コーヒースタンドの店主が初めて開催したマーケットイベント。そこで起きた事と感じた可能性。

こんにちは。京都東山にある『Dongreeコーヒースタンドと暮らしの道具店』の店主、柴崎友佑です。
私は普段はお店では、「コーヒー」だけじゃなく「暮らしの道具」も扱うお店であることを伝えるように意識していますが、やはり日常的に楽しめる嗜好品であるコーヒーが顔となり、「コーヒースタンド店主」と呼ばれることが多いです。最近では抵抗は少なくなったものの、やはり自分としては「コーヒーだけじゃないんだよ伝えたい事は」という気持ちも心のどこかで燻っております。燻らせているうちは、まだまだ努力が足りません。
(※詳しくは別ノート『手しごとで暮らすという仕事』を参照いただけると幸いです。)

そんな"コーヒースタンド店主"が、店舗オープン3年目の2018年に、3つの野外マーケットイベントを主催することになりました。

『Dongree Camp Market in 雲ヶ畑』(3月)
『Dongree 地蔵盆Market in 池殿町』(8月)
『Dongree SpecialFood Market in 新大宮広場』(11月)

マーケット開催に至った経緯はそれぞれの場所で違いはあるものの、根本的な動機としては、『手しごとのマーケット作り』がDongreeのテーマであったからです。

東山の店舗で日々行っている事は、そのマーケット作りのための土台固めのような活動で、

「どうすれば手しごとが生活として成り立つんだろう」
「どんな場所があれば、手しごとで生きる人が増やせるだろう」


そんな事をいつも考えながらお店を続けていました。

そうこうしながら約2年が経とうとしていたある日、初めてのイベント主催の機会が訪れます。

ある方からのお誘いで、京都鴨川源流の里「雲ヶ畑」という地域を知り、そこでイベントを行う事になりました。
その人はかねてよりDongreeの理想が、街から離れた地域での拠点づくりだと理解してくれていた人で、「雲ヶ畑でなら、何かDongreeが思っていることが出来るかも」と、紹介してくれたようです。

そして出会ったのが、その雲ヶ畑地域の中でも最奥にあったある広場。

その広場の名前は「友(とも)広場」

「友達がたくさん集まる広場にしたい」という想いのもと、所有者である波多野友治さんの友の字から取って名付けられたという広場は、地域の方が時々グランドゴルフを楽しんでおられる、普段はひっそりと佇む広場でした。

特にその広場を最初から指定されていたわけではなかったのですが、初めて雲ヶ畑を散策し、何気なく立ち寄り一目見た時に、何か吸い込まれるような、大きな流れのようなものを感じました。
「こんな広い場所でイベントをすることが出来たら何かが起こりそうだな」と、なんの根拠も、経験もないのに、得体の知れないワクワクに囚われていたことを今も覚えています。

それからは突き動かされるようにイベント実現に向けて動く事になりました。

まずはどんなイベントにするか。

これは普段からお店でいつも考え続けていたことでもあるので、すぐに決められました。

テーマは『手しごとと人の繋がりによるマーケット』
その名もDongree Camp Market in 雲ヶ畑

普段暮らす町から少し離れた場所で、いろんなアイデアを持ち寄って、「新しい人・モノ・価値観に出会う1日」
お店もお客さんもみんなでキャンプに行くように、マーケットを興しに行く。
普段感じている事、大事だなと思っている事、それを具体的な形にしにいく「お披露目会」のような気持ちで、コンセプトも固めていきました。

集まる「手しごと」。 2年間の縁と新たな出会い。

イベントを始めるにあたって最初に必要なのが「出店者」の募集。
人の繋がりを大事にしたイベントにしたかったので、普段親交の深い京都の個人商店主たちや、商品を卸してくれている個人作家さん達など、「信頼できる手しごとの仲間たち」に声をかけまくりました。
ただ最初は正直不安でした。
どれだけの準備が出来るかも、お客さんが来る保証もない、誰も行った事がないような山奥で、どんなイベントをするのか?ちゃんと参加者は集まってくれるだろうか。だって声をかけた人たちは全てその職業で生きる「プロフェッショナルたち」でもあったから。

