CASE 1 菅原慎一(シャムキャッツ)


 CASE 1は、ロックバンド「シャムキャッツ」のギタリスト・菅原慎一さん。菅原さんはシャムキャッツ以外にも、「菅原慎一BAND」でソロ活動を行なっています。バンド活動とソロの違いも気になるところ。多作な菅原さんの制作スタイルについて、たっぷりと伺いました。(※このインタビューは2018年夏に行われたものです)

iPhoneでOK!

−  菅原さんがどんな環境で制作を行なっているのか、とても興味があって。自宅には、作曲用のスペースや作業部屋ってあるんですか?

菅原 作業部屋は一応あるんだけど、カセットとCDとレコード、楽器とか服しか置いてない(笑)だから最近は、リビングでくつろぎながらiPhoneで作曲する感じになってる。ただ、iPhoneは細かい打ち込みができないから、PCに入ってる『Studio One』でもやるけど、最近はもう、面倒臭いからほとんどはiPhoneでやってるかな。

マイクもiPhoneの内蔵マイクで録ってます。iPhone用にオーディオインターフェイス『TASCAM ( タスカム )  iXZ』も持ってるけど、iPhoneのマイクで録音した方が音が良いんじゃないかって思う。

− iPhoneはステレオでも録れますよね。背面にマイクがついてて。

菅原 そうそう。

− 1曲のデモを完成させるのにかける時間って、平均どのくらいですか?
 
菅原 このくらい絶対にかかるとかはなくて、かけようと思えば時間はいくらでもかかる。一人でやってると終わりが見えないじゃないですか。だけど、10分前後位で作る時もありますよ!昨日、シャムキャッツでプリプロをやったんだけど、そこへ持っていった曲は起きて10分くらいで作った曲で。アコギ2本と歌しか入っていないような超短いやつだけど……。

− できた曲の確認ってどうしていますか?ヘッドフォンで聴くのか、部屋でスピーカーから流して聴くのか。

菅原 江本くん(Enjoy Music Club)から譲り受けたお下がりのスピーカーがあるんだけど、曲を作る時には使わないなあ、一切。ヘッドフォンだけです。スピーカーを使わないと本当はだめなんだろうけど。それに、置いてあるとかっこいいよね(笑)作業部屋は角部屋で、下にも人が住んでないから、住み始めた時は音を気にしなくても良いことが気に入っていたけど、曲を作るのは基本的に深夜だし、スピーカーから音出すのも億劫になっちゃって……。

− スピーカーでの確認は、音を出しても良い整った環境か、音を気にしなくてもいいラッキーな場所でないと難しいですよね。

菅原 深夜か移動中に曲のイメージが浮かぶんですよ。だから作業が深夜になることが多い。移動中っていうのは、行き詰まった時に歩くようにしていて、そういう時とか、乗り物に乗った時に創作意欲が湧くことがあって。

でも、それを家に帰って形にしなきゃと思うと、着いた時にはだいたい忘れてる。これはあるあるだと思う(笑)あ、それもあって、俺はiPhoneになったのかもなあ……。移動しながらでも気軽にアイデアを吹き込めるから。

ちょうどいいコンプ感

− ミックスはどうしてますか?ミックスまでiPhoneの中で完結します?

菅原 するする、簡単なものだけど。iPhoneのコンプ感とか結構好きで。
DM1(リズムアプリ)』でリズムを組んだものを取り込んで、iPhone用オーディオインターフェイスにマイクを刺したり、ベースもラインで刺したり。ベースを打ち込むのは面倒くさいから(笑)。簡単なフレーズを弾いて、それを元にバンビ(シャムキャッツ/菅原慎一BANDのベーシスト)にスタジオで作ってもらってます。ドラムは打ち込むし、手で叩いたりもする。でも、このiPhone用のオーディオインターフェイス、よくわからないんだよね、使い方……。でもiPhoneはアイデアを思いついたらすぐ録音できるのが良い。ボイスメモは大事なツールだし、最近は紙のノートも使ってないかも。全部アプリのメモ帳で書き留めてます。

− iPhoneで作品を作るミュージシャン、今は多いですよね。つい最近PCとソフトがあれば色々できることに感動していたはずが、今は携帯電話でできちゃう。PCが無くてもできるってすごい。

菅原 『Garageband』のコンプ感って、結構好きかもしれない。良い機材でパッと録った音って、高音質だけどちょっとスカスカな気がしない?でも『Garageband』は勝手にマスタリングした音みたいになってくれる。そのごまかし感が俺は好き(笑)

− 販売している作品も、『Garageband』が勝手にマスタリングしたような音のまま、ですか?

菅原 それは『Studio One』でなんちゃってマスタリングする感じです。マスタリングは詳しくないし、自分でやったことがなかったから、フリーソフトでマスタリング用のソフトを落として、それをかけたりして。

− 菅原さんは、何から作りはじめますか?メロディー?歌詞?

菅原 締め切りがある時は、ギターを持ってコードを鳴らしながら作ることが多いんですけど、俺の経験だとそれだとあんまり良いもの出てこなくて。納得できる良い曲ができる時は、だいたい歌詞とメロディーが一緒に浮かんできますね。ワンフレーズとかだけど、それを基に拡張していくような。

− ギターを使って作曲してるんですね。キーボードとか、それ以外にはありますか?

菅原 アコースティックギターを使って始める時もあれば、歩いてて浮かんだ歌詞やフレーズをiPhoneに鼻歌で吹き込んで始まる場合もあるし、キーボードやカシオトーンで作ることもありますよ。

− キーボードも弾けるんですね!子供の時に習っていたとか?

