106つ、または107つ、ないし108つのジョー・レアルの生首
ジョー・レアルをぶち殺して首を持参した野郎には10万ドルくれてやる。
そう俺たちが宣言したその翌日。さて、何人が首を持ってやって来たと思う?
212人だ。
持ち込まれたうちの半数は偽物だったが、あとはどっからどう見たってホンモノの、ジョー・レアルの首だった。
信じられるか?
俺には信じられなかった。バーにいる仲間の誰もがそうだった。
「ふざけやがってよッ!」
ちびのトゥコは短い足で丸テーブルを蹴り飛ばした。
上に乗っていたものがごろごろ音を立てて床に転がる。ジョーの首、ジョーの首、ジョーの首……が7つ。
「どうなってやがる」ブロンドも普段の優男ぶりが見る影もない。「これはなんなんだ?」
そう言って店内を見回す。テーブルの上に床の上、壁のそばにもどこにでも、ジョーの首がひしめいていた。
その数、実に106。
持ち込まれた首の、ちょうど半分。
指そぎのモーティマーも、“会計”のダラスも、下っ端のウエストも、すっかり黙りこくっている。俺だって一言も発せなかった。
俺たち6人は106の「ジョー・レアルの首」に囲まれ、怯えきっていた。
生きてきて一番恐ろしい出来事だ、と俺は思った。こんな無茶苦茶があってたまるか。悪い酒が見せる悪い夢よりなお悪い。
だがこの状況は、すぐさま生きてきて二番目に恐ろしい出来事になった。
「こんばんは」
バーの外れかけたドアの外、夜の迫る夕闇の中から声がした。
「ジョー・レアルの首を買ってくれるってのは、ここですかね?」
朝から200回ほど聞いた台詞だったが、今までで一番、穏やかな声に聞こえた。
そもそもの始まりから語るとするなら、俺の名前はセルジオ。テキサスで生まれ……少し省略しよう……このろくでもない西部で4年ほど前から、褒められたやり方でない金儲けをしている。
モーティマーやトゥコなどとの出会いは追々語れるだろう。先にジョーの、クソッタレのジョー・レアルの話をしておきたいと思う。
【続く……
下の連載に。】
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