けど、そんな不安もよそに、多くの人たちが参加を決めてくれました。
そしてその人たちに呼応するように、新たな出会いが次々と生まれ、食・モノ・音楽・体験、いろんなアイデアを盛り込んだイベントの骨子が出来上がっていきました。

同時に雲ヶ畑の方々とも直接会い、会話を重ね、徐々に会場設営に必要な木材の協力や、電気などのインフラの提供などをしていただけるようになったり、雲ヶ畑地域で活動するボランティアチームや木工作家さんと知り合ったりと、少しずつ縁が広がっていきました。
さらに、休校となっていた雲ヶ畑小学校の校歌を演奏しようという企画を立ち上げたときは、演奏してくれるミュージシャンと一緒に楽譜探しに雲ヶ畑の家々を奔走し、その過程で多くの雲ヶ畑の方と知り合え、そして校歌だけでなく、別の伝統歌の楽譜が手に入ったり、行く先々で、必要な人やモノに出会い続けました。

何か鴨川源流の元に、あらゆる力が集結していくような、期待とも不安とも取れないような不思議な感覚の中、イベントの成功ためだけにただただ動き続けていました。
とても長い時間をかけたような気もするのですが、イベント開催が決まってからわずか2ヶ月間でのことでした。

↑椅子のための丸太木を切り出してくれる雲ヶ畑の木こりさん達

一番の支えはやはり「お客さん」

そして僕が何よりもこのイベントの誇りだと思っている事が、お客さん達によるボランティアチームの活躍。
初めてのイベント主催、どれだけの人が参加してくれるのか、どれだけの人を集められるのか、音楽も取り入れたいけれど演奏する舞台は用意できるのか、そもそも公共トイレや電気もほとんどないような山奥で、交通機関も無し。未知数すぎる課題の山を前に、なりふりかまっている場合ではなく、声の届く限りの人たちに協力をお願いし続けました。その主だった顔ぶれは、普段お店では「お客さん」として接していた人たち。

あるお客さんは、私の代わりにバス会社との交渉をしてくれ、ある人はそのバスチケットの移動販売をする。
またある人は交通整理の予習として会場である広場に下見へ行ってくれたり、チラシを積極的に配ってくれたりと一丸となってイベントを盛り上げようとしてくれました。

さらにイベント後日談ではありますが、当日参加していた雲ヶ畑地域の人たちから、ボランティアチームの皆さんの働きが本当に素晴らしく、気持ちよかったと絶賛の声もいただくことが出来たほどでした。

そうして実際に動いてくれる頼もしさもありがたかったのですが、何より支えとなったのが、私が不安に押しつぶされそうな中、相談できる人たちが何度もお店に足を運んでくれたこと。

実は何度かイベントを諦めそうになった時、心の大きな支えとなってくれたのはお客さんの存在でした。

そして迎える当日。そこで生まれた「ちょうど良い規模とちょうど良い距離感」

そしていよいよ当日を迎えます。絶好の天気にも恵まれ、麓では桜が満開。前日までの不安が嘘のように消え去り、ただただイベント成功の確信のもと、早朝の雲ヶ畑へ出かけました。
そして無我夢中で準備に取り組み、迎えた初の主催イベントは、拍子抜けするくらい自然に、あっという間に会場が出来上がり、いつのまにかお客さんで満たされ、完成していました。
全く実感がない。無いんだけれど、みんなが楽しそうに過ごしている。行き交う人たちが「ありがとう」や「楽しい」と声をかけてくれる。

交通機関がシャトルバス限定になったことで、バスが到着するごとに確実に増えていくお客さん。そして最終便を迎えた正午ごろ、集った人たちの数がピークに達した時、広場がまさに「ちょうど良い規模」で満たされました。
多すぎず少なすぎず。思い思いに興味の惹かれたお店や作家さんとのコミュニケーションを楽しみ、思い思いに演奏されるミュージシャンの音楽を楽しむ。
普段町で会う人とも、普段とは違う山奥で顔を合わす事で、改めて交わされる会話も新鮮。

携帯の電波が届かないという不便さも、スマホを見ずに目の前の人とモノを楽しむモチベーションとして活き、会場が一体となるグルーブ感。
京都市内から車で30分、街から遠すぎず近すぎず、雲ヶ畑の「ちょうど良い距離感」がこの空間を作り出してくれたのだと思います。