菅原 全くやっていないです。「Let It Be」が弾けるくらい。母がクラシックバレエの先生だから実家にピアノがあって、ピアノの曲もよく家で流れてて馴染みはあったけど。

− でもシャムキャッツの曲でキーボードを弾いてますよね?

菅原 でもそれは、2014年に制作した「After Hours」から。「After Hours」は、主に夏目(シャムキャッツ)が曲を作ってたんだけど、アルバム全体に〈ネオアコを再構築する〉っていうコンセプトがあって。
ネオアコの名盤を聞き返すと、リードギターがあんまり入っていないんです。リズムで押して、パーカッシブな音が鳴っていて、という……。それで俺、何をやろうかって困っちゃって、ちょうどその時に、ウミネコカレーの店主 古里さんからキーボードを貸してもらったから、それを使って自分で適当にフレーズを入れてみたらぴったりで。だから「After Hours」の曲には結構キーボードが入っています。
『カシオトーンCT−403』に入っているリズムボックスの音も使ったりしてる。最近は、ヤマハの『DX100』を買いました。

− エマーソン北村さんも使っている名機、あれいいですよね〜。

− そもそも、菅原さんが曲を作り始めたっていつごろなんですか?

菅原 うーん、何となく高校生の時から曲を作ってたんだけど、誰にも聴かせてはいなくて。シャムキャッツを始めた時も、夏目に「菅原、曲書かないの?」って聞かれて「いや、書いてるよ」って言いながら、数年はまったく出さないような感じでした(笑)自信が無くて、しかも俺は夏目をすごく信頼してるから、「もうこいつがいるから自分はいいや」っていう気持ちが強くて……。最近は自信の無さも消えてしまって、逆に迷惑がられてるんじゃないかな(笑)

− 何かのインタビューで、夏目さんが「菅原くんが曲を書いてくれたことで、自分の負担が軽くなった」と言ってましたよ。

ひとりの良さとバンドの良さ

− 菅原さんは、周りのミュージシャンの作曲方法について、気になること、疑問とか、知りたいことありますか?

菅原 ありますよー。ストイックにひたすら試行錯誤して曲を書いている人が、どんな方法で作曲してるのか教えて欲しい。俺はそういうのだめで、チャーハンを作る感じというか、ちゃっちゃっと作って、「ああ、こりゃだめだな。よし、もう一回やろう」っていう作曲のやり方だから。でも多分それが許されるのって、バンドがあるからなんですよね。曲の断片を持っていける場所があるから。

− あーなるほど。確かにソロとバンドは違うかもしれないですね。

菅原 シャムキャッツは、ライブスケジュールとかツアーの予定から逆算して、この時期にこういうアルバムを出そうとかを決めて制作するから、曲が溜まって「じゃあアルバム作ろうか」というのではなくて。バンドのフェーズを先に決めてそれに向かって曲を作ってます。バンドのために作らなきゃって作り始めるけど、そういうのとは別次元でソロはやっていますね。

− バンドの中には、それぞれのモチベーションもありますもんね。

菅原 バンドの曲は皆の総意が入っているから、エゴで「自分がやりたいことはこれだ!」というのを出すのとは違うので、4人で演奏する意味みたいなものがあると思います。ソロはそれもないし、何も考えず好きなように作れる。

伝え方の工夫

菅原 ちなみにメンバーに作った曲を持っていく時は、曲の構成表を『illustrator』で作ってます。四角の枠を組み合わせて、そこにコードの流れや展開のイメージなどを書き込んでいくもの。曲によって枠の形やフォントも変えたりして、一応ちょっとこだわってる。

− これ、すごく面白いですね!

菅原 (例を見せながら)この曲はピアノで作って、それから自分でコードを調べた。「ピアノで弾いた時のコード感はこんな感じだよ」ということを、バンビと夏目に説明するために作った。和音のニュアンスを大事にしたかったから。でもバンビがこの進行表を見てすぐに「あ、ここ間違ってるね」って(笑)
皆で一曲完成させても、元々を作った本人が責任を持たなきゃいけないから、皆で練った後の展開をもう一度進行表に書き込んで、スタジオに持っていったりしてます。

− 普段聴いている音楽やその時の気分で「こんな感じの音楽を作りたい」とか、テーマを決めて作ることってありますか?

菅原 ありますよ。けどだいたいできないの。そういうのって真似はできないから、「こういう雰囲気とかいいなあ」と思って自分で想像ながらやるんだけど、結局、終わってみたら毎回「あれ?」みたいな (笑)

4枚目のソロ作品「4th DEMO」は、ほぼ全てホテルで作って録りました。バンドのツアーを回ってる時に、空き時間が結構あったから、それをテーマにしようと思って、『STEINBERG ( スタインバーグ ) UR12』(オーディオインターフェース)とノートPC、ライブで使ってる機材を自分の部屋に持ち込んで、夜打ち上げを早く抜けて一人で。

− 面白いですね、ホテルで録音というのは。

菅原 ジャケットは、インド旅行へ行った時に泊まったホテル。




菅原 慎一 千葉県出身。バンド「シャムキャッツ」でリードギター等を担当。自身の作詞曲ではボーカルもとる。個人活動としてこれまでに4作のデモCD音源を発表。「菅原慎一BAND」名義でも活動中。カレーとカセットテープが大好物。選曲、執筆、DJ、映画音楽制作なども。https://someedosomeedo.wordpress.com


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DONCAMATIQ

音楽制作の多種多様なあり方を模索する。 インタビュープロジェクト「DONCAMATIQ(ドンカマティック)」
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