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BPOに送った第三者調査委員会設置の要望書(3,646名の署名添付)




                           2024年2月1日

放送倫理・番組向上機構(BPO)御内
理事会 様
理事長 大日向雅美 様
放送倫理検証委員会委員長 小町谷育子 様
放送人権委員会委員長 曽我部真裕 様
青少年委員会委員長 榊原洋一 様

<BPOを動かそう>
                          代表 古縞香奈子

BPO内にテレビ各局と旧ジャニーズ事務所との関係について第三者調査委員会を設置することに関する要望書


標記の件につきまして、早急な対処をしていただきたく、下記のとおり、お願い申し上げます。


<1.要望の趣旨>
放送倫理・番組向上機構(BPO)構成員であるところの日本放送協会(NHK)およびキー局5社(日本テレビ・TBS・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京)は、2023年に、いわゆる「ジャニーズ問題」(以下、「本問題」)に関して、それぞれ検証番組を放送しましたが、いずれの番組も自社(もしくはその強い影響下にあるチーム)による検証報告であり、テレビ局が検証主体としてかかわらないというような純粋な第三者による検証ではありませんでした。
そのため、いずれの番組も検証をしたという既成事実を作ることで、それ以上の追及を避けるための、いわば“アリバイ作り”に過ぎず、視聴者が本当に知りたいこと、本問題に関する肝心な部分には触れていなかった等の意見や不信感が世間・視聴者には蔓延しています。
そこで、調査する側にテレビ局職員・社員がかかわらず、調査に影響を与えない、日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」 に沿った(あるいは準じた)第三者調査委員会をBPO内に設置し、NHKおよびキー局5社を個別かつ横断的に調査し、各局に対する個別の提言をそれぞれ報告書としてまとめ、公開するよう、視聴者として3,646名の署名を添えて要望します。
信頼できる客観的な調査・報告は再発防止の第一歩です。
そうすることで、加速する一方の“テレビ離れ”の大きな要因のひとつと考えられる、私たち視聴者からの信用・信頼を少しでも回復してもらいたいと強く願うものです。
◆日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf

<2.要望の理由>
ジャニーズ事務所の代表取締役社長であった藤島ジュリー景子氏は、当初ジャニー喜多川氏の児童性的虐待について「知りませんでした」と述べています。それが変わったのはカウアン・オカモト氏と面談してからであることが、第三者委員会の「外部専門家による再発防止特別チーム」(以下、特別チーム)の調査報告書に記載されていますが、外部に向けてそれを発信したのは、調査報告書を受け取ってからでした。独立した第三者委員会が正しく機能した一面を国民に強く印象付けてくれました。
また、その報告書には「マスメディアの沈黙」といった1項目が設けられており、以下のようなことが記されています。

2000年初頭、文藝春秋に対する訴訟の東京地裁判決で、週刊文春の記事に書かれていたSMAPメンバー・森且行氏が退所した際のことを例にあげ、ジャニーズ事務所とテレビ局の不適切な関係が具体的に指摘されており、最後を次のように締めくくっています。
<ジャニーズ事務所は、ジャニー氏の性加害についてマスメディアからの批判を受けることがないことから、当該性加害の実態を調査することをはじめとして自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない。その結果、ジャニー氏による性加害も継続されることになり、 その被害が拡大し、さらに多くの被害者を出すこととなったと考えられる>
◆特別チーム調査報告書(PDF)
https://qr.paps.jp/egmzb