お店を通して常に目指し続けている「ちょうど良い規模と距離感のマーケット」が、いつの間にか目の前で繰り広げられていました。

良いマーケットはデザインするのではなく、繋ぐだけでいい

私は当初店主として主催者として、イベントをしっかり作って、出店者もお客さんも『お迎え』するつもりでいました。
けれど、当日私に出来ることといえば、ただただ皆の笑顔を眺めるだけ。ほんとに何もせずに事が進んでいく。
イベントの成り行きをずっと気にかけてくれていた雲ヶ畑の方々も「柴崎くんはフラフラ歩き回ってるようにしか見えんのやけど、なんでこんなにうまく動いてるんや?」と首を傾げていたほどです。
このことから私は、今目の前で広がっている光景が、自分が目指していたマーケットの一つの理想形なのかも、と思いました。

何があるかわからない山奥。
それはお客さんだけでなく、出店者やミュージシャンの皆さんも同じ気持ちであったでしょう。
それでも「何かがあるはず」と集まってくれたからこそ、ある種の共有できる価値観や自発的に楽しもうとする動きになったんじゃないかと思うのです。


もちろん全ての来場者の方が同じ満足を得て帰られたわけではないでしょう。人との距離感や、楽しみ方は人それぞれあるわけですが、少なくとも私にはこの『みんな自由で、それでいて一体になってる』状況に、可能性を感じました。

名前の売れた人気店だけが行列を成すのではなく、ライブ演目に合わせて大勢の人が動き回る慌しさもなく、決して来やすい場所ではなかった会場で、辿り着いた人だけが共有する自由な時間。そこで行われる価値の交換は、お金だけのやり取りも超えて、物々交換のアイデアも。

『どんぐり』で行われた価値の交換

お店を始める前からの付き合いで、店主が頼りにしている木工作家の蜷川きよしさん。彼がこのDongree Camp Marketでチャレンジしてくれていたのは、手作りの木製どんぐりを使った物々交換。そして、ご自身の作品とお客さんが持っている手しごととの交換でした。お客さんが蜷川さんの作品を欲しいと言う、すると蜷川さんはお客さんに尋ねます。「なんのお仕事されてますか?良かったら交換しませんか?」と。
カメラマンであれば、後日蜷川さんの工房撮影でお返ししたり、地元の女性は、庭で出来たチューリップを摘んできたりとこれまた自由。
嬉しかったのは、私がこのイベントのアイデアとして、初期段階で彼と相談していた「お金以外のもので成立するマーケットがしてみたい」という話を覚えていてくれて、このチャレンジを考えてくれたことです。

第二回目の開催とより確かなマーケット作りへ

たくさんの人に支えられ、そして雲ヶ畑という地の豊かさに恵まれて無事開催できたDongree Camp Market in 雲ヶ畑。
先日、広場を貸してくれた波多野さんご夫妻を久々に訪ね、第二回目の開催の相談をしてきました。ありがたいことに快諾をいただき、次回開催に向けて色々とお話をしてきました。自分の両親以上に年の離れたご夫妻と、未来のマーケット作りについて語り合う。私が考えていること全部をわかっているわけではないとしても、前回のあの自由な空気を共有できているから、どれだけ言葉を重ねるよりも強い信頼関係が築けている。とても心地よい時間でした。

そこで提案させてもらったのが、イベントを起こすごとに会場がアップデートされていくプロジェクト。
今回は、

音楽をよりしっかり、安心して演奏できる屋根付きのステージを作りたい。

↑前回の手作りステージ。テントの骨組みを利用してデコレーション。雨が降らなくて本当によかった。。。

そういう話をしました。これまた快諾の上、「作ったステージはそのまま置いといたらいいですから」と、常設までさせてもらえることになりました。

あの奇跡のお祭りを、より確かな価値あるものとして継続できるよう。
集まるみなさんと自由を謳歌し、尊重しあえる平和な時間が生まれるよう。

今回も全力で準備にあたります。

そしてどんな形でも結構です。あなたなりの距離感で参加してもらえると嬉しいです。

2019年春、雲ヶ畑でお会いできるのを楽しみにしています。


Dongree 柴崎友佑

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