バイト先のお客さんと付き合った話 6 意外とポップ
ドキドキしてメールを送った直後、生田さんから返信が来た。
「はじめまして😊✨メールありがとう嬉しいです😍‼️‼️これからよろしくお願いします🤣☀️🌟」
みたいな文面だった。
絵文字が多いし文体がやたらとポップで、歳下の女子大生である私の方がよほど地味だなあと思った。
接客中の感じだけで勝手に物静かで地味な人というイメージを抱いていたので、意外とこんな感じなんだ…と驚いた。
とりあえずお互いの基本情報を伝え合う無難なやり取りを続けた。
年齢は24歳。当時の私の3つ上。
地下鉄で今の職場に通っている。実家住みだそうだ。
理容師になりたかったが親が学費を出さないと言うので、高校を卒業してからは1年間バイトをしてお金を貯めて専門学校に入ったという。
彼は女性が苦手なため、メンズサロンで働きたくて理容師の道を志したらしい。
接客している時は何を考えているのかわからないので妙な人だと思っていたが、話してみると至って普通の人だった。
女性が苦手、というところは少し引っかかったけど。
趣味が合うわけでもないしやり取りをしていて特に楽しいわけでもなかったが、なんとなく毎日連絡を取り続けた。
生田さんと連絡を取り始めたことをバイト先の同僚たちに伝えると、案の定大騒ぎしていた。
そしてバイト先に生田さんが来店し私のレジに来ると、同僚たちがみんな好奇の目をこちらに向けているのがわかった。
生田さんは生田さんでバイト先の面々のことなど気にすることなく、連絡を取り合うようになってからはニコニコしてレジ越しに話しかけてくるようになった。
ちょっと笑い話などもするようになり、こんなかわいい顔して笑うんだ、と思った。
ちょっとキュンとした。
私は同僚たちに見られている恥ずかしさと、生田さんの顔を見ると「連絡を取り合っている相手がとんでもなくかっこいい人であること」を再認識することでますます緊張してしまい、いつもうまく話すことができなかった。
それでもメールでのやり取りは毎日続くし、バイト先に来るたび生田さんはいつも楽しそうだった。
同僚たちも楽しそうだった。
そんな日々が続いたある日、2人で飲みにいかないかと誘われた。
もっと話してみたかったので
「ぜひ行きましょう!」
と返信し、飲みに行くことになった。
その数日後、2人で飲みに行った。
料理が運ばれてきた瞬間に猫みたいなポーズを取ったりニャンニャン!と言う生田さんを見て正直ちょっと引いた。
かつて気になっていた、レジ越しにペコペコしてきて無表情な彼のイメージはどんどん崩れていった。
私が勝手にそういう人だと思っていただけではあるが。
彼にちょっと引きながらも飲み会は続き、そろそろお開きかというところで彼が財布からぐしゃぐしゃになった紙を渡してきた。
ぐしゃぐしゃであまり読み取れなかったが、そこには何かのメールアドレスが書かれていた。
「なんですか?これ」
「俺のアドレスです。ずっと渡そうと思ってたの。2年ぐらい前からずっと」
「え?」
「ずっとずっと気になってたんです、あなたのこと」
「え…」
私はひどく動揺した。
続く
関係ないけど機種変した。でかいiPhone重すぎてつらすぎ。執筆も異常なほど時間がかかった。慣れるまで大変そう。とりあえず今日はもう寝る。
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