33歳人妻が16歳の少年に恋した話 77 怒りからの空っぽ

彼は私のクッキーを拒否した。
私と目を合わせようとしなかった。

ただただいつものようにヘラヘラと笑いながら、どこかを見ていた。

まさか拒否されるとは思ってもみなかったのでめちゃくちゃ動揺した。

「…どうして?」

「あっちにカバン置いてあるんで!いらないです!」

「何それ?どういうこと?」

「だからあっちにカバン置いてあるんで!本当に受け取れないです!」

「ええ…」

まったくもって意味がわからなかった。
あっちにカバン置いてあるって何?
だからいらないって何?
受け取りたくない言い訳にしか聞こえなかった。

私に込み上げてきたのは、怒りの感情だった。

わけのわからない理由で拒否されたことが悲しくて恥ずかしい上に、彼が笑顔でどこかを見ていることになぜかものすごく腹が立っていた。

「私が持ってたって仕方ないから受け取ってよ」

と語気を荒らげて半ば強引にクッキーを押し付けると、とりあえず受け取ってはくれた。

彼は笑うことをやめ、戸惑ったような顔で口を開けて私のことをじっと見ていた。
まさか私が怒るとは思っていなかったのだろう。
私だって、まさか自分が怒るとは思いもしなかった。

私はそんな彼を数秒睨みつけ、その場を去った。
睨んでいる間、最後までずっと口を開けて私のことを見ていた。

振り返ってどんな反応をしているか見たかったけど、見たところで何になるんだ、と思ってやめた。

私は混乱していた。

彼の元を去った瞬間、怒りの感情はすぐに消えた。何も考えられなかった。空っぽだった。
ショッキングな状況であるはずなのに。
涙は出なかった。

クッキーをあげてあの頃のような関係に戻れることを期待していたのに、まさかの拒否。

拒否しながら目を合わせず笑ってどこかを見る彼。

彼に怒る私。

怒った時の、彼の戸惑った表情。

この数分で起こったことの全てがあまりにも予想外すぎて、これは本当に現実なのだろうかと思った。

フォロワーから連絡が来ていた。

既婚女性①「あのこちゃんどうかな、無事会えたかな」

既婚女性②「フラッグ君、舞い上がってハグしたりして」

独身男性「既読ついた!あのこちゃんだ!!!!!」

既婚女性①「きたーーーーーー」

私「結論から言うとあげた瞬間断られました」

既婚女性①「え?」

私「あっちにカバン置いてあるんで受け取れません、いらないですって言われました。とりあえず押し付けてきたけど」

既婚女性②「カバン?何それ?」

私「わかりません。目も合わせてくれなくて。笑ってどっか見ながらそう言われました」

独身男性「クソだな」

既婚女性①「ならその場で食えや」

既婚女性②「ほんとそれ!最低」

フォロワーはこの後も彼のことをボロカスに言っていた。
私の代わりにたくさん怒ってくれて、ありがたいことだと思う。

でもその時の私はひどく混乱していて、何も感じなくなっていた。

とりあえずフォロワーに

「皆さんありがとうございます。ひとまず後半戦楽しみましょう!」

とだけ言い、後半戦を観ることにした。

呆然としていた。
当然、試合の内容なんて全く入ってこなかった。

初めて会って一目惚れした日も彼のことで頭がいっぱいで、試合の内容が全く入ってこなかったな、と思い出した。

こんな事態になるなんて、あの頃は思いもしなかったな。

続く

関係ないけど、夫が料理出来なさすぎて平日の調理の負担が凄まじいので楽天スーパーセールで吉野家の冷凍牛丼を買ってみた。美味しいといいな。

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