上記の指摘は非常に重く、テレビを筆頭としたメディアは沈黙することで、ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所の犯罪的行為に加担した、もしくは共犯関係にあったとも受け取れます。
また、そこからは、ジャニーズ事務所とテレビ各局におけるそれぞれの個別具体的な関係性が影響をおよぼしたと容易に推察できますし、それら個別具体的な関係や事情等はテレビ以外の各種メディアがたびたび報じているところでもあります。
しかしながら、各局検証番組ではそうした個別具体的な内容にはほとんど触れられていないか、掘り起こしが不十分で、意図的に避けたとしか思えない内容でした。
それぞれのテレビ局には、ジャニーズ事務所との間に番組やイベント、人事交流その他を通して個別具体的な背景が存在し、それがテレビの沈黙を生み、報道媒体であるテレビ局としての自浄能力を失わせる大きな要因となったであろうことが、テレビ以外の報道や特別チームの報告書からは読み取れます。
そうした検証番組の内容を考えたとき、自社の個別具体的な事情を避けることによって、特別チームの報告書で指摘されているようなジャニーズ事務所(現・株式会社SMILE-UP.及び株式会社STARTO ENTERTAINMENT)との不適切な関係性が現在も維持・継続されているか、自社に都合の悪いことを隠蔽することで、視聴者からの悪印象を忌避・軽減しようとしているか、もしくは一般視聴者にはわかりえない、他の理由の余地さえあるように感じました。
大日向理事長は12月4日に本問題に関する視聴者からの意見について、理事長見解を公表しましたが、その内容はあまりにも視聴者の意見・意向とかけ離れたものでありました。

もとより、番組の編集権はテレビ局にあり、放送番組は何人からも干渉されず、又は規律されることもなく、放送における言論・表現の自由は最大限尊重されなければなりません。
しかしながら、本問題に関する自社検証番組は「放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする」といった放送法第一条に記されている文言を、厳密な意味では逸脱しているようにも思えますし、NHKと民放連が定めた放送倫理基本綱領に記されている「国民の知る権利に応えて」という文言には著しく反していると言わざるを得ません。
BPOの構成員たるテレビ局は、本問題の一方の当事者であり、その立場を鑑みたとき、先の自社検証番組は、慣用句でたとえるならば「空き巣に留守番、泥棒に金庫番」をさせるような立場でつくられたものであり、自主・自律を旨とする放送局ではあっても、当問題においてはその任にふさわしいものとは到底考えられません。

いみじくも、民放連が運営する民放online上でライターの香月孝史氏が≪2023年に大きく報じられたエンターテインメント関連の問題は、組織の「外側」から相対化する視線がもたらされたことで、ようやく事態が動き始めたものも少なくない≫と言及したように、時として外側からの視線がなければ、永きにわたって業界慣習として行われてきたことは、何らかの問題が生じた際に業界内だけでは気づきにくいといった弊害も大いにあると言えるでしょうし、それが隠蔽にもつながりやすいといった悪しき業界風土を醸成しやすい面もあるでしょう。
◆民放online 「"外側"からの視点による相対化、迫れられる問い直し 2023年のエンタメ界を振り返って」香月孝史
https://minpo.online/article/2023-75.html

また、民放連は2023年12月21日の理事会において、ジャニー喜多川氏の子どもへの性的虐待を念頭に「人権に関する基本姿勢」を決定しましたが、その抽象的な決定内容が再発防止にどれだけの効果があるのかは未知数です。
少なくともジャニーズ問題に関しては、ジャニーズ事務所設置の特別チームが報告書で指摘したとおり、ジャニー喜多川氏個人だけの問題ではありません。

民放連公式サイトの「放送倫理・番組向上機構(BPO)について」には次のように記されています。

<放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的に、放送界が自主・自律の精神で設立した組織です>
◆民放連「放送倫理・番組向上機構(BPO)について」
https://j-ba.or.jp/category/broadcasting/jba101958

本問題に関し、視聴者の立場から、BPOにはテレビ局を注視するだけでなく、独立した第三者の立場から、迅速かつ的確に、自主的な対応を求めるものです。

<3.要望の詳細>
①ジャニーズ問題における各テレビ局内の問題を検証するため、ジャニーズ事務所と各テレビ局の、過去から現在に至る関係について、日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿った(あるいは準じた)第三者調査委員会をBPO内に設置し、本問題の検証番組を放送したNHK・日本テレビ・TBS・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京を個別かつ横断的に調査し、各局に対する個別の提言を、それぞれ報告書としてまとめて記者会見を行うとともに公開すること。
なお、各テレビ局における個別具体例を別紙に添付します。

