCがもう限界!

− ミックスの時、プラグインエフェクトとか使います?

Coff リバーブとかEQくらいですね。

馬場 1曲目のミックスで「ここ直したほうが良いんじゃない?」って言ったら、CoffのPCが動かなくなって「もう何も触れません!」って(笑)

Coff 1曲に30トラックを超えちゃうと、Abletonの右上の「D」マーク(CPUの過負荷)が、再生した瞬間に光って再生が止まるから、リズム、上モノ、歌って、3つくらいにトラックを分けて書き出して、新しいプロジェクトで開いて、そこにまた音を足してたらまた再生が止まるようになって、それでまたそのプロジェクトを3つくらいに分けてまた新しいプロジェクトを……ってどんどん作ってたら、もう最初の方のデータに戻れなくなって直せなくなって(笑)

− PCを使ってるのに、テープMTRでピンポン録音してるみたいなものですね(笑)使い方がアナログ。

Coff だからそこらへん、もうちょっと勉強したいですね。

馬場 勉強じゃないよ(笑)

− まずパソコンを買い替えて(笑)でも、そんな環境でアルバム作っちゃったって、すごいですけどね。

Coff PC買い替えてもっと良い環境でやったら、音楽ももっと良くなりますよね?

馬場 広がるね(笑)

− その面倒臭い工程によってもたらされている恩恵も多分あるんでしょうけど。アルバムを聴いた感じと実際の制作環境にすごいギャップがあって面白いなあって。サウンド的な宅録感はあるけど、もっと全然ちゃんとしてる。

馬場 中村宗一郎さんに「4.5畳の音じゃないよ、これは」って言われたよ。「スタジオで録ったみたいだね」って。

− プレイがうまいですよね。ギターもうまい。

Coff ありがとうございます。それ本当に思ってますか?

− 思ってますよ(笑)

Coff ありがとうございまーす!!日々練習してるんで!!アルバムを作る上で、宅録感あんまり出したくないし、バンド感も出したくないみたいな、変なもの作りたいなって気持ちがあったんです(笑)その辺は、結構うまくできたかもと思いますね。

− 今後の課題とか、あります?

Coff 今後の課題は、PCとオーディオインターフェイスを変えて、MIDIを覚える!




Coff(コフ) 1991年9月27日生まれ。岐阜県中津川市出身。父親の影響で中学頃からブラックミュージックに興味を持つと同時にギターを始める。大学進学とともに東京に上京。20歳の時にたまたま友人のイベントに出演していた「どついたるねん」というバンドに衝撃を受ける。以後熱心にライブに通うようになり、2012年春、「どついたるねん」にベーシストとして加入。2018年の脱退までに、「Such a sweet lady」「アメリカ」「Freedom」などその他多くの人気曲を手がける。2018年10月、自身の音楽を追求したいという理由で脱退を発表。脱退から半年、DaBassからCoff へと改名し、自身初となるソロアルバム「Tiny Music」を満を持してリリース。https://mastercoff.wixsite.com/coff


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DONCAMATIQ

音楽制作の多種多様なあり方を模索する。 インタビュープロジェクト「DONCAMATIQ(ドンカマティック)」
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