②視聴者とテレビ局を結ぶ役割を担うBPOとして、もし①が実現できないようなことがあれば、BPO理事長名義で、実現できない具体的な理由を含む声明もしくは見解を公表するとともに、本事案の性格から考えて委員会活動が円滑に進まなくなること等は考えにくいため、通常は概要のみ記載される公式サイトの議事録に、例外的に本要望に関して話し合われたすべての会議の議事全文を掲載すること。

③本事案に関しては、必要な審議・審理・討議等を経た後、BPOの総意として可及的速やかに実行すること。

④本要望について、BPOとしていかなる決定を出した場合でも、速やかに記者会見及びBPO公式サイトにて公表し、要望を実施する際においては事前に大まかな日程を含むアジェンダを公開すること。
また、理事長の定例会見において逐次進行状況を報告すること。

【付記】
本事案はかつて前例のない、国民のテレビ局に対する信用・信頼が問われている重大な問題であることを、そして、BPOという第三者機関の存在意義が問われていることを、BPOの委員諸氏および構成員たる各テレビ局担当者が強く、真摯・謙虚な姿勢で自覚し、第三者調査委員会設置に必要な手続きや費用その他についても、前例に捉われない柔軟な判断・対処をするよう強く要望するものである。
また、本要望が実現することで、今後、重大な問題が生じたとき、テレビ局による自浄作用の前例として機能し、国民に対する信頼獲得に寄与することを期待するものである。


以上




(別紙)

以下は、テレビ以外のメディアで報じられたり、特別チームの報告書に書かれているものの一部です。
これら以外にも個別の事情・背景が各局に存在することを前提とした詳細の調査を要望します。

①自局スタジオや会議室等がジャニーズ事務所の実質的な専用レッスン場となっていなかったか。
②テレビ局職員・社員が同事務所に出向・転籍していたり、同事務所と関わりの深い人物がテレビ局の要職に就いている等の人事交流はどうなっているか。
③同事務所から過剰接待を受けたことがあれば、その具体的内容(贈与された物品や、社会通念を超えた飲食・サービス等を含む)。
④取材やコンサート、それ以外における便宜供与の実態。
⑤同事務所のタレント(退所・解散グループ等を含む)をメインに据えた過去・現在の番組が放送あるいは放送終了に至った詳しい経緯。
(特にフジテレビにおける2016年1月18日放送の「SMAP×SMAP」は同事務所とフジテレビの関係が色濃く反映された特殊な事例だと思われるため、詳細な経緯が必須)
⑥退所タレントに対する退所後の扱いと、そうしたことの理由・経緯。
⑦自社イベントや事業等と同事務所との関わり(計画段階のものを含む)。
⑧過去・現在において、いわゆる「ジャニ担」と呼ばれている社員からの詳細なヒアリング。
⑨BBCのドキュメンタリー動画「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」では、日本のメディアがジャニー喜多川氏の問題を報道しないことを厳しく批判しているが、同番組が日本で配信されて以降も、しばらくは地上波で報道されることがなかった。
そのことは、ジャニー喜多川氏とメリー喜多川氏が物故し、藤島ジュリー景子氏が社長となった後も、テレビ局との関係が変わらなかったことを示しているのではないか。そして、その関係性は現在も変わらず続いているのではないかと想像させる。検証番組ではBBC以降、現在までのことがほとんど触れられていない。各局の経緯詳細が望まれる。
⑩特別チームの報告書には「ジャニー氏以外にも、ジ ャニーズ事務所の社員による性加害があることが確認された」とあるが、検証番組で触れている局はなかった。非常に重要な部分であるが、各局の認識はどうなのか